かへりごと申さむと思ひけめども、井堰のせきにかかりて下りにければ、本意なく覺え侍りけむ京より手箱にとき料を入れて、中に文をこめて庵室にさし置かせたりける。返り事を連歌にして遣したりける

空仁



むすびこめたる
文とこそ見れ
むすびこめたる
ふみとこそみれ


このかへりごと、法輪へまゐりける人に付けてさし置かせける



さとくよむ
ことをば人に
聞かれじと
さとくよむ
ことをばひとに
きかれじと