この兄、大学に出でにけり、樋洗童、取り入れて奉る。
このせうと、大学に出でにけり、樋洗童ひすましわらは、取り入れて奉る。


「文をも取り、大学のぬしもぞ見つくる、近からむ人の家に据ゑよ」とて
「文をも取り、大学のぬしもぞ見つくる、近からむ人の家に据ゑよ」とて


「昨日も見しかど、いさや
「昨日も見しかど、いさや


たまぼこの
道交ひなりし
君なれば
あとはかなくも
なると知らずや」
たまぼこの
みちかひなりし
きみなれば
あとはかなくも
なるとしらずや」


見て、
見て、


「ざれたるべき人かな。うたて、まがまがしうも、言ひたるかな。いかに言はまし」と思ふ。
「ざれたるべき人かな。うたて、まがまがしうも、言ひたるかな。いかに言はまし」と思ふ。


時の大納言の子なりけり。
時の大納言の子なりけり。


「あとはかもなしと、たれも。道にこそゐ給へりしか。
「あとはかもなしと、たれも。道にこそゐ給へりしか。


しばしばに
あとはかなしと
言ふことも
おなじ道には
またもあひなむ」
しばしばに
あとはかなしと
いふことも
おなじみちには
またもあひなむ」