また、男、
また、男、


濁る瀬は
しばしばかりぞ
水しあらば
澄みなむとこそ
頼み渡らめ
にごるせは
しばしばかりぞ
みづしあらば
すみなむとこそ
たのみわたらめ


女、
女、


淵瀬をば
いかに知りてか
渡らむと
心を先に
人の言ふらむ
ふちせをば
いかにしりてか
わたらむと
こころをさきに
ひとのいふらむ


男、
男、


身のならむ
淵瀬も知らず
妹背川
降り立ちぬべき
心地のみして
みのならむ
ふちせもしらず
いもせがは
ふりたちぬべき
ここちのみして


かくいふ程に、人にくからぬ世なれば、いと気うとくなかりけり。
かくいふ程に、人にくからぬ世なれば、いとうとくなかりけり。