三月ばかり*ばかり、うぐひすなきければ、きたのかた、
我身にも
世を鶯と
なきけれど
君がみ山に
えこそ通はね
わがみにも
よをうぐひすと
なきけれど
きみがみやまに
えこそかよはね
此間恐有誤脱。*げにたれもおなじやうにしりたまはざらむをなむ、おなじ「うきよかは。」と思うたまふべき。
「うからねばこそのぼりおはすらめど、『山にても』*といふことあらば。」となむきこえまほしきを、
このかみ*も、「このよをそむきて、あはれなる人のすみ給らむよかは*をわたりて、御かげをだにみるまじくとも、猶そむきてもおこなひ侍まほしきを、宮安子*にもしかに又おぼしめすなる。『御ともにも。』と參き。」*
流れても
君住べしと
水の上に
浮よかはとも
誰か問べき
ながれても
きみぬしべしと
みづのうへに
うきよかはとも
たれかとふべき
つねにこのふた所*、かなしうあはれなることをなんきこえかはし給ける。
かくて、かのもゝぞのの權中納言殿師氏の中將のきみまゐり、中宮安子よりはじめたてまつりて、おどろきとぶらひきこえ給なかに、御めのととあい宮となむ、ものもきこしめさずなきまどひ給ける。