かかることを、母おとど聞き給ひて、ものも、のたまはで、うかがひ給ひて、向かひ給ひたりけるを、手を取りて引きもて行きて、部屋にこめてけり。
かかることを、母おとど聞き給ひて、ものも、のたまはで、うかがひ給ひて、向かひ給ひたりけるを、手を取りて引きもて行きて、部屋にこめてけり。


これを父ぬし、聞き給ひて、のどかなりける人なれば
これを父ぬし、聞き給ひて、のどかなりける人なれば


「をのこも賢き者にて、女、幼き者にあらず。
「をのこも賢き者にて、むすめ、幼き者にあらず。


さしたるやうあらむ。
さしたるやうあらむ。


なほ許し給ひてのたまへ」とありければ、
なほ許し給ひてのたまへ」とありければ、


「おのが身を思ふとてのたまふに」とて、
「おのが身を思ふとてのたまふに」とて、


いよいよ、鍵の穴に土塗りて、
いよいよ、鍵の穴に土塗りて、


「大学のぬしをば、家の中に、な入れそ」とて追ひければ、曹司にこもり居て、泣きけり。
「大学のぬしをば、家の中に、な入れそ」とて追ひければ、曹司にこもり居て、泣きけり。