Весна
0
Лето
87
Осень
0
Зима
0
Любовь
0
Благопожелания
0
Странствия
2
Разлука
0
Скорбь
0
Буддийское
0
Синтоистское
0
Разное
9
Иное
0
暮立之
雨落毎
(一云
打零者)
春日野之
尾花之上乃
白霧所念
ゆふだちの
あめふるごとに
(うちふれば)
かすがのの
をばながうへの
しらつゆおもほゆ
О, каждый раз, когда бывает ливень
И льют потоки бурные дождя,
Я вспоминаю светлые росинки
В долине Касуга
На листьях обана.

暮立之
雨打零者
春日野之
草花之末乃
白露於母保遊
ゆふだちの
あめうちふれば
かすがのの
をばながうれの
しらつゆおもほゆ
Когда на землю дождь
Обильным ливнем льет,
Долину Касуга я вспоминаю вмиг
И белую росу, сверкающую там
На лепестках прелестных обана.
* Первая песня считается популярной, указывается на её вариант в кн. Х (2169).
よられつる
野もせの草の
かげろひて
すずしくくもる
夕立の空
よられつる
のもせのくさの
かげろひて
すずしくくもる
ゆふだちのそら
Травы в полях,
Поникшие от солнечной жары,
Теперь вздохнут:
Сгустились тучи, предвещая ливень,
Повеяло прохладой...

露すがる
庭の玉笹
うちなびき
ひとむら過ぎぬ
夕立の雲
つゆすがる
にはのたまささ
うちなびき
ひとむらすぎぬ
ゆふだちのくも
Прошёл мгновенно летний ливень,
И вот уж со склонённых веток бамбука
Сдувает ветер, по жемчужинке,
Росинки,
И тучи разошлись...
* Автор использует «двойную» метафору: роса — жемчуг (жемчужинки), дождевые капли — росинки.
とをちには
夕立すらし
ひさかたの
天の香具山
雲がくれゆく
とをちには
ゆふだちすらし
ひさかたの
あまのかぐやま
くもがくれゆく
В селении Тооти,
Наверное, льёт дождь:
Гора Небес великих —
Кагуяма
Скрывается за тучами..
* Селение Тооти находилось в провинции Ямато, на территории нынешнего г. Касивара, возле горы Миминаси. Гора Небес великих — Кагуяма — см. коммент. 2.
庭の面は
まだかはかぬに
夕立の
空さりげなく
すめる月かな
にはのおもは
まだかはかぬに
ゆふだちの
そらさりげなく
すめるつきかな
Ливень прошёл,
И сад
Ещё просохнуть не успел,
А с неба чистого уже сияет
Луна...

夕立の
雲もとまらぬ
夏の日の
かたぶく山に
ひぐらしの声
ゆふだちの
くももとまらぬ
なつのひの
かたぶくやまに
ひぐらしのこゑ
Рассеялись на небе тучи,
А под горою,
За которою готово скрыться солнце,
Стрекочут жалобно
Вечерние цикады.
* Вечерние цикады (хигураси) — постоянный образ «Песен лета», образ одиночества и грусти, навеянной монотонным стрекотаньем, слышным с северных склонов гор.
夕たちの
またはれやらぬ
雲まより
おなし空とも
みえぬ月かな
ゆふたちの
またはれやらぬ
くもまより
おなしそらとも
みえぬつきかな
Небо после
Летнего ливня
Не прояснилось,
Меж туч светит
За ними скрытая луна.
Примерный перевод

川上に
夕立すらし
みくづせく
梁瀬のさなみ
立ち騒ぐなり
かはかみに
ゆふだちすらし
みくづせく
やなせのさなみ
たちさはぐなり
Должно быть,
В верховьях реки ливень прошёл:
Грязью занесло
Для ловли рыб запруду,
И волны зашумели у неё...
Примерный перевод

この里も
夕立志けり
淺茅生に
露のすがらぬ
草のはもなし
このさとも
ゆふだちしけり
あさぢうに
つゆのすがらぬ
くさのはもなし
И в этом селении тоже,
После ливня
В зарослях асадзи
Нет ни единой травинки
Без капли росы...
Примерный перевод
Хотя это не роса
みな月の
空ともいはじ
夕立の
ふるからをのゝ
ならの下影
みなつきの
そらともいはじ
ゆふだちの
ふるからをのゝ
ならのしたかげ


夕立の
露おきとめて
月影の
すゞしくやどる
庭のなつぐさ
ゆふだちの
つゆおきとめて
つきかげの
すゞしくやどる
にはのなつぐさ


吹く風に
行くかた見えて
凉しきは
日影隔つる
夕立のくも
ふくかぜに
ゆくかたみえて
すずしきは
ひかげへだつる
ゆふだちのくも


夏山の
楢の葉がしは
風過ぎて
峯立ちのぼる
ゆふだちの雲
なつやまの
ならのはがしは
かぜすぎて
みねたちのぼる
ゆふだちのくも


夕立の
晴れ行く峰の
木の間より
入日すゞしき
露の玉ざゝ
ゆふだちの
はれゆくみねの
このまより
いりひすずしき
つゆのたまざさ


白雨の
なごりの露ぞ
おきまさる
結ぶばかりの
庭の夏ぐさ
ゆふだちの
なごりのつゆぞ
おきまさる
むすぶばかりの
にはのなつぐさ

SKT reads 夕立の
露ふかき
庭のあさぢに
風過ぎて
名殘すゞしき
夕立のそら
つゆふかき
にはのあさぢに
かぜすぎて
なごりすずしき
ゆふだちのそら
По густой росе
На кустарниках в саду
Пролетел ветер:
Прохладная память
О дождливом небе.
Примерный перевод

露おもみ
そののなでしこ
いかならん
あらく見えつる
ゆふだちの空
つゆおもみ
そののなでしこ
いかならん
あらくみえつる
ゆふだちのそら
Капли так тяжелы!
Гвоздики в моем саду,
Каково им теперь?
До чего яростный вид
У вечернего ливня!

掻き曇る
程こそなけれ
あま雲の
よそになりゆく
夕立の空
かきくもる
ほどこそなけれ
あまくもの
よそになりゆく
ゆふだちのそら


谷河の
流れをみても
しられけり
雲こす峰の
ゆふだちの空
たにかはの
ながれをみても
しられけり
くもこすみねの
ゆふだちのそら
На теченье
Речки долинной глянешь,
И ясно сразу:
У вершин, которых пересекают облака,
Дождливое небо!
Примерный перевод

あはぢ島
夕立すらし
すみよしの
浦のむかひに
かゝる村雲
あはぢしま
ゆふだちすらし
すみよしの
うらのむかひに
かかるむらくも
Над островом Авадзи,
Наверное, льёт ливень летний,
Со стороны
Бухты Сумиёси
Клубятся облака!
Примерный перевод

ゆふだちの
はるれば月ぞ
やどりける
たまゆりすうる
はすのうきはに
ゆふだちの
はるればつきぞ
やどりける
たまゆりすうる
はすのうきはに


寳治百首の歌奉りける時、夕立

前内大臣



此の里も
ふりぬと思ふ
夕立の
曇るばかりに
過ぎにける哉
このさとも
ふりぬとおもふ
ゆふだちの
くもるばかりに
すぎにけるかな


一むらは
やがて過ぎぬる
夕立の
なほ雲殘る
そらぞ凉しき
ひとむらは
やがてすぎぬる
ゆふだちの
なほくものこる
そらぞすずしき


夕立は
過ぎぬる峰の
むらくもに
しばしほのめく
宵の稻妻
ゆふだちは
すぎぬるみねの
むらくもに
しばしほのめく
よひのいなづま
В грудах туч
У вершины горной,
Где ливень прошёл,
Слегка сверкают
Вечером молнии.
Примерный перевод

程もなく
晴れつる方に
移りきて
日影にかゝる
夕立のくも
ほどもなく
はれつるかたに
うつりきて
ひかげにかかる
ゆふだちのくも
И мига не прошло,
А в сторону, где прояснилось небо,
Уплыли,
Подсвеченные лучами солнца,
Грозовые облака!
Примерный перевод

なる神の
音にもしるし
卷向の
檜原の山の
ゆふだちのそら
なるかみの
おとにもしるし
まきむくの
ひばらのやまの
ゆふだちのそら
Звук грома —
Ещё один знак,
Что в Макимуку,
На горах криптомерий
Небо в грозовых облаках.
Примерный перевод

沖つ浪
音吹きたてゝ
しほ風の
みなとにかゝる
夕だちの雲
おきつなみ
おとふきたてて
しほかぜの
みなとにかかる
ゆふだちのくも


かきくらす
空とも見えず
夕立の
過行く雲に
入日さしつゝ
かきくらす
そらともみえず
ゆふだちの
すぎゆくくもに
いりひさしつつ


夕立を

祝部成久

О летнем ливне

Хорибэ Нарихиса

夕立の
風にわかれて
行く雲に
後れてのぼる
山の端のつき
ゆふだちの
かぜにわかれて
ゆくくもに
おくれてのぼる
やまのはのつき


衣手に
凉しき風を
さきだてゝ
曇りはじむる
ゆふだちの空
ころもでに
すずしきかぜを
さきだてて
くもりはじむる
ゆふだちのそら


山もとの
遠の日影は
さだかにて
かたへ凉しき
夕だちの雲
やまもとの
とほのひかげは
さだかにて
かたへすずしき
ゆふだちのくも


外山には
夕立すらし
立ちのぼる
雲よりあまる
稻妻のかげ
とやまには
ゆふだちすらし
たちのぼる
くもよりあまる
いなつまのかげ


行きなやみ
照る日苦しき
山道に
ぬるともよしや
夕立の雨
ゆきなやみ
てるひくるしき
やまみちに
ぬるともよしや
ゆふだちのあめ


降りよわる
雨を殘して
風はやみ
よそになり行く
夕立の雲
ふりよわる
あめをのこして
かぜはやみ
よそになりゆく
ゆふだちのくも


夕立の
雲吹きおくる
おひ風に
木末のつゆぞ
また雨と降る
ゆふだちの
くもふきおくる
おひかぜに
きすゑのつゆぞ
またあめとふる


夕立の
雲飛びわくる
白鷺の
つばさにかけて
晴るゝ日の影
ゆふだちの
くもとびわくる
しらさぎの
つばさにかけて
はるるひのかげ


月うつる
まさごの上の
にはたづみ
跡まで凉し
夕だちの雨
つきうつる
まさごのうへの
にはたづみ
あとまですずし
ゆふだちのあめ


更に又
日影うつろふ
竹の葉に
凉しさ見ゆる
ゆふだちの跡
さらにまた
ひかげうつろふ
たけのはに
すずしさみゆる
ゆふだちのあと


今もかも
夕立すらし
足引の
山の端かくす
くものひとむら
いまもかも
ゆふだちすらし
あしびきの
やまのはかくす
くものひとむら


一むらの
雲吹きおくる
山風に
晴れても凉し
夕だちのあと
ひとむらの
くもふきおくる
やまかぜに
はれてもすずし
ゆふだちのあと


水上は
夕立すらし
やまがはの
岩根にあまる
瀧のしらなみ
みなかみは
ゆふだちすらし
やまがはの
いはねにあまる
たきのしらなみ


葛城や
高間の山に
ゐる雲の
よそにもしるき
ゆふだちの空
かづらきや
たかまのやまに
ゐるくもの
よそにもしるき
ゆふだちのそら


一方に
木々の木の葉を
吹き返し
夕立おくる
風ぞすゞしき
ひとかたに
き々のこのはを
ふきかへし
ゆふだちおくる
かぜぞすずしき


なる神の
音ほのかなる
夕立の
くもる方より
風ぞはげしき
なるかみの
おとほのかなる
ゆふだちの
くもるかたより
かぜぞはげしき


入日さす
森の下葉に
露見えて
夕立すぐる
そらぞすゞしき
いりひさす
もりのしたばに
つゆみえて
ゆふだちすぐる
そらぞすずしき


夕立の
はれぬる跡の
山の端に
いざよふ月の
かげぞ凉しき
ゆふだちの
はれぬるあとの
やまのはに
いざよふつきの
かげぞすずしき


夕立の
降りくる池の
蓮葉に
くだけてもろき
露の志らたま
ゆふだちの
ふりくるいけの
はちすはに
くだけてもろき
つゆのしらたま


おのづから
かたへの雲や
晴れぬらむ
山の端遠き
夕立の空
おのづから
かたへのくもや
はれぬらむ
やまのはとほき
ゆふだちのそら


夏山の
木の葉の色は
染めねども
時雨に似たる
夕立のそら
なつやまの
このはのいろは
そめねども
しぐれににたる
ゆふだちのそら


一むらは
やがて過ぎぬる
夕立の
猶くも殘る
空ぞすゞしき
ひとむらは
やがてすぎぬる
ゆふだちの
なほくものこる
そらぞすずしき


鳴る神の
音ばかりかと
聞くほどに
山風烈し
ゆふだちの空
なるかみの
おとばかりかと
きくほどに
やまかぜはげし
ゆふだちのそら


稻妻の
光の間とも
いふばかり
はやくぞ晴るゝ
夕立のそら
いなつまの
ひかりのまとも
いふばかり
はやくぞはるる
ゆふだちのそら


夕立の
かつ〴〵晴るゝ
雲間より
雨をわけても
さす日影哉
ゆふだちの
かつがつはるる
くもまより
あめをわけても
さすひかげかな


過ぎにけり
軒の雫は
殘れども
雲におくれぬ
夕だちのあめ
すぎにけり
のきのしずくは
のこれども
くもにおくれぬ
ゆふだちのあめ


行く末は
露だにおかじ
夕立の
雲にあまれる
むさし野の原
ゆくすゑは
つゆだにおかじ
ゆふだちの
くもにあまれる
むさしののはら


やがて又
つゞきの里に
かきくれて
遠くも過ぎぬ
夕立の空
やがてまた
つづきのさとに
かきくれて
とほくもすぎぬ
ゆふだちのそら


かきくもり
夕立つ浪の
荒ければ
浮きたる舟ぞ
静心なき
かきくもり
ゆふたつなみの
あれければ
うきたるふねぞ
しづこころなき


かき曇り
夕立つ波の
あらければ
浮きたる舟ぞ
しづ心なき
かきくもり
ゆふたつなみの
あらければ
うきたるふねぞ
しづこころなき
Все небо потемнело,
И волны поднялись.
Вот-вот уж хлынет дождь...
Как неспокойно стало
На корабле!
* Согласно пояснениям в частном собрании поэтессы, это было на озере Бива.
片岡の
棟なみより
吹く風に
かつ〴〵そゝぐ
ゆふだちの雨
かたをかの
あふちなみより
ふくかぜに
かつがつそゝぐ
ゆふだちのあめ


松を拂ふ
風は裾野の
草に落ちて
ゆふだつ雲に
雨きほふ也
まつをはらふ
かぜはすそのの
くさにおちて
ゆふだつくもに
あめきほふなり


虹のたつ
麓の杉は
雲に消えて
峯より晴るゝ
夕だちのあめ
にじのたつ
ふもとのすぎは
くもにきえて
みねよりはるる
ゆふだちのあめ


ふじのねは
晴行く空に
顯はれて
裾野にくだる
夕立のくも
ふじのねは
はれゆくそらに
あらはれて
すそのにくだる
ゆふだちのくも


夕立の
名殘久しき
しづくかな
信太の杜の
千枝のしたつゆ
ゆふだちの
なごりひさしき
しづくかな
しのだのもりの
ちえのしたつゆ


折り敷か
む隙こそ無け
れ沖つか
ぜ夕立つ波
の荒き濱をぎ
をりしかむ
ひまこそなけれ
おきつかぜ
ゆふたつなみの
あれきはまをぎ


夕立の
一むら薄
つゆ散りて
虫の音添はぬ
あきかぜぞ吹く
ゆふだちの
ひとむらすすき
つゆちりて
むしのねそはぬ
あきかぜぞふく


萩が葉に
つゆのたまもる
夕立は
はなまつ秋の
まうけなりけり
はぎがはに
つゆのたまもる
ゆふだちは
はなまつあきの
まうけなりけり


水上に
花のゆふだち
ふりにけり
吉野の川の
なみのまされる
みなかみに
はなのゆふだち
ふりにけり
よしののかはの
なみのまされる


なる神の
音は雲井に
高砂の
松風ながら
すぐる夕立
なるかみの
おとはくもゐに
たかさごの
まつかぜながら
すぐるゆふだち


いかばかり
まきの下露
みだるらん
夕立すぐる
風の名残に
いかばかり
まきのしたつゆ
みだるらん
ゆふだちすぐる
かぜのなごりに


空は猶
曇かねたる
夏の日に
山をはなれぬ
夕立のくも
そらはなほ
くもりかねたる
なつのひに
やまをはなれぬ
ゆふだちのくも


ふるほどは
結びもあへで
夕立の
跡の草葉に
しげき露哉
ふるほどは
むすびもあへで
ゆふだちの
あとのくさばに
しげきつゆかな


松風も
はけしく成ぬ
高砂の
おのへの雲の
夕立の空
まつかぜも
はけしくなりぬ
たかさごの
おのへのくもの
ゆふだちのそら


風さはく
しのたのもりの
夕立に
雨を残して
はるゝ村雲
かぜさはく
しのたのもりの
ゆふだちに
あめをのこして
はるるむらくも


かやり火の
煙そのこる
夕立の
雲はすきゐる
をちの山もと
かやりひの
けぶりそのこる
ゆふだちの
くもはすきゐる
をちのやまもと


夕立の
また過やらぬ
みなと江の
あしの葉そよく
風の涼しさ
ゆふだちの
またすぎやらぬ
みなとえの
あしのはそよく
かぜのすずしさ


松風も
はけしく成ぬ
高砂の
おのへの雲の
夕立の空
まつかぜも
はけしくなりぬ
たかさごの
おのへのくもの
ゆふだちのそら


風さはく
しのたのもりの
夕立に
雨を残して
はるゝ村雲
かぜさはく
しのたのもりの
ゆふだちに
あめをのこして
はるるむらくも


かやり火の
煙そのこる
夕立の
雲はすきゐる
をちの山もと
かやりひの
けぶりそのこる
ゆふだちの
くもはすきゐる
をちのやまもと


夕立の
また過やらぬ
みなと江の
あしの葉そよく
風の涼しさ
ゆふだちの
またすぎやらぬ
みなとえの
あしのはそよく
かぜのすずしさ


茂りあふ
草葉のうへの
露ならて
名残もとめぬ
夕立の空
しげりあふ
くさばのうへの
つゆならて
なごりもとめぬ
ゆふだちのそら


なる神の
音もはるかに
しからきの
外山をめくる
夕立の雲
なるかみの
おともはるかに
しからきの
とやまをめくる
ゆふだちのくも


いつくにか
しはしすくさん
高島の
かち野にかゝる
夕立の空
いつくにか
しはしすくさん
たかしまの
かちのにかかる
ゆふだちのそら


なる神の
をとはそことも
なかりけり
くもれる方や
夕立の空
なるかみの
をとはそことも
なかりけり
くもれるかたや
ゆふだちのそら


谷風に
雲こそのほれ
信濃路や
木曽の御坂の
夕立の空



夕立の
名残の雲を
吹風に
鳥羽田のさなへ
末さはくなり
ゆふだちの
なごりのくもを
ふくかぜに
とばたのさなへ
すゑさはくなり


夕立の
雲の衣は
かさねても
空に涼しき
風の音かな



いとゝしく
あへの市人
さはくらし
坂こえかゝる
夕立の雲
いととしく
あへのいちひと
さはくらし
さかこえかかる
ゆふだちのくも


此里は
ふらぬも涼し
風過て
とをちにはるゝ
夕立の空



をちの空に
雲立のほり
けふしこそ
夕立すへき
けしき也けれ
をちのそらに
くもたちのぼり
けふしこそ
ゆふだちすべき
けしきなりけれ


夕立の
なこりはかりの
にはたつみ
日比もきかぬ
かはつ鳴なり
ゆふだちの
なこりはかりの
にはたつみ
ひころもきかぬ
かはづなくなり


日をさふる
ならのひろはに
鳴蝉の
声より晴る
夕立の空
ひをさふる
ならのひろはに
なくせみの
こゑよりはるる
ゆふだちのそら


山高み
こすゑにあらき
風立て
谷よりのほる
夕立の雲
やまたかみ
こすゑにあらき
かぜたちて
たによりのほる
ゆふだちのくも


風はやみ
雲の一むら
峰こえて
山みえそむる
夕立の跡
かぜはやみ
くものひとむら
みねこえて
やまみえそむる
ゆふだちのあと


夕立の
とをちを過る
雲のしたに
ふりこぬ雨そ
よそに見え行
ゆふだちの
とをちをすぐる
くものしたに
ふりこぬあめそ
よそにみえゆく


とまるへき
かけしなけれは
はる〳〵と
ぬれてをゆかん
夕立の雨
とまるべき
かげしなければ
はるばると
ぬれてをゆかん
ゆふだちのあめ


夕立の
雲間の日影
はれそめて
山のこなたを
わたるしらさき
ゆふだちの
くもまのひかげ
はれそめて
やまのこなたを
わたるしらさき


かくてはや
暮ぬとみつる
夕立の
日影高くも
晴る空かな
かくてはや
くれぬとみつる
ゆふだちの
ひかげたかくも
はるるそらかな


暮かゝる
とをちの空の
夕立に
山のはみせて
てらす稲妻
くれかかる
とをちのそらの
ゆふだちに
やまのはみせて
てらすいなづま


夏山の
みとりの木々を
吹かへし
夕立風の
袖にすゝしき
なつやまの
みとりのきぎを
ふきかへし
ゆふだちかぜの
そでにすすしき


夜をかけて
遠方めくる
夕立に
こなたの空は
月そ涼しき
よをかけて
とほかためくる
ゆふだちに
こなたのそらは
つきそすずしき


ゆふたちの
名残のしはふ
水こえて
しはしなかるゝ
庭のうたかた
ゆふたちの
なごりのしはふ
みづこえて
しはしなかるる
にはのうたかた


立のほり
みなみのはてに
雲はあれと
照日くまなき
比の大空
たちのぼり
みなみのはてに
くもはあれど
てるひくまなき
ころのおほぞら


位におまし〳〵ける時、大納言三位きぬをぬき置て局へおりにけるか、夕立のもりていたくぬれて侍けれは、からきぬの袖にをしつけてたまはせける

院御製