篁物語
- 第22段
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御消息ありければ、いと悲しう、つるばみの衣の破れ困じたる着て、しりゐたる沓はきて、ふくめる書の帙取りて来にけり。
御消息
せうそこ
ありければ、いと悲しう、つるばみの
衣
きぬ
の
破
や
れ
困
こう
じたる着て、しりゐたる
沓
くつ
はきて、ふくめる
書
ふみ
の
帙
ちつ
取りて来にけり。
帳の内に入りて、まづ、この文巻を賜へれば、取り給はねば、篁さして行けば、この君、皮の帯を取りて引きとめ給へば、とまり給ひにけり。
帳
ちやう
の内に入りて、まづ、この文巻を賜へれば、取り給はねば、篁さして行けば、この君、皮の帯を取りて引きとめ給へば、とまり給ひにけり。
これを垣間見て、父おとど、見給ひて、
これを垣間見て、父おとど、見給ひて、
「いとかしこうしつ」と喜び給ふ。
「いとかしこうしつ」と喜び給ふ。
「出でて去なまし。
「出でて去なまし。
いかに人聞き、やさしからまし。
いかに人聞き、やさしからまし。
いとかしこきことなり」と喜び給ふ。
いとかしこきことなり」と喜び給ふ。
三日の夜、いといかめしうして待ち給ふ。
三日の夜、いといかめしうして待ち給ふ。
ただ、童一人ぞ具し給ひける。
ただ、
童
わらは
一人ぞ
具
ぐ
し給ひける。