さる程に、兵衛佐ばかりの人、かたち清げにて、年二十ばかりなりけるが、詣であひて、かへさに、女の道にゐたる、
さる程に、兵衛佐ばかりの人、かたち清げにて、年二十はたちばかりなりけるが、まうであひて、かへさに、女の道にゐたる、


「あな苦し。かくてやは出で立ち給へる」もの嫉みして、
「あな苦し。かくてやは出で立ち給へる」ものねたみして、


男申すに、「かもは車つくりて、乗せ奉りて、このわたりなる、きさきのみねにすゑ奉らむ。女の身にはだいわう、みかどには誰をかと」
男申すに、「かもは車つくりて、乗せ奉りて、このわたりなる、きさきのみねにすゑ奉らむ。女の身にはだいわう、みかどには誰をかと」


言ふ程に、暮れにければ、破子さがして食はせむとするに、この佐をやりすぐす。
言ふ程に、暮れにければ、破子さがして食はせむとするに、この佐をやりすぐす。


この男、休むやうにて、降りて、
この男、休むやうにて、降りて、


人しれず
心ただすの
神ならば
思ふ心を
そらに知らなむ
ひとしれず
こころただすの
かみならば
おもふこころを
そらにしらなむ


返し
返し


やしろにも
まだきねすゑず
石神は
知ることかたし
人の心を
やしろにも
まだきねすゑず
いしがみは
しることかたし
ひとのこころを


またもおこせけれど、この兄、いそがして、車に乗せて、率て去ぬ。
またもおこせけれど、このせうと、いそがして、車に乗せて、率てぬ。