師走の十五日ごろ、月いとあかきに、物語しけるを、人見て、
師走しはす十五日もちごろ、月いとあかきに、物語しけるを、人見て、


「誰ぞ、あなすさまじ、師走の月夜にもあるかな」
「誰ぞ、あなすさまじ、師走の月夜にもあるかな」


と言ひければ、
と言ひければ、


春を待つ
冬のかぎりと
思ふには
かの月しもぞ
あはれなりける
はるをまつ
ふゆのかぎりと
おもふには
かのつきしもぞ
あはれなりける


返し
返し


年を経て
おもひも飽かじ
この月は
みそかの人や
あはれと思はむ
としをへて
おもひもあかじ
このつきは
みそかのひとや
あはれとおもはむ


かく言ふ程に、夜ふけにければ、「人うたて見むもの」とて入りにけり。
かく言ふ程に、夜ふけにければ、「人うたて見むもの」とて入りにけり。


男は、
男は、


曹司に、とみにも入らで、うそぶきありきけり。
曹司ざうしに、とみにも入らで、うそぶきありきけり。