あい宮の御もとになん、つねにかなしきことをもかよはし給ける。
あまにも、こゝにもとなむおもひたまふる。ひとたびに*なり給へ。
あまにはたれもなるとも、おなじやまにはいらざらむこそかひなけれど、「よかはのふもとまでだに。」とおもうたまふるに、それもかたくや。
いづくにも
かく淺ましき
浮よかは
あな覺束な
誰に問まし
いづくにも
かくあさましき
うきよかは
あなおぼつかな
たれにとはまし
山ぢしる
鳥に我身を
なしてしか
君かくこふと
泣てつぐべく
やまぢしる
とりにわがみを
なしてしか
きみかくこふと
なきてつぐべく
なぞもかく
いける世をへて
物を思ふ
駿河のふじの
煙絶えせぬ
なぞもかく
いけるよをへて
ものをおもふ
するがのふじの
けぶりたえせぬ
「あはれ〳〵。そこにもいかに。」となむ思ひ聞ゆる。
ゆめにもやまのきみのみえ給をりは、さめてくやしくなむ。
物思ひは
我もさこそは
駿河なる
田子の浦浪
立やまずして
ものおもひは
われもさこそは
するがなる
たごのうらなみ
たちやまずして