Весна
56
Лето
231
Осень
274
Зима
70
Любовь
92
Благопожелания
2
Странствия
30
Разлука
2
Скорбь
6
Буддийское
9
Синтоистское
7
Разное
117
Иное
0
作夜深而
穿江水手鳴
松浦船
梶音高之
水尾早見鴨
さよふけて
ほりえこぐなる
まつらぶね
かぢのおとたかし
みをはやみかも
На землю ночь сошла,
У мацурабунэ — ладьи из Мацура,
По Хориэ плывущей,
Так громко слышен нынче всплеск весла
Не оттого ли, что теченье быстро?
* Ладьи из Мацура (мацурабунэ) — ладьи особой конструкции, позднее так стали называться ладьи вообще, изготовленные и в других местах.
夜をさむみ
衣かりかね
なくなへに
萩のしたはも
うつろひにけり
よをさむみ
ころもかりかね
なくなへに
はきのしたはも
うつろひにけり
Нынче ночь холодна —
оденусь-ка я потеплее,
буду слушать сквозь сон
перекличку стаи гусиной
над лугами увядших хаги…

照る月の
光さえゆく
宿なれば
秋の水にも
こほりゐにけり
てるつきの
ひかりさえゆく
やどなれば
あきのみづにも
こほりゐにけり
Оттого, что в жилище
Даже свет проходит
Сияющей луны,
Лужи осенние
Льдом покрылись...
Примерный перевод

吹く風に
任する舟や
秋の夜の
月の上より
けふはこぐらむ
ふくかぜに
まかするふねや
あきのよの
つきのうへより
けふはこぐらむ


今よりの
衣かりがね
秋風に
たが夜寒とか
鳴きてきぬらむ
いまよりの
ころもかりがね
あきかぜに
たがよさむとか
なきてきぬらむ


さゆる夜も
淀まぬ水の
はやせ河
こほるは月の
光なりけり
さゆるよも
よどまぬみづの
はやせかは
こほるはつきの
ひかりなりけり


終夜
もゆるほたるを
けさ見れは
草のはことに
つゆそおきける
よもすから
もゆるほたるを
けさみれは
くさのはことに
つゆそおきける


見ても猶
あかぬ夜のまの
月影を
思ひ絶えたる
五月雨の空
みてもなほ
あかぬよのまの
つきかげを
おもひたえたる
さみだれのそら


眞柴かる
道や絶えなむ
山賤の
いやしきふれる
夜はの白雪
ましばかる
みちやたえなむ
やまがつの
いやしきふれる
よはのしらゆき


秋よりも
月にぞなるゝ
凉むとて
轉寢ながら
明すよな〳〵
あきよりも
つきにぞなるる
すずむとて
うたたねながら
あかすよなよな


床さえて
ねられぬ冬の
夜をなかみ
またるゝ鐘の
音そつれなき
とこさえて
ねられぬふゆの
よをなかみ
またるるかねの
おとそつれなき


ほととぎす
そのかみ山の
旅枕
ほのかたらひし
空ぞ忘れぬ
ほととぎす
そのかみやまの
たびまくら
ほのかたらひし
そらぞわすれぬ
Кукушка!
Ты, пролетая в небесах,
Тихонько пела на Горе богов,
А я, ночуя возле храма, тебе внимала,
Этой ночи — мне не забыть!

九重と
いふ計にや
かさぬらむ
御垣のうちの
夜はのしら雪
ここのへと
いふばかりにや
かさぬらむ
みかきのうちの
よはのしらゆき


郭公
聞かぬかぎりは
まどろまで
待てばや夏の
よはの短き
ほととぎす
きかぬかぎりは
まどろまで
まてばやなつの
よはのみぢかき


鳴き明す
心地こそすれ
時鳥
一こゑなれど
みじか夜のそら
なきあかす
ここちこそすれ
ほととぎす
ひとこゑなれど
みじかよのそら


宵の間は
志ばし待たれて
郭公
更くれば月の
影に鳴くなり
よひのまは
しばしまたれて
ほととぎす
ふくればつきの
かげになくなり


さらしなや
夜わたる月の
里人も
なくさめかねて
衣うつ也
さらしなや
よわたるつきの
さとひとも
なくさめかねて
ころもうつなり


みじか夜の
月をばめでじ
あぢきなく
かたぶきやすき
影もうらめし
みじかよの
つきをばめでじ
あぢきなく
かたぶきやすき
かげもうらめし


ほとゝぎす
待夜かさなる
思ねの
夢にさへなど
つれなかるらん
ほととぎす
まつよかさなる
おもひねの
ゆめにさへなど
つれなかるらん


山のはの
つらさをしらで
夏の夜は
半天にのみ
のこる月かな
やまのはの
つらさをしらで
なつのよは
なかそらにのみ
のこるつきかな
Летней ночью,
Не зная о жестокости
Склонов горных,
На середине неба
Остаётся луна.
Примерный перевод

時しらぬ
山こそあらめ
夏のよの
月さへこほろ
富士の川浪
ときしらぬ
やまこそあらめ
なつのよの
つきさへこほろ
ふじのかはなみ


みそぎする
夜はの河浪
音更けて
明けぬより吹く
袖の秋風
みそぎする
よはのかはなみ
おとふけて
あけぬよりふく
そでのあきかぜ


水上に
秋や立つらむ
御祓河
まだよひながら
風のすゞしき
みなかみに
あきやたつらむ
みそぎかは
まだよひながら
かぜのすずしき
Неужто осень настала
В верховьях реки,
Где проходим обряд омовенья?
Хоть не ночь ещё,
А ветер уже холодный...
Примерный перевод

み山いてて
夜はにやきつる
郭公
暁かけて
こゑのきこゆる
みやまいてて
よはにやきつる
ほとときす
あかつきかけて
こゑのきこゆる


さ夜ふけて
ねさめさりせは
郭公
人つてにこそ
きくへかりけれ
さよふけて
ねさめさりせは
ほとときす
ひとつてにこそ
きくへかりけれ


ふたこゑと
きくとはなしに
郭公
夜深くめをも
さましつるかな
ふたこゑと
きくとはなしに
ほとときす
よふかくめをも
さましつるかな


いつ方に
なきてゆくらむ
郭公
よとのわたりの
またよふかきに
いつかたに
なきてゆくらむ
ほとときす
よとのわたりの
またよふかきに
В чей же край
Пролетела с песней
Кукушка?
Ведь ночь глубока ещё
На переправе Ёдо.
Примерный перевод

さみたれは
いこそねられね
郭公
夜ふかくなかむ
こゑをまつとて
さみたれは
いこそねられね
ほとときす
よふかくなかむ
こゑをまつとて


夏の夜の
心をしれる
ほとときす
はやもなかなん
あけもこそすれ
なつのよの
こころをしれる
ほとときす
はやもなかなむ
あけもこそすれ


なつのよは
浦島のこか
はこなれや
はかなくあけて
くやしかるらん
なつのよは
うらしまのこか
はこなれや
はかなくあけて
くやしかるらむ
Ночь летняя
Совсем как шкатулка
Урасимо, —
Светает впустую,
До чего же досадно...
Примерный перевод

郭公
なくやさ月の
みしかよも
ひとりしぬれは
あかしかねつも
ほとときす
なくやさつきの
みしかよも
ひとりしぬれは
あかしかねつも
Даже короткой ночью,
Когда в пятом месяце
Кукушка поёт,
Коль спишь без любимой,
Так сложно дождаться рассвета...
Примерный перевод

ほとときす
松につけてや
ともしする
人も山へに
よをあかすらん
ほとときす
まつにつけてや
ともしする
ひともやまへに
よをあかすらむ


幾返り
起きふし志てか
冬の夜の
鳥の初音を
聞きそめつ覽
いくかへり
おきふししてか
ふゆのよの
とりのはつねを
ききそめつらん


今よりや
ねぬ夜かさねて
時鳥
忍ぶる比の
はつねまたまし
いまよりや
ねぬよかさねて
ほととぎす
しのぶるころの
はつねまたまし


はつこゑの
きかまほしさに
郭公
夜深くめをも
さましつるかな
はつこゑの
きかまほしさに
ほとときす
よふかくめをも
さましつるかな


ひと聲を
又もやきくと
時鳥
ね覺のまゝに
あかす夜半哉
ひとこゑを
またもやきくと
ほととぎす
ねさめのままに
あかすよはかな
В надежде
Услышать хотя б ещё раз
Голос кукушки,
Снова уснуть не в силах,
Так и не спал до рассвета...
Примерный перевод

一聲は
それかあらぬか
ほとゝぎす
おなじね覺の
人にとはゞや
ひとこゑは
それかあらぬか
ほととぎす
おなじねさめの
ひとにとはばや
Вот бы встретить мне тех,
Кто не спит, как и я,
И внимает:
Был ли это голос кукушки
Или, может быть, то показалось?..
Примерный перевод

渡津海乃
豊旗雲尓
伊理比<紗>之
今夜乃月夜
清明己曽
わたつみの
とよはたくもに
いりひさし
こよひのつくよ
さやけくありこそ
Над водной равниной морского владыки,
Где знаменем пышным встают облака,
Сверкают лучи заходящего солнца…
Луна, что появится ночью сегодня,
Хочу, чтобы чистой и яркой была!
* Песня идет под заголовком предыдущей в виде каэси-ута, но, как явствует из содержания, является самостоятельной (на что указывают и все комментарии).
阿可都岐波
止利母奈倶那利
天羅天羅能
可祢毛止与表奴
阿介婆天奴巳能与
あかつきは
とりもなくなり
てらでらの
かねもとよみぬ
あけはてぬこのよ

Примерный перевод

明くる夜の
月影慕ふ
ほとゝぎす
聲さへ雲の
いづくなる覽
あくるよの
つきかげしたふ
ほととぎす
こゑさへくもの
いづくなるらん


人知れぬ
思ひや繁き
時鳥
なつの夜をしも
鳴きあかすらむ
ひとしれぬ
おもひやしげき
ほととぎす
なつのよをしも
なきあかすらむ


登り得ぬ
ほども知られて
夏川の
早瀬に更くる
よはの篝火
のぼりえぬ
ほどもしられて
なつかはの
はやせにふくる
よはのかかりひ


月ならで
夜河にさせる
篝火も
おなじ桂の
ひかりとぞ見る
つきならで
よかはにさせる
かかりひも
おなじかつらの
ひかりとぞみる


鵜飼舟
くだすほどなき
短夜の
川瀬に殘る
かゞり火のかげ
うかひぶね
くだすほどなき
みぢかよの
かはせにのこる
かがりひのかげ


かゝりひの
かけしるけれは
ぬはたまの
よかはのそこは
みつももえけり
かかりひの
かけしるけれは
ぬはたまの
よかはのそこは
みつももえけり
Хоть знаю я,
Что факелов это отраженье,
Но ночью чёрной,
Как ягоды тута, мне кажется
Что будто дно реки горит...
Примерный перевод

秋風に
夜のふけゆけは
あまの河
かは瀨になみの
たちゐこそまて
あきかぜに
よのふけゆけは
あまのかは
かはせになみの
たちゐこそまて

[拾遺]
からころも
うつこゑきけは
つきゝよみ
またねぬひとを
そらにしるかな
からころも
うつこゑきけは
つききよみ
またねぬひとを
そらにしるかな

Вариант: そらにこそしれ
つきをたに
あかすとおもひて
ねぬものを
ほとゝきすさへ
なきわたるかな
つきをたに
あかすとおもひて
ねぬものを
ほとときすさへ
なきわたるかな


つねよりも
てりまさるかな
あきやまの
もみちをわけて
いつるつき影
つねよりも
てりまさるかな
あきやまの
もみちをわけて
いつるつきかげ
Сияет,
Сильнее, чем обычно
В осенних горах
Сквозь яркую листву
Проходящий лунный свет!
Примерный перевод

よるならは
つきとそみまし
わかやとの
にはしろたへに
ふりしけるゆき
よるならは
つきとそみまし
わかやとの
にはしろたへに
ふりしけるゆき

[拾遺]
よるならば
月とぞ見まし
我が宿の
庭白妙に
ふりつもる雪
よるならば
つきとぞみまし
わがやどの
にはしろたへに
ふりつもるゆき


よるならは
月とそ見まし
わかやとの
庭しろたへに
ふれるしらゆき
よるならは
つきとそみまし
わかやとの
にはしろたへに
ふれるしらゆき


ほとゝきす
まつところには
おともせて
いつれの里の
月になくらん
ほとときす
まつところには
おともせて
いつれのさとの
つきになくらん


こぬひとを
したにまちつゝ
ひさかたの
つきをあはれと
いはぬよそなき
こぬひとを
したにまちつつ
ひさかたの
つきをあはれと
いはぬよそなき

[拾遺]
郭公
なくやさ月の
玉くしげ
二こゑ聞きて
明くる夜もがな
ほととぎす
なくやさつきの
たまくしげ
ふたこゑききて
あくるよもがな


さらぬだに
ふす程もなき
夏の夜を
またれても鳴く
郭公哉
さらぬだに
ふすほどもなき
なつのよを
またれてもなく
ほととぎすかな


五月雨は
あかでぞすぐる
郭公
夜深く鳴きし
初音ばかりに
さみだれは
あかでぞすぐる
ほととぎす
よふかくなきし
はつねばかりに


たが里に
またできつらむ
時鳥
こよひばかりの
五月雨の聲
たがさとに
またできつらむ
ほととぎす
こよひばかりの
さみだれのこゑ


夏の夜の
雲路は遠く
なりまされ
傾ぶく月の
よるべなき迄
なつのよの
くもぢはとほく
なりまされ
かたぶくつきの
よるべなきまで


郭公
さやかにをなけ
夕月夜
雲間のかげは
ほのかなりとも
ほととぎす
さやかにをなけ
ゆふつきよ
くもまのかげは
ほのかなりとも


いつとても
またずは非ねど
同じくば
山時鳥
月になかなむ
いつとても
またずはあらねど
おなじくば
やまほととぎす
つきになかなむ


訪るべき
其あらましに
槇の戸を
頼めぬよはも
さゝで明ぬる
とはるべき
それあらましに
まきのとを
たのめぬよはも
ささであかぬる


時鳥
待つ夜の數は
かさなれど
聲は積らぬ
物にぞありける
ほととぎす
まつよのかずは
かさなれど
こゑはつもらぬ
ものにぞありける


足びきの
山郭公
深山出でゝ
夜ふかき月の
かげになくなり
あしびきの
やまほととぎす
みやまいでて
よふかきつきの
かげになくなり


こと夏は
如何鳴きけむ
郭公
今宵ばかりは
あらじとぞ聞く
ことなつは
いかがなきけむ
ほととぎす
こよひばかりは
あらじとぞきく


こと夏は
いかが鳴きけむ
ほととぎす
この宵ばかり
あやしきぞなき
ことなつは
いかがなきけむ
ほととぎす
このよひばかり
あやしきぞなき


夕月夜
かげろふ窓は
凉しくて
軒のあやめに
風わたる見ゆ
ゆふつきよ
かげろふまどは
すずしくて
のきのあやめに
かぜわたるみゆ


五月雨に
あたら月夜を
過しきて
晴るゝかひなき
夕闇の空
さみだれに
あたらつきよを
すごしきて
はるるかひなき
ゆふやみのそら


月影に
鵜舟のかゞり
さしかへて
曉やみの
夜がはこぐなり
つきかげに
うふねのかがり
さしかへて
あかつきやみの
よがはこぐなり


牡鹿待つ
さつをの火串
ほの見えて
よそに明行く
端山繁山
をしかまつ
さつをのほぐし
ほのみえて
よそにあけゆく
はやましげやま


五月やみ
そことも知らぬ
照射すと
端山が裾に
明しつる哉
さつきやみ
そこともしらぬ
ともしすと
はやまがすそに
あかしつるかな


かげ志げき
木の下やみの
暗き夜に
水の音して
水鷄鳴くなり
かげしげき
このしたやみの
くらきよに
みづのおとして
くひななくなり


心ある
夏の景色の
今宵かな
木の間の月に
くひなこゑして
こころある
なつのけしきの
こよひかな
このまのつきに
くひなこゑして


水鷄鳴く
森一むらは
木ぐらくて
月に晴れたる
野べの遠方
くひななく
もりひとむらは
きぐらくて
つきにはれたる
のべのとほかた


槇の戸を
しひてもたゝく
水鷄哉
月の光の
さすと見る〳〵
まきのとを
しひてもたたく
くひなかな
つきのひかりの
さすとみるみる


茂りあふ
庭の梢を
吹き分けて
風に洩りくる
月のすゞしさ
しげりあふ
にはのこずゑを
ふきわけて
かぜにもりくる
つきのすずしさ


うたゝねに
凉しき影を
片しきて
簾は月の
へだてともなし
うたたねに
すずしきかげを
かたしきて
すだれはつきの
へだてともなし


はしちかみ
轉寢ながら
更くる夜の
月の影しく
床ぞ凉しき
はしちかみ
うたたねながら
ふくるよの
つきのかげしく
とこぞすずしき


山水の
岩洩る音も
さ夜ふけて
木の間の月の
影ぞすゞしき
やまみづの
いはもるおとも
さよふけて
このまのつきの
かげぞすずしき
И звук воды,
Что меж камней стекает с гор,
И лунный свет,
В сени деревьев, в темноте,
Так освежают!
Примерный перевод
Чувствуется прохлада
宵のまに
暫し漂ふ
雲間より
待ち出でゝ見れば
明くる月影
よひのまに
しばしただよふ
くもまより
まちいでてみれば
あくるつきかげ


夏の夜は
岩がき清水
月冴えて
むすべばとくる
氷なりけり
なつのよは
いはがきしみづ
つきさえて
むすべばとくる
こほりなりけり


まだ宵の
月待つとても
明けにけり
短き夢の
結ぶともなく
まだよひの
つきまつとても
あけにけり
みぢかきゆめの
むすぶともなく


夕立の
風にわかれて
行く雲に
後れてのぼる
山の端のつき
ゆふだちの
かぜにわかれて
ゆくくもに
おくれてのぼる
やまのはのつき


すゞみつる
數多の宿も
靜まりて
夜更けて白き
道のべの月
すずみつる
あまたのやども
しづまりて
よふけてしらき
みちのべのつき
Спала жара,
И во многих домах
Теперь тишина,
Стемнела ночь, и над дорогой
Сияет белая луна!
Примерный перевод
* Все, изнурённые жарой, спят?
星多み
晴れたる空は
色濃くて
吹くとしもなき
風ぞ凉しき
ほしおほみ
はれたるそらは
いろこくて
ふくとしもなき
かぜぞすずしき


夏の夜の
侘しき事は
夢をだに
見る程もなく
明くるなりけり
なつのよの
わびしきことは
ゆめをだに
みるほどもなく
あくるなりけり


古への
野寺のかゞみ
跡絶えて
飛ぶ火は夜半の
螢なりけり
いにしへの
のてらのかがみ
あとたえて
とぶひはよはの
ほたるなりけり


底清き
玉江の水に
とぶ螢
もゆるかげさへ
すゞしかりけり
そこきよき
たまえのみづに
とぶほたる
もゆるかげさへ
すずしかりけり


月うすき
庭の眞清水
音澄みて
みぎはの螢
かげみだるなり
つきうすき
にはのましみづ
おとすみて
みぎはのほたる
かげみだるなり


池水は
風もおとせで
蓮葉の
うへこす玉は
ほたるなりけり
いけみづは
かぜもおとせで
はちすはの
うへこすたまは
ほたるなりけり


秋ちかし
雲居までとや
行く螢
澤邊のみづに
かげの亂るゝ
あきちかし
くもゐまでとや
ゆくほたる
さはべのみづに
かげのみだるる


秋風と
かりにやつぐる
夕ぐれの
雲近きまで
行くほたる哉
あきかぜと
かりにやつぐる
ゆふぐれの
くもちかきまで
ゆくほたるかな


露しげき
鳥羽田の面の
秋風に
玉ゆらやどる
宵のいなづま
つゆしげき
とばたのおもの
あきかぜに
たまゆらやどる
よひのいなづま


空晴れて
梢色濃き
月の夜の
かぜにおどろく
せみの一こゑ
そらはれて
こずゑいろこき
つきのよの
かぜにおどろく
せみのひとこゑ


もりかぬる
月はすくなき
木の下に
夜深き水の
音ぞ凉しき
もりかぬる
つきはすくなき
このしたに
よふかきみづの
おとぞすずしき


御祓する
ゆくせの波も
さ夜ふけて
秋風近し
賀茂の川みづ
みそぎする
ゆくせのなみも
さよふけて
あきかぜちかし
かものかはみづ
Поздним вечером волны,
Где проходит обряд очищенья,
Реки Камо холодны,
Скоро подует ветер
Надвигающейся осени.
Примерный перевод

夏すぎて
けふや幾日に
なりぬらむ
衣手すゞし
夜はの秋風
なつすぎて
けふやいくひに
なりぬらむ
ころもですゞし
よはのあきかぜ
Уж сколько
Дней прошло,
Как лето миновало.
Холодит рукав
Осенний ночной ветер.
Примерный перевод

ほのかにも
聞かぬ限は
時鳥
まつ人のみぞ
寐られざりける
ほのかにも
きかぬかぎりは
ほととぎす
まつひとのみぞ
ねられざりける


この里は
まだ夜ふかきに
時鳥
なきてや人の
ね覺待らん
このさとは
まだよふかきに
ほととぎす
なきてやひとの
ねさめまつらん


あやめひく
こよひ許や
思やる
都も草の
まくらなるらも
あやめひく
こよひばかりや
おもひやる
みやこもくさの
まくらなるらも
Этой ночью лишь,
Когда тянут ирисы,
В моей дорогой
Столице тоже
Будет у всех изголовье из трав!

Примерный перевод

明ぬるか
はや影うすし
夏衣
かとりのうらの
みじかよの月
あけぬるか
はやかげうすし
なつころも
かとりのうらの
みじかよのつき


時鳥
初音待たるゝ
時にこそ
みじかき夜半も
明しかねけれ
ほととぎす
はつねまたるる
ときにこそ
みじかきよはも
あかしかねけれ


時鳥
初音待たるゝ
時にこそ
みじかき夜半も
明しかねけれ
ほととぎす
はつねまたるる
ときにこそ
みじかきよはも
あかしかねけれ


なにはがた
芦のかりねの
夢さめて
袖に凉しき
みじかよの月
なにはがた
あしのかりねの
ゆめさめて
そでにすずしき
みじかよのつき


夏がりの
玉江の芦の
よもすがら
待出る月は
ありあけの空
なつがりの
たまえのあしの
よもすがら
まいづるつきは
ありあけのそら


月夜には
あらそひかねて
むば玉の
闇ぞ螢の
光なりける
つきよには
あらそひかねて
むばたまの
やみぞほたるの
ひかりなりける


あしま行
野澤の螢
たえ〴〵に
光みえさす
夕闇の空
あしまゆく
のさはのほたる
たえだえに
ひかりみえさす
ゆふやみのそら


もえあまる
あしの忍びの
思故
こやに夜更て
飛螢かな
もえあまる
あしのしのびの
おもひゆゑ
こやによふけて
とぶほたるかな


夏草の
しげみが下の
埋水
ありとしらせて
行ほたるかな
なつくさの
しげみがしたの
うもれみづ
ありとしらせて
ゆくほたるかな


春日のや
霜に朽にし
冬草の
又もえ出て
とぶほたるかな
かすがのや
しもにくちにし
ふゆくさの
またもえいでて
とぶほたるかな


飛螢
もえずばいかで
身にあまる
思有とも
よそにしらまし
とぶほたる
もえずばいかで
みにあまる
おもひありとも
よそにしらまし


明けやすき
夏の夜なれど
郭公
まつに幾たび
寐覺しつらむ
あけやすき
なつのよなれど
ほととぎす
まつにいくたび
ねざめしつらむ


待ちかねて
まどろむ夜はの
時鳥
夢ならで聞く
一聲もがな
まちかねて
まどろむよはの
ほととぎす
ゆめならできく
ひとこゑもがな


郭公
夜ふかき聲は
月まつと
起きていをねぬ
人ぞ聞きける
ほととぎす
よふかきこゑは
つきまつと
おきていをねぬ
ひとぞききける


まどろまば
聞かずやあらまし
時鳥
さも夜深く
も鳴渡る哉
まどろまば
きかずやあらまし
ほととぎす
さもよるふかく
もなわたるかな


あけばまづ
人に語らむ
時鳥
夜ふかく宿を
鳴きて過ぐなり
あけばまづ
ひとにかたらむ
ほととぎす
よふかくやどを
なきてすぐなり


夢かとぞ
おどろかれぬる
郭公
又もきなかぬ
夜はの一こゑ
ゆめかとぞ
おどろかれぬる
ほととぎす
またもきなかぬ
よはのひとこゑ


あまのはら
霞ふきとく
春風に
月のかつらも
花の香ぞする
あまのはら
かすみふきとく
はるかぜに
つきのかつらも
はなのかぞする


あたら夜の
まやのあまりに
ながむれば
まくらにくもる
ありあけの月
あたらよの
まやのあまりに
ながむれば
まくらにくもる
ありあけのつき


夢にだに
見る事ぞなき
年を經て
心長閑に
ぬる夜なければ
ゆめにだに
みることぞなき
としをへて
こころのどかに
ぬるよなければ


明け易き
空にぞいとゞ
なぐさまぬ
姨捨山の
みじか夜の月
あけやすき
そらにぞいとど
なぐさまぬ
おばすてやまの
みじかよのつき


重ねても
すずしかりけり
夏衣
薄きたもとに
宿る月影
かさねても
すずしかりけり
なつころも
うすきたもとに
やどるつきかげ
Летнее платье — тонко,
А коль надеть их несколько,
Чтобы не замёрзнуть, — согреют.
Но отражение луны на рукавах, сложенных
вместе,
Холодно, как прежде!
* Одна из заключительных песен летнего цикла, отображающая конец лета, в данном случае — холодные ночи. Отражение луны на рукавах — постоянный образ.
夏衣
かたへすずしく
なりぬなり
夜やふけぬらむ
ゆきあひの空
なつころも
かたへすずしく
なりぬなり
よやふけぬらむ
ゆきあひのそら
Почувствовал я:
Бок один замёрз.
Наверно, за полночь,
И на небесных тропах
Уж повстречались лето с осенью.
* Песня-прототип — танка Мицунэ из «Кокинсю»:
На небесной тропе,
Где встречаются
Лето и осень,
Лишь с одной стороны, наверное,
Веет холодом ветер.

夏衣
たちわかるへき
今夜こそ
ひとへにをしき
思ひそひぬれ
なつころも
たちわかるへき
こよひこそ
ひとへにをしき
おもひそひぬれ


ほととぎす
かねてし契る
ものならば
なかぬ夜さへは
またれざらまし
ほととぎす
かねてしちぎる
ものならば
なかぬよさへは
またれざらまし


ききつとも
いかがかたらむ
ほととぎす
おぼつかなしや
夜半の一声
ききつとも
いかがかたらむ
ほととぎす
おぼつかなしや
よはのひとこゑ


ひとこゑに
あくるならひの
短夜も
待つに久しき
ほととぎすかな
ひとこゑに
あくるならひの
みぢかよも
まつにひさしき
ほととぎすかな


卯の花の
さきちる丘の
ほととぎす
月夜よしとや
過ぎがてになく
うのはなの
さきちるをかの
ほととぎす
つくよよしとや
すぎがてになく


さみだれの
雲のはれまを
待ちえても
月みる程の
夜半ぞすくなき
さみだれの
くものはれまを
まちえても
つきみるほどの
よはぞすくなき


夏の夜は
水まさればや
あまの川
ながるる月の
影もとどめぬ
なつのよは
みづまさればや
あまのかは
ながるるつきの
かげもとどめぬ


くるるかと
みるほどもなく
あけにけり
をしみもあへぬ
夏の夜の月
くるるかと
みるほどもなく
あけにけり
をしみもあへぬ
なつのよのつき


夏の夜の
あまのいはとは
あけにけり
月の光の
さすほどもなく
なつのよの
あまのいはとは
あけにけり
つきのひかりの
さすほどもなく


かささぎの
雲のかけはし
程やなき
夏の夜わたる
山の端の月
かささぎの
くものかけはし
ほどやなき
なつのよわたる
やまのはのつき


難波なる
みつともいはじ
芦の根の
みじかき夜半の
いざよひの月
なにはなる
みつともいはじ
あしのねの
みじかきよはの
いざよひのつき


なつの夜は
あくる程なき
槙の戸を
またで水鶏の
何たたくらむ
なつのよは
あくるほどなき
まきのとを
またでくひなの
なにたたくらむ


なきぬなり
ゆふつげ鳥の
しだり尾の
おのれにも似ぬ
夜半の短さ
なきぬなり
ゆふつげとりの
しだりをの
おのれにもにぬ
よはのみぢかさ


今よりの
秋の夜風や
いかならむ
けさだに葛の
うらみがほなる
いまよりの
あきのよかぜや
いかならむ
けさだにくずの
うらみがほなる


今朝みれば
露ぞ隙なき
芦のやの
こやの一夜に
秋や來ぬ覽
けさみれば
つゆぞひまなき
あしのやの
こやのひとよに
あきやきぬらん
Глянул утром —
Вся росой покрыта
Крыша из тростника
На маленькой лачужке.
К ней за одну ночь пришла осень?..
Примерный перевод

七夕の
ふなのりすらし
天の河
きよき月夜に
雲立ちわたる
たなばたの
ふなのりすらし
あまのかは
きよきつきよに
くもたちわたる


山の端に
あかで入りぬる
夕月夜
いつ有明に
ならむとす覽
やまのはに
あかでいりぬる
ゆふつきよ
いつありあけに
ならむとすらん
Ночь, когда
Луна, ничего не осветив
Зашла за гребни гор,
Когда же станет
Рассветом?

Примерный перевод

風ふけば
枝やすからぬ
木の間より
仄めく秋の
夕月夜かな
かぜふけば
えだやすからぬ
このまより
ほのめくあきの
ゆふつきよかな
Ночь, подует ветер лишь,
И меж дерев,
Чьи ветки неспокойны,
Далёкий свет
Осенней луны.
Примерный перевод

草枕
このたびねにぞ
思ひしる
月よりほかの
友なかりけり
くさまくら
このたびねにぞ
おもひしる
つきよりほかの
ともなかりけり
В этом сне в пути,
Где изголовьем служат травы,
Подумалось мне, что
Иных и нет подруг
За вычетом луны.

Примерный перевод

もろともに
草葉の露の
おきゐずは
獨や見まし
秋の夜の月
もろともに
くさはのつゆの
おきゐずは
ひとりやみまし
あきのよのつき
Роса,
Что выпала одновременно
На травы и листы, не бодрствует,
Одна ли я хочу смотреть
На осени луну ночную?
Примерный перевод

我こそは
あかしのせとに
旅寐せめ
同じ水にも
宿る月かな
われこそは
あかしのせとに
たびねせめ
おなじみづにも
やどるつきかな
Пролив Акаси,
Где я собрался
Ночевать,
Не в этих водах ли
Живёт луна?
Примерный перевод

僞に
なりぞしぬべき
月影を
この見るばかり
人にかたらば
いつはりに
なりぞしぬべき
つきかげを
このみるばかり
ひとにかたらば


いづくにも
今宵の月を
みる人の
心や同じ
そらにすむらむ
いづくにも
こよひのつきを
みるひとの
こころやおなじ
そらにすむらむ
Где бы ни были
Люди, которые смотрят
На луну этой ночью,
Их чувства едины!
Как и единое небо, где светит луна.
Примерный перевод
проясняться?..
さやけさは
思做しかと
月影を
今宵としらぬ
人にとはゞや
さやけさは
おもひなしかと
つきかげを
こよひとしらぬ
ひとにとはばや


秋は猶
のこり多かる
年なれど
今夜の月の
名こそをしけれ
あきはなほ
のこりおほかる
としなれど
こよひのつきの
なこそをしけれ
Сей год таков,
Что много осени
Осталось,
Но доброго имени
Луны этой ночи мне жаль...
Примерный перевод
??
雲のなみ
かゝらぬさ夜の
月影を
きよ瀧川に
映してぞみる
くものなみ
かからぬさよの
つきかげを
きよたきかはに
うつしてぞみる
Ночью, когда волны облаков
Не закрывают
Свет ночной луны,
В водах реки Киётаки
Вижу её отраженье.
Примерный перевод

すみのぼる
心や空を
拂ふらむ
雲のちりゐぬ
あきの夜の月
すみのぼる
こころやそらを
はらふらむ
くものちりゐぬ
あきのよのつき
Не от сердца
Взлетевшего в ясную высь
Расчистилось небо?
В небесах, откуда ушли все облака
Луна осенней ночи.
Примерный перевод

月をみて
思ふ心の
儘ならば
行へもしらず
あくがれなまし
つきをみて
おもふこころの
ままならば
ゆくへもしらず
あくがれなまし


今宵わが
桂の里の
月を見て
おもひ殘せる
ことのなきかな
こよひわが
かつらのさとの
つきをみて
おもひのこせる
ことのなきかな
Этой ночью я
В деревне Кацура
Глядел на луну,
И не осталось
У меня горестей.
Примерный перевод

曇りなき
影を留めば
山のはに
入るとも月を
惜まざらまし
くもりなき
かげをとどめば
やまのはに
いるともつきを
をしまざらまし
Если на пиках гор
Останется свет луны
Безоблачного неба,
То мне не жаль луны,
Что за горы зашла!
Примерный перевод

山のはに
雲の衣を
ぬぎ捨てゝ
ひとりも月の
立ち昇るかな
やまのはに
くものころもを
ぬぎすてて
ひとりもつきの
たちのぼるかな
Снялось одеянье
Облаков, покрывших
Пики гор,
И лишь одна луна
Восходит над ними!
Примерный перевод

鏡山
みねより出づる
月なれば
曇る夜もなき
影をこそみれ
かがみやま
みねよりいづる
つきなれば
くもるよもなき
かげをこそみれ
С вершины
Горы Кагами, зеркальной,
Вышла луна!
В эту безоблачную ночь
Виден её свет.
Примерный перевод

蘆根はひ
かつみも茂き
沼水に
わりなく宿る
夜半の月かな
あしねはひ
かつみもしげき
ぬまみづに
わりなくやどる
よはのつきかな
В болоте,
Где густо растёт дикий рис,
И ползут корни тростника,
Не выбирая, ночует,
Полуночная луна.

草の上の
露微りせば
いかにして
今宵の月を
夜と知らまし
くさのうへの
つゆなかりせば
いかにして
こよひのつきを
よるとしらまし
Коль не было бы
На травах разных
Выпавшей росы,
Как бы узнали о луне
Этой ночи?

三笠山
光をさして
出でしより
くもらで明けぬ
秋の夜の月
みかさやま
ひかりをさして
いでしより
くもらであけぬ
あきのよのつき
Взошла из-за
Горы Микаса,
На склоны бросив свет,
С ясного неба сияя,
Луна осенней ночи!
Примерный перевод

なごりなく
夜半の嵐に
雲晴れて
心のまゝに
すめる月かな
なごりなく
よはのあらしに
くもはれて
こころのままに
すめるつきかな
Бесследно
Разметало облака
Ночною бурей,
И засияла
На ясном небе луна!
Примерный перевод
思うとおり。思いのまま。
宿からぞ
月の光も
まさりける
よの曇りなく
すめば也けり
やどからぞ
つきのひかりも
まさりける
よのくもりなく
すめばなりけり
В приюте временном
И лунный свет
Становится ярче,
На безоблачном ночном небе
Когда засияет луна.
Примерный перевод
???

По чравнению с мутной лунной за облаками?..
眺むれば
更けゆく儘に
雲晴れて
空も長閑に
すめる月かな
ながむれば
ふけゆくままに
くもはれて
そらものどかに
すめるつきかな
Смотрел на небо,
И пока оно темнело, —
Прояснилось от туч,
И спокойно в небе
Засияла луна.
Примерный перевод

三笠山
みねより出づる
月かげは
さほの河瀬の
氷なりけり
みかさやま
みねよりいづる
つきかげは
さほのかはせの
こほりなりけり
Свет луны,
Что вышла из-за вершины
Гор Микаса,
На отмели реки Сахо
В лёд обратился!
Примерный перевод

と絶して
人も通はぬ
たな橋は
月ばかりこそ
澄み渡りけれ
とだえして
ひともかよはぬ
たなばしは
つきばかりこそ
すみわたりけれ
И щели появились
В досчатом мосту,
И люди ходить перестали,
Лишь только свет ясной луны
Проходит насквозь...
Примерный перевод

月影の
さすにまかせて
行く舟は
明石の浦や
泊りなるらむ
つきかげの
さすにまかせて
ゆくふねは
あかしのうらや
とまりなるらむ
Ведомая
Лунным светом
Идущая ладья,
Не в бухте Акаси ль
На отдых станет?
Примерный перевод

松がねに
ころもかたしき
終夜
眺むる月を
いもや見るらむ
まつがねに
ころもかたしき
よもすがら
ながむるつきを
いもやみるらむ
У корней сосны
На одиноком ложе
Всю ночь напролёт
Глядел на луну,
Которую видит любимая тоже?
Примерный перевод

夜はになく
聲に心ぞ
あくがるゝ
我身は鹿の
妻ならねども
よはになく
こゑにこころぞ
あくがるる
わがみはしかの
つまならねども
Голос оленя
В полуночный час
Зовёт меня,
Хотя я даже
Не являюсь ему подругой...
Примерный перевод

女郎花
さける野べにぞ
宿りぬる
花の名立に
成や志ぬらむ
をみなへし
さけるのべにぞ
やどりぬる
はなのなたちに
なりやしぬらむ
Заночевал
На окраине поля,
Где цветут оминаэси,
Не пойдут ли
Слухи плохие обо мне?
Примерный перевод
この寝ぬる
夜のまに秋は
来にけらし
朝けの風の
きのふにも似ぬ
このいぬる
よのまにあきは
きにけらし
あさけのかぜの
きのふにもにぬ
За ночь прошедшую
Настала, видно, осень,
И ветер утренний
Так не похож на тот,
Что был вчера.
* Песней-прототипом может быть танка Аки-но Окими из антологии «Сюисю»:
За ночь одну
Настала осень.
Утренний ветер
Дует в рукава,
Пронизывая холодом...

いかばかり
身にしみぬらむ
たなばたの
つま待つ宵の
天の川風
いかばかり
みにしみぬらむ
たなばたの
つままつよひの
あまのかはかぜ
Супруга своего
Звезда Ткачиха ждёт, —
Каким холодным, верно,
Кажется ей в эту ночь
Осенний ветер!

月みれば
秋の思ひも
慰むを
など夜とともに
鹿は鳴くらむ
つきみれば
あきのおもひも
なぐさむを
などよとともに
しかはなくらむ


うき雲の
いさよふよひの
村雨に
おひ風しるく
にほふたちはな
うきくもの
いさよふよひの
むらさめに
おひかせしるく
にほふたちはな


今年生ひの
竹の一夜も
隔つれば
覺束なくも
なり増るかな
ことしおひの
たけのひとよも
へだつれば
おぼつかなくも
なりまさるかな


關守の
打ちぬる程と
待ちし夜も
今は隔つる
中のかよひ路
せきもりの
うちぬるほどと
まちしよも
いまはへだつる
なかのかよひぢ


天の川
たま橋急ぎ
わたさなむ
淺瀬辿るも
夜の更けゆくに
あまのかは
たまはしいそぎ
わたさなむ
あさせたどるも
よのふけけゆくに


秋の夜の
月の光の
もる山は
木の下かげも
さやけかりけり
あきのよの
つきのひかりの
もるやまは
このしたかげも
さやけかりけり
Осенней ночью
Свет луны просочился
На горе Моруяма
Под деревья,
И он такой чистый!
Примерный перевод

秋の夜の
月に心の
隙ぞなき
いづるをまつと
いるを惜むと
あきのよの
つきにこころの
ひまぞなき
いづるをまつと
いるををしむと


待つ程に
夏の夜痛く
ふけぬれば
惜みもあへず
山のはの月
まつほどに
なつのよいたく
ふけぬれば
をしみもあへず
やまのはのつき


思ひつゝ
ねなくに明くる
冬の夜の
袖の氷は
とけずもある哉
おもひつつ
ねなくにあくる
ふゆのよの
そでのこほりは
とけずもあるかな
Как я провёл
Всю эту зимнюю ночь,
Без сна,
Так и лёд на рукаве
Не растаял.
Примерный перевод
???
秋の夜を
眠ろまずのみ
明す身は
夢路とだにも
頼まざり鳬
あきのよを
まどろまずのみ
あかすみは
ゆめぢとだにも
たのまざりけり


幾夜經て
後か忘れむ
ちりぬべき
野べの秋萩
みがく月夜を
いくよへて
のちかわすれむ
ちりぬべき
のべのあきはぎ
みがくつくよを


秋の夜の
月の影こそ
木のまより
おちば衣と
身に映りけれ
あきのよの
つきのかげこそ
このまより
おちばころもと
みにうつりけれ


秋の夜の
月にかさなる
雲はれて
光さやかに
見る由もがな
あきのよの
つきにかさなる
くもはれて
ひかりさやかに
みるよしもがな


あきの夜の
月のひかりは
清けれど
人の心の
くまは照さず
あきのよの
つきのひかりは
きよけれど
ひとのこころの
くまはてらさず


いつとても
月みぬ秋は
なきものを
わきて今宵の
珍しき哉
いつとても
つきみぬあきは
なきものを
わきてこよひの
めづらしきかな


秋の夜は
人を靜めて
徒然と
かきなす琴の
音にぞなきぬる
あきのよは
ひとをしづめて
つれづれと
かきなすことの
ねにぞなきぬる


梅花
にほふ春へは
くらふ山
やみにこゆれと
しるくそ有りける
うめのはな
にほふはるへは
くらふやま
やみにこゆれと
しるくそありける
Наугад я бреду,
поднимаюсь на гору Курабу —
но цветов аромат
мне во мраке ночи укажет
верный путь к той сливовой роще…

春の夜の
やみはあやなし
梅花
色こそ見えね
かやはかくるる
はるのよの
やみはあやなし
うめのはな
いろこそみえね
かやはかくるる
В эту вешнюю ночь
окутаны мглою кромешной
белой сливы цветы,
но, хоть цвет и сокрыт от взора,
утаишь ли благоуханье?!

やとりして
春の山辺に
ねたる夜は
夢の内にも
花そちりける
やとりして
はるのやまへに
ねたるよは
ゆめのうちにも
はなそちりける
Я в весенних горах
нашел пристанище на ночь —
и всю ночь напролет
в сновиденьях всё так же кружились лепестки отцветающих вишен…

ひとりぬる
とこは草はに
あらねとも
秋くるよひは
つゆけかりけり
ひとりぬる
とこはくさはに
あらねとも
あきくるよひは
つゆけかりけり
Не из трав полевых
мое одинокое ложе —
но слезами росы
окропила его сегодня
эта ночь, несущая осень…

いつはとは
時はわかねと
秋のよそ
物思ふ事の
かきりなりける
いつはとは
ときはわかねと
あきのよそ
ものおもふことの
かきりなりける
Хоть во все времена
печали нас не покидают,
но осенняя ночь
неизбывной веет тоскою
и плодит бессонные думы…
Похожая танка есть в Ямато-моногатари, 144 и в Сюисю.
白雲に
はねうちかはし
とふかりの
かすさへ見ゆる
秋のよの月
しらくもに
はねうちかはし
とふかりの
かすさへみゆる
あきのよのつき
Под осенней луной
облака белеют во мраке —
и один за другим
пролетают дикие гуси,
в поднебесье крыльями машут…

さ夜なかと
夜はふけぬらし
かりかねの
きこゆるそらに
月わたる見ゆ
さよなかと
よはふけぬらし
かりかねの
きこゆるそらに
つきわたるみゆ
Вот уж полночь близка,
сгущаются тени ночные —
краткий сон мой спугнув,
под блуждающей в небе луною
перелётные гуси кличут…

うき事を
思ひつらねて
かりかねの
なきこそわたれ
秋のよなよな
うきことを
おもひつらねて
かりかねの
なきこそわたれ
あきのよなよな
Тяжкой думой объят
о горестях этой юдоли,
ночь за ночью не сплю —
раздаются в осеннем небе
голоса гусей перелетных…

山里は
秋こそことに
わひしけれ
しかのなくねに
めをさましつつ
やまさとは
あきこそことに
わひしけれ
しかのなくねに
めをさましつつ
В этом горном краю
так веет тоскою осенней!
Я грущу по ночам,
до рассвета глаз не смыкаю —
зов оленя будит округу…

いかならむ
今夜の雨に
床夏の
今朝だに露の
重げなりつる
いかならむ
こよひのあめに
とこなつの
けさだにつゆの
おもげなりつる


天の川
よふかくきみは
わたるとも
ひとしれすとは
おもはさらなん
あまのかは
よふかくきみは
わたるとも
ひとしれずとは
おもはざらなん


まことかと
みれともみえぬ
たなはたは
そらになき名を
たてるなるへし
まことかと
みれともみえぬ
たなはたは
そらになきなを
たてるなるへし


こぬひとを
つきになさはや
ぬは玉の
夜ことに我は
かけをたにみん
こぬひとを
つきになさはや
ぬはたまの
よことにわれは
かけをたにみん

イ:かけをたのまん
つるのおほく
よをへてみゆる
濱へこそ
千とせつもれる
ところなりけれ
つるのおほく
よをへてみゆる
はまへこそ
ちとせつもれる
ところなりけれ


おもひかね
いもかりゆけは
ふゆのよの
かはかせさむみ
千とりなくなり
おもひかね
いもかりゆけは
ふゆのよの
かはかせさむみ
ちとりなくなり


おもふこと
ありとはなしに
ひさかたの
つきよとなれは
いこそねられね
おもふこと
ありとはなしに
ひさかたの
つきよとなれは
いこそねられね


つれつれと
としふるやとは
ぬは玉の
よも日もなかく
なりぬへらなり
つれつれと
としふるやとは
ぬはたまの
よもひもなかく
なりぬへらなり


たなはたの
うきふしならて
よをふるは
としにひとたひ
あへはなりけり
たなはたの
うきふしならて
よをふるは
としにひとたひ
あへはなりけり


つきことに
あふよなれとも
よをへつゝ
こよひにまさる
かけなかりけり
つきことに
あふよなれとも
よをへつつ
こよひにまさる
かけなかりけり


はなとりも
みなゆきかひて
ぬはたまの
よのまにけふの
なつはきにけり
はなとりも
みなゆきかひて
ぬはたまの
よのまにけふの
なつはきにけり


から衣
うつ聲きけば
月きよみ
まだ寐ぬ人を
空にしるかな
からころも
うつこゑきけば
つききよみ
まだいぬひとを
そらにしるかな


明けぬとて
たが名は立たじ
歸る鴈
夜深き空を
何急ぐらむ
あけぬとて
たがなはたたじ
かへるかり
よふかきそらを
なにいそぐらむ


鳥の音は
鳴くとも未
夜深きに
など憂き人の
急ぐなるらむ
とりのねは
なくともいまだ
よふかきに
などうきひとの
いそぐなるらむ


なかきよを
おもひあかして
あさつゆの
おきてしくれは
そてそひちぬる
なかきよを
おもひあかして
あさつゆの
おきてしくれは
そてそひちぬる

イ:そてそぬれける
やまのはに
いりなむとおもふ
つきみつゝ
われはとなから
あらんとやする
やまのはに
いりなむとおもふ
つきみつつ
われはとなから
あらんとやする


山の端に
入なむと思ふ
月見つゝ
我はと乍ら
あらむとやする
やまのはに
いなむとおもふ
つきみつつ
われはとながら
あらむとやする


思兼ね
妹許行けば
冬夜の
川風寒み
千鳥鳴くなり
おもひかね
いもがりゆけば
ふゆのよの
かはかぜさむみ
ちどりなくなり


思ひかね
いもかりゆけは
冬の夜の
河風さむみ
ちとりなくなり
おもひかね
いもかりゆけは
ふゆのよの
かはかせさむみ
ちとりなくなり
Любовью истомившись,
Отправился я к милой
Зимней ночью.
Холодный ветер дул с реки,
И жалобно кричали птицы.
Перевод: Девять ступеней вака. Японские поэты об искусстве поэзии., М.:Наука, серия “Литературные памятники”, 2006
思ひかね
妹がり行けば
冬の夜の
川風寒み
千鳥鳴くなり
おもひかね
いもがりゆけば
ふゆのよの
かはかぜさむみ
ちどりなくなり
Любовью истомившись,
Отправился я к милой
Зимней ночью.
Холодный ветер дул с реки,
И жалобно кричали птицы.
* Любовью истомившись... — Это одна из известных песен Ки-но Цураюки, вошедшая в антологию "Сюивакасю", свиток 4-й, "Песни зимы" [224].
思ふ事有
りとはなしに
久方の
月よとなれは
ねられさりけり
おもふこと
ありとはなしに
ひさかたの
つきよとなれは
ねられさりけり


よひごとに
かはづのあまた
なくたには
水こそまされ
雨はふらねど
よひごとに
かはづのあまた
なくたには
みづこそまされ
あめはふらねど
В том поле, где так много
лягушек каждый вечер
плачет, —
вода все прибывает,
хоть и нет дождя
Кавалер имеет в виду свои слезы, которые он будто бы льет неустанно из-за ее жестокости.
こと夏は
いかゝなきけん
ほとゝきす
こよひはかりは
あらしとそきく
ことなつは
いかかなきけん
ほとときす
こよひはかりは
あらしとそきく


さみたれに
ものおもひをれは
ほとゝきす
よ深く鳴きて
いつちゆく覧
さみたれに
ものおもひをれは
ほとときす
よふかくなきて
いつちゆくらん


よひのまも
はかなく見ゆる
なつむしに
まとひまされる
こひもするかな
よひのまも
はかなくみゆる
なつむしに
まとひまされる
こひもするかな


よひのまも
はかなく見ゆる
夏虫に
迷ひまされる
こひもするかな
よひのまも
はかなくみゆる
なつむしに
まよひまされる
こひもするかな
Безрассудна любовь,
обреченная вскоре угаснуть, —
так ночною порой
праздно вьются летние мошки,
век которых уже отмерен…

としをへて
きえぬおもひは
ありなから
夜のたもとは
なほこほりつゝ
としをへて
きえぬおもひは
ありなから
よるのたもとは
なほこほりつつ


蟬の羽の
よるのころもは
うすけれと
うつり香こくも
なりにける哉
せみのはの
よるのころもは
うすけれと
うつりかこくも
なりにけるかな


暮れ果てゝ
今は限と
行く年の
道ふりかくせ
夜はのしら雪
くれはてて
いまはかぎりと
ゆくとしの
みちふりかくせ
よはのしらゆき
Стемнело,
Сегодня конец
Уходящего года.
Замети дорогу ему
Ночью, белый снег.
Примерный перевод

明けて見ぬ
たが玉章を
徒らに
まだ夜をこめて
かへる雁金
あけてみぬ
たがたまづさを
いたづらに
まだよをこめて
かへるかりがね


春の夜は
梢に宿る
月の色を
花にまがへて
あかず見るかな
はるのよは
こずゑにやどる
つきのいろを
はなにまがへて
あかずみるかな
Весенняя ночь,
С цветами сакуры смешался
Свет луны,
Что обрела приют в ветвях.
И не могу налюбоваться!
Примерный перевод

待えては
詠るほどの
隙もあらじ
月ぞこぬ夜の
すさびなりける
まちえては
ながむるほどの
ひまもあらじ
つきぞこぬよの
すさびなりける


またれつる
こよひもつゐに
更はてゝ
契らむ月や
淚問らむ
またれつる
こよひもつゐに
ふけはてて
ちぎらむつきや
なみだとふらむ


をのづから
さてもとはれば
かたらまし
待夜更行
心づくしを
をのづから
さてもとはれば
かたらまし
まつよふけゆく
こころづくしを


しきしのぶ
とふのすがごも
みふにだに
君がこぬ夜は
我やねらるゝ
しきしのぶ
とふのすがごも
みふにだに
きみがこぬよは
われやねらるる


廻りあふ
夜半さへなどか
下紐の
したにはとけぬ
こゝろなるらん
めぐりあふ
よはさへなどか
したひもの
したにはとけぬ
こころなるらん


あふ事を
せめて一夜と
思こし
わが心さへ
末ぞとをらぬ
あふことを
せめてひとよと
おもひこし
わがこころさへ
すゑぞとをらぬ


何事を
うらむるとしは
なけれども
あふ夜は袖の
つれまさる哉
なにことを
うらむるとしは
なけれども
あふよはそでの
つれまさるかな


下紐の
とくる夜はさへ
もらさじと
思ふ心は
むすぼほれつゝ
したひもの
とくるよはさへ
もらさじと
おもふこころは
むすぼほれつつ


晴れ間待つ
心計りを
慰めて
かすめる月に
夜ぞ更けにける
はれままつ
こころばかりを
なぐさめて
かすめるつきに
よぞふけにける


惜むべき
雲のいづくの
影もみず
かすみて明る
春の夜の月
をしむべき
くものいづくの
かげもみず
かすみてあくる
はるのよのつき


所から
光かはらば
春のつき
明石のうらは
かすまずもがな
ところから
ひかりかはらば
はるのつき
あかしのうらは
かすまずもがな


春の夜の
霞の間より
山の端を
ほのかにみせて
いづる月影
はるのよの
かすみのまより
やまのはを
ほのかにみせて
いづるつきかげ
Весенней ночью
Меж клубов дымки туманной
Склоны гор
Вдалеке показал
Вышедшей луны свет!
Примерный перевод

時鳥
まつとばかりの
短夜に
ねなまし月の
かげぞ明け行く
ほととぎす
まつとばかりの
みぢかよに
ねなましつきの
かげぞあけゆく


待ちわびて
今宵も明ぬ
時鳥
たがつれなさに
ねを習ひけむ
まちわびて
こよひもあかぬ
ほととぎす
たがつれなさに
ねをならひけむ


時鳥
たゞひとこゑと
契りけり
くるれば明くる
夏の夜の月
ほととぎす
ただひとこゑと
ちぎりけり
くるればあくる
なつのよのつき
Кукушки
Всего лишь крик один
Обещан был,
И прилетела лишь — светает,
Луна летней ночи.
Примерный перевод

時鳥
おどろかすなり
さらぬだに
老の寐覺は
夜ふかき物を
ほととぎす
おどろかすなり
さらぬだに
おいのねざめは
よふかきものを


あづまやの
まやの軒端の
短夜に
餘り程なき
夏のよのつき
あづまやの
まやののきはの
みぢかよに
あまりほどなき
なつのよのつき


凉しさに
あかずもある哉
石間行く
水に影見る
夏のよの月
すずしさに
あかずもあるかな
いしまゆく
みづにかげみる
なつのよのつき
В прохладе
Не может наскучить
Отраженье
В воде, бегущей меж камней,
Луны летней ночи.
Примерный перевод

詠むれば
すゞしかりけり
夏の夜の
月の桂に
風や吹くらむ
ながむれば
すずしかりけり
なつのよの
つきのかつらに
かぜやふくらむ
Прохладно
От одного лишь вида!
Летней ночью
В лунном лавре,
Наверное, дует ветер!
Примерный перевод
* вида луны
夏深き
みつのゝまこも
假寢して
衣手うすき
夜はの月かげ
なつふかき
みつののまこも
かりねして
ころもでうすき
よはのつきかげ
Сделал ночлег
Из трав комо на поле Мицу
В середине лета,
Слаб свет полуночной луны,
Как рукав моего одеянья.
Примерный перевод

手にならす
扇の風も
忘られて
閨もる月の
かげぞすゞしき
てにならす
あふぎのかぜも
わすられて
ねやもるつきの
かげぞすずしき
Забыт
И ветерок от веера,
Привычного руке:
Лучи лунного света,
Что проникает в спальню, прохладны!
Примерный перевод

更けぬ共
思はぬ程の
うたゝねに
軈て明け行く
夏の夜の空
ふけぬとも
おもはぬほどの
うたたねに
やがてあけゆく
なつのよのそら
Хоть и стемнело,
Но забылся я дремотою
Так сильно,
Сразу же стало рассветать
Небо летней ночи!
Примерный перевод

夜は燃え
晝は消え行く
螢哉
衛士のたく火に
いつ習ひけむ
よるはもえ
ひるはきえゆく
ほたるかな
ゑじのたくひに
いつならひけむ


織女の
雲のころもの
秋風に
あふたのみとや
今宵待つらむ
たなはたの
くものころもの
あきかぜに
あふたのみとや
こよひまつらむ


秋の夜は
人まつとしも
なけれども
荻の葉風に
驚かれぬる
あきのよは
ひとまつとしも
なけれども
をぎのはかぜに
おどろかれぬる


夜を寒み
狩場のをのに
鳴鹿の
なれは勝らぬ
妻をこふらし
よをさむみ
かりばのをのに
なくしかの
なれはかつらぬ
つまをこふらし


足引の
山風さむき
月かげに
さ夜更けぬとや
鹿の鳴くらむ
あしびきの
やまかぜさむき
つきかげに
さよふけぬとや
しかのなくらむ


待つほどの
空に心を
つくせとや
猶出でやらぬ
秋の夜の月
まつほどの
そらにこころを
つくせとや
なほいでやらぬ
あきのよのつき


かたしきの
袖の秋風
さ夜更けて
猶出でがての
山の端の月
かたしきの
そでのあきかぜ
さよふけて
なほいでがての
やまのはのつき


月影も
夜さむになりぬ
橋姫の
ころもやうすき
うぢの川風
つきかげも
よさむになりぬ
はしひめの
ころもやうすき
うぢのかはかぜ


橋姫の
かたしく袖も
夜やさむき
月にさえたる
うぢの河波
はしひめの
かたしくそでも
よやさむき
つきにさえたる
うぢのかはなみ


夜舟漕ぐ
由良の湊の
汐かぜに
おなじとわたる
秋の月かげ
よふねこぐ
ゆらのみなとの
しほかぜに
おなじとわたる
あきのつきかげ


さゝ島や
夜わたる月の
影さえて
磯こす波に
秋かぜぞ吹く
ささしまや
よわたるつきの
かげさえて
いそこすなみに
あきかぜぞふく


さらぬだに
更くるは惜しき
秋の夜の
月より西に
殘る白雲
さらぬだに
ふくるはをしき
あきのよの
つきよりにしに
のこるしらくも


月に行く
遠山ずりの
かり衣
しをるゝ露に
夜は更けにけり
つきにゆく
とほやまずりの
かりころも
しをるるつゆに
よはふけにけり


ながしとも
何思ひけむ
山鳥の
をのへにかゝる
秋のよの月
ながしとも
なにおもひけむ
やまどりの
をのへにかかる
あきのよのつき


小山田の
庵もる賤が
衣手は
露も夜すがら
おきあかしけり
をやまだの
いほもるしづが
ころもでは
つゆもよすがら
おきあかしけり


なべてふく
賤がさゝやの
秋風を
おのが夜寒と
うつ衣かな
なべてふく
しづがささやの
あきかぜを
おのがよさむと
うつころもかな


波よする
みつの濱べの
浦風に
こよひもさむく
衣うつなり
なみよする
みつのはまべの
うらかぜに
こよひもさむく
ころもうつなり


草の原
初霜まよふ
月かげを
夜さむになして
虫や鳴くらむ
くさのはら
はつしもまよふ
つきかげを
よさむになして
むしやなくらむ


夜もすがら
惜む袂の
露のみや
明けなば秋の
名殘なるべき
よもすがら
をしむたもとの
つゆのみや
あけなばあきの
なごりなるべき


思へども
今宵ばかりの
秋の空
更けゆく雲も
うち時雨つゝ
おもへども
こよひばかりの
あきのそら
ふけゆくくもも
うちしぐれつつ


あきの田と
よのなかをさへ
わかことく
かりにもひとは
思ふへらなり
あきのたと
よのなかをさへ
わかことく
かりにもひとは
おもふへらなり


さらぬだに
枯行く宿の
冬草に
あかずも結ぶ
夜はの霜かな
さらぬだに
かれゆくやどの
ふゆくさに
あかずもむすぶ
よはのしもかな
Пусть и не в цветах
Высохшее моё жилище,
Но зимние травы
Без устали морозит
Полуночный иней.
Примерный перевод

少女子が
袖志ろたへに
霜ぞおく
豐の明も
夜や更けぬらむ
をとめこが
そでしろたへに
しもぞおく
とよのあかりも
よやふけぬらむ


夜を寒み
須磨の入江に
立つ千鳥
空さへこほる
月に鳴く也
よをさむみ
すまのいりえに
たつちとり
そらさへこほる
つきになくなり
Ночь холодна,
В заливе Сума
Взлетели тидори
И раздались их голоса
Под даже замёрзшей луной на небе.
Примерный перевод

風わたる
宇治の河波
さゆる夜に
氷をかくる
せゞの網代木
かぜわたる
うぢのかはなみ
さゆるよに
こほりをかくる
せゞのあじろぎ
Ночью, когда холодает
Над волнами реки Удзи
Проносится ветер,
И скрывают лёд
Верши на мелководье.
Примерный перевод

三輪の山
夜のまの雪に
埋れて
下葉ぞ杉の
志るしなりける
みはのやま
よのまのゆきに
うづもれて
したばぞすぎの
しるしなりける


幾夜われ
稻葉の風を
身にしめて
露もる庵に
寐覺しつらむ
いくよわれ
いなはのかぜを
みにしめて
つゆもるいほに
ねざめしつらむ


みても又
たれか忍ばむ
故郷の
おぼろ月夜に
にほふ梅がえ
みてもまた
たれかしのばむ
ふるさとの
おぼろつきよに
にほふうめがえ


めぐり逢ふ
春も昔の
夜はの月
かはらぬそでの
涙にぞみる
めぐりあふ
はるもむかしの
よはのつき
かはらぬそでの
なみだにぞみる


詠めきて
年にそへたる
哀とも
身にしられぬる
春の夜の月
ながめきて
としにそへたる
あはれとも
みにしられぬる
はるのよのつき


老らくの
心もいまは
おぼろにて
空さへかすむ
春の夜の月
おいらくの
こころもいまは
おぼろにて
そらさへかすむ
はるのよのつき


せめてなど
月みる夜はも
身の程の
うきは數そふ
泪なる覽
せめてなど
つきみるよはも
みのほどの
うきはかずそふ
なみだなるらん


身のうさを
月に慰さむ
秋のよに
誰がため曇る
涙なるらむ
みのうさを
つきになぐさむ
あきのよに
たがためくもる
なみだなるらむ


身のうさの
忘やすると
詠めつゝ
今宵も月の
更けにける哉
みのうさの
わすれやすると
ながめつつ
こよひもつきの
ふけにけるかな


みしことの
皆かはり行く
老の身に
心ながきは
あきのよの月
みしことの
みなかはりゆく
おいのみに
こころながきは
あきのよのつき


秋のよも
常なるべしと
思ひせば
長閑にみまし
山のはの月
あきのよも
つねなるべしと
おもひせば
のどかにみまし
やまのはのつき


年をへて
みしも昔に
なりにけり
里はみなせの
秋のよの月
としをへて
みしもむかしに
なりにけり
さとはみなせの
あきのよのつき


昔思ふ
草にやつるゝ
軒ばより
有りしながらの
秋のよの月
むかしおもふ
くさにやつるる
のきばより
ありしながらの
あきのよのつき


山ふかく
心のうちに
契りても
かはらでみつる
秋のよの月
やまふかく
こころのうちに
ちぎりても
かはらでみつる
あきのよのつき


夜田かりに
我やとはれん
里の月
よたかりに
われやとわれん
さとのつき
Кто бы нанял меня
Сегодня ночным жнецом
Луна над деревней.

こえじ唯
同じかざしの
名もつらし
龍田の山の
夜はの白波
こえじただ
おなじかざしの
なもつらし
たつたのやまの
よはのしらなみ


有明の
影を志るべに
誘はれて
夜ふかくいづる
須磨の浦舟
ありあけの
かげをしるべに
さそはれて
よふかくいづる
すまのうらふね


里つゞき
夜はの嵐や
さむからむ
おなじ寐覺に
衣うつなり
さとつづき
よはのあらしや
さむからむ
おなじねざめに
ころもうつなり
Возле деревни
Полночный студёный ветер
Холодает?
И я проснулся,
И одежды отбивают...
Примерный перевод

誰が里と
聞きも分かれず
ゆふ月夜
覺束なくも
衣うつかな
たがさとと
ききもわかれず
ゆふつきよ
おぼつかなくも
ころもうつかな


ゆふつく夜
をくらの山に
なくしかの
こゑの内にや
秋はくるらむ
ゆふつくよ
をくらのやまに
なくしかの
こゑのうちにや
あきはくるらむ
Не печальный ли зов
оленя, что кличет во мраке
на горе Огура,
возвещает неотвратимо
окончанье поры осенней?..

夕月夜
小倉山に
鳴鹿の
聲の內に哉
秋は來るらむ
ゆふづくよ
をぐらのやまに
なくしかの
こゑのうちにや
あきはくるらむ


あきの夜に
雨ときこえて
ふる物は
風にしたかふ
紅葉なりけり
あきのよに
あめときこえて
ふるものは
かせにしたかふ
もみちなりけり
Осенней ночью,
После прошедшего дождя
То, что падает:
За ветром следующие
Осенние листья.
Примерный перевод

終夜
詠めてだにも
なぐさまむ
明けてみるべき
秋の空かは
よもすがら
ながめてだにも
なぐさまむ
あけてみるべき
あきのそらかは


ひさきおふる
をののあさちに
おく霜の
しろきをみれは
夜やふけぬらん
ひさきおふる
をののあさちに
おくしもの
しろきをみれは
よやふけぬらむ


たが垣ね
そこともしらぬ
梅が香の
夜はの枕に
慣にける哉
たがかきね
そこともしらぬ
うめがかの
よはのまくらに
なれにけるかな


春のよの
月にむかしや
思ひ出づる
高津の宮に
匂ふ梅かも
はるのよの
つきにむかしや
おもひいづる
たかつのみやに
にほふうめかも
Из-за луны
Весенней ночи
Вспомнил о былом,
О том, как цвели сливы
В храме Такацу.
Примерный перевод

梅が香も
身にしむ頃は
昔にて
人こそあらね
春のよのつき
うめがかも
みにしむころは
むかしにて
ひとこそあらね
はるのよのつき


まどろまぬ
程を知せて
夜もすがら
物思ふ人や
衣うつらむ
まどろまぬ
ほどをしらせて
よもすがら
ものおもふひとや
ころもうつらむ


九重の
内たにあかき
月影に
あれたるやとを
思ひこそやれ
ここのへの
うちたにあかき
つきかけに
あれたるやとを
おもひこそやれ


ももしきの
大宮なから
やそしまを
見る心地する
秋のよの月
ももしきの
おほみやなから
やそしまを
みるここちする
あきのよのつき


水のおもに
やとれる月の
のとけきは
なみゐて人の
ねぬよなれはか
みつのおもに
やとれるつきの
のとけきは
なみゐてひとの
ねぬよなれはか


夜をさむみ
衣かりかね
なくなへに
はきのしたはは
色つきにけり
よをさむみ
ころもかりかね
なくなへに
はきのしたはは
いろつきにけり
Не потому ль,
Что ночь холодна
От криков гусей
Нижние листья хаги
Все пожелтели!
Примерный перевод

よを寒み
衣かりがね
鳴なへに
萩の下葉も
うつろひにけり
よをさむみ
ころもかりがね
なくなへに
はぎのしたばも
うつろひにけり
Ночь холодна...
Пришлось занять одежду.
Как жалобно курлычут гуси,
И снизу пожелтел уже
Куст хаги...

深き夜に
月見るをりは
知らねども
まづ山里ぞ
思ひやらるる
ふかきよに
つきみるをりは
しらねども
まづやまざとぞ
おもひやらるる
Когда во тьме ночи глубокой
К луне ты устремляешь взор,
То первое, что в мыслях предстаёт —
Затерянное горное селенье,
Пусть даже жители его тебе чужие.

いかにして
一夜ばかりの
竹の葉に
みきといふ名を
殘しそめけん
いかにして
ひとよばかりの
たけのはに
みきといふなを
のこしそめけん


一こゑに
あくる夜ならば
曉の
夕付鳥は
いかゞなくらむ
ひとこゑに
あくるよならば
あかつきの
ゆふつけどりは
いかがなくらむ


あつめては
國のひかりと
なりやせん
我窓てらす
夜半の螢は
あつめては
くにのひかりと
なりやせん
われまどてらす
よはのほたるは


集めしも
いまは昔の
我窓を
猶すぎがてに
飛螢哉
あつめしも
いまはむかしの
わがまどを
なほすぎがてに
とぶほたるかな


あつめねど
ねぬ夜の窓に
飛螢
心をてらす
光ともがな
あつめねど
ねぬよのまどに
とぶほたる
こころをてらす
ひかりともがな


灯の
かげはのこりて
あくる夜の
窓にきゆるは
螢なりけり
ともしびの
かげはのこりて
あくるよの
まどにきゆるは
ほたるなりけり


わが名をも
君か光に
あらはして
今夜のよひの
月ぞさやけき
わがなをも
きみかひかりに
あらはして
こよひのよひの
つきぞさやけき


和哥の浦や
松の木のまの
夜半の月
心つくさで
身をてらさばや
わかのうらや
まつのこのまの
よはのつき
こころつくさで
みをてらさばや


長月や
けふみか月も
光そへて
星にたむくる
夜半の灯
ながつきや
けふみかつきも
ひかりそへて
ほしにたむくる
よはのともしび


住なれぬ
いたやの軒の
ひまもりて
霜夜の月の
影ぞ寒けき
すみなれぬ
いたやののきの
ひまもりて
しもよのつきの
かげぞさむけき


夢ならで
又やはみんと
悲しきは
とよのあかりの
夜半の月影
ゆめならで
またやはみんと
かなしきは
とよのあかりの
よはのつきかげ


鳥の音の
おどろかさずば
夜とゝもに
思さまなる
夢もみてまし
とりのねの
おどろかさずば
よとともに
おもふさまなる
ゆめもみてまし


よひのまは
磯の浪分
こぐ舟の
おきに出たる
蜑のいさり火
よひのまは
いそのなみわけ
こぐふねの
おきにいでたる
あまのいさりひ


なにはえや
芦間の浪の
よるの鶴
子を思みちは
さはらずも哉
なにはえや
あしまのなみの
よるのつる
こをおもふみちは
さはらずもがな


なきかげを
さそひてやどれ
夜はの月
昔をこふる
袖の泪に
なきかげを
さそひてやどれ
よはのつき
むかしをこふる
そでのなみだに


雲井まで
かよはゞ告よ
夜の鶴の
なくねにたぐふ
思ありとは
くもゐまで
かよはばつげよ
よるのつるの
なくねにたぐふ
おもひありとは


ねにたてば
われおとらめや
夜のつるの
子を思ふ事も
君獨かは
ねにたてば
われおとらめや
よるのつるの
こをおもふことも
きみひとりかは


しめ〴〵と
今宵の雨の
ふるまひに
奉行の人の
氣色をぞしる
しめじめと
こよひのあめの
ふるまひに
ぶぎやうのひとの
けしきをぞしる


明けやらで
まだ夜は深き
雪のうちに
ふみゝる道は
跡やなか覽
あけやらで
まだよはふかき
ゆきのうちに
ふみゝるみちは
あとやなからん


よもすがら
野べの白雪
ふるごとも
千世松風の
ためしにやひく
よもすがら
のべのしらゆき
ふるごとも
ちよまつかぜの
ためしにやひく


今宵しも
いかなる神の
誓ひにて
ものゝねならす
跡となりけむ
こよひしも
いかなるかみの
ちかひにて
もののねならす
あととなりけむ


はるゝよの
月とは誰か
ながむらん
かたへ霞める
春の空かな
はるるよの
つきとはたれか
ながむらん
かたへかすめる
はるのそらかな


今宵又
はじめの秋の
なかばとて
かず〴〵月の
影ぞみちぬる
こよひまた
はじめのあきの
なかばとて
かず〴〵つきの
かげぞみちぬる


心にも
あらで今宵の
月をみて
更けぬさきにと
誰を待つらん
こころにも
あらでこよひの
つきをみて
ふけぬさきにと
たれをまつらん


是も又
待つとしなれば
秋のよの
ふけぬさきにと
月をみる哉
これもまた
まつとしなれば
あきのよの
ふけぬさきにと
つきをみるかな


澄みまさる
今宵の月の
いかなれば
半よりけに
さやけかるらん
すみまさる
こよひのつきの
いかなれば
なかばよりけに
さやけかるらん


たゞいまは
おきてゐぞとは
いふめれど
衣片敷き
誰もねなゝん
ただいまは
おきてゐぞとは
いふめれど
ころもかたしき
たれもねななん


夜な〳〵も
あふとは見えす
いかにねて
待へき夢の
契成らん
よなよなも
あふとはみえす
いかにねて
まつへきゆめの
ちぎりなるらん

*5契なりけんイ
秋くれは
千ゝに思ひの
長き夜を
月にうらみて
鹿も鳴也
あきくれは
ちぢにおもひの
ながきよを
つきにうらみて
しかもなくなり


須磨のあまの
しほたれ衣
ほしやらて
さなからやとす
秋の夜の月
すまのあまの
しほたれころも
ほしやらて
さなからやとす
あきのよのつき


よひのまは
もらぬ木はに
袖ぬれて
時雨になりぬ
暁の空
よひのまは
もらぬこのはに
そでぬれて
しぐれになりぬ
あかつきのそら


袖にこそ
移らざりけれ
卯の花の
垣根ばかりの
夜はの月影
そでにこそ
うつらざりけれ
うのはなの
かきねばかりの
よはのつきかげ


宵の間も
おぼつかなきを
時鳥
鳴くなる聲の
ほどの遙けき
よひのまも
おぼつかなきを
ほととぎす
なくなるこゑの
ほどのはるけき


いにしへの
秋をこふとて
夜もすから
おきあかしつる
袖の露かな
いにしへの
あきをこふとて
よもすから
おきあかしつる
そでのつゆかな


月影の
ふけゐの浦の
さ夜千鳥
のこる跡にも
音はなかれけり
つきかげの
ふけゐのうらの
さよちとり
のこるあとにも
ねはなかれけり


あまのはら
おなじいはとを
いづれども
ひかりことなる
秋のよの月
あまのはら
おなじいはとを
いづれども
ひかりことなる
あきのよのつき


名にたてゝ
秋のなかはゝ
こよひそと
思ひかほなる
月の影哉
なにたてて
あきのなかはは
こよひそと
おもひかほなる
つきのかげかな


宮こにて
いかに語らん
紀の国や
吹上の浜の
秋の夜の月
みやこにて
いかにかたらん
きのくにや
ふきあげのはまの
あきのよのつき


難波かた
あまのたくなは
なかしとも
思ひそはてぬ
秋の夜の月
なにはかた
あまのたくなは
なかしとも
おもひそはてぬ
あきのよのつき


とこよなる
鳥の声にて
岩戸とち
光なき世は
あけはしめける
とこよなる
とりのこゑにて
いはととち
ひかりなきよは
あけはしめける


君ゆへと
いふ名はたてし
消はてん
夜半の煙の
末まてもみよ
きみゆへと
いふなはたてし
きえはてん
よはのけぶりの
すゑまてもみよ


かけなれて
やとる月かな
人しれす
よな〳〵さはく
袖の湊に
かけなれて
やとるつきかな
ひとしれす
よなよなさはく
そでのみなとに


うらみわひ
猶かへせとも
さよ衣
夢にもおなし
つらさ成けり
うらみわひ
なほかへせとも
さよころも
ゆめにもおなし
つらさなりけり


秋の夜の
月とたのめし
一言に
冬の空まて
なかめつる哉
あきのよの
つきとたのめし
ひとことに
ふゆのそらまて
なかめつるかな


空もなを
秋の別や
おしからん
涙ににたる
夜はのむらさめ
そらもなを
あきのわかれや
おしからん
なみだににたる
よはのむらさめ

*3おしむらんイ
夏の夜は
まつ人もなき
槙の戸も
あけなからのみ
あかしつる哉
なつのよは
まつひともなき
まきのとも
あけなからのみ
あかしつるかな


月たにも
心つくさぬ
山のはに
まつよひすくる
ほとゝきす哉
つきたにも
こころつくさぬ
やまのはに
まつよひすくる
ほとときすかな


天河
水かけ草の
露のまに
たま〳〵きても
明ぬ此夜は
あまのがは
みづかけくさの
つゆのまに
たまたまきても
あかぬこのよは


なけや猶
をのか五月の
郭公
誰ゆへならぬ
夜半のね覚を
なけやなほ
をのかさつきの
ほととぎす
たれゆへならぬ
よはのねさを


葛城の
夜半の契の
岩橋や
たえて通はぬ
たくひ成らん
かづらきの
よはのちぎりの
いははしや
たえてかよはぬ
たくひなるらん


秋の夜は
尋ぬる宿に
人もなし
たれも月にや
あくかれぬらん
あきのよは
たづぬるやどに
ひともなし
たれもつきにや
あくかれぬらん


庭の虫
よそのきぬたの
こゑ〳〵に
秋の夜深き
哀をそきく
にはのむし
よそのきぬたの
こゑこゑに
あきのよふかき
あはれをそきく


をちかへり
なけや五月の
郭公
やみのうつゝの
道まとふかに
をちかへり
なけやさつきの
ほととぎす
やみのうつつの
みちまとふかに


なく〳〵も
みし夜のかけや
思ひ出る
月の都の
秋のかりかね
なくなくも
みしよのかけや
おもひいづる
つきのみやこの
あきのかりかね

*2みし世のかけやイ
待程は
山のあなたに
更ぬれと
出てもなかき
秋のよの月
まつほどは
やまのあなたに
ふけぬれと
いでてもなかき
あきのよのつき


よとゝもに
おなし雲ゐの
月なれと
秋は光そ
照まさりける
よとともに
おなしくもゐの
つきなれと
あきはひかりそ
てりまさりける


秋の夜の
なかき思ひや
通ふらん
おなしね覚の
棹鹿の声
あきのよの
ながきおもひや
かよふらん
おなじねざめの
さほしかのこゑ


ひとりねは
なかきならひの
秋の夜を
あかしかねてや
鹿も鳴らん
ひとりねは
なかきならひの
あきのよを
あかしかねてや
しかもなくらん


あまの原
おなし岩戸を
いつれとも
ひかりことなる
秋の夜の月
あまのはら
おなしいはとを
いつれとも
ひかりことなる
あきのよのつき


久堅の
月影きよし
あまのはら
雲ゐをわたる
夜半の秋風
ひさかたの
つきかげきよし
あまのはら
くもゐをわたる
よはのあきかぜ


むかしより
おなしみ空の
月なれと
秋のためしや
今よひ成らん
むかしより
おなしみそらの
つきなれと
あきのためしや
こよひなるらん


行すゑも
今よひの月を
思ひ出て
さやけかりきと
人にかたらん
ゆくすゑも
こよひのつきを
おもひいでて
さやけかりきと
ひとにかたらん


逢坂の
関立出る
影見れは
こよひそ秋の
もち月の駒
あふさかの
せきたちいづる
かげみれば
こよひぞあきの
もちづきのこま


秋の月
河をとすみて
明す夜に
遠方人の
誰をとふらん
あきのつき
かはをとすみて
あかすよに
とほかたひとの
たれをとふらん


秋の夜は
すまの関守
すみかへて
月やゆきゝの
人とゝむらん
あきのよは
すまのせきもり
すみかへて
つきやゆききの
ひとととむらん


とへかしな
芦屋の里の
はるゝ夜に
我すむかたの
月はいかにと
とへかしな
あしやのさとの
はるるよに
わがすむかたの
つきはいかにと


奥つ風
吹上の浜の
白妙に
猶すみのほる
秋のよの月
おきつかぜ
ふきあげのはまの
しろたへに
なほすみのほる
あきのよのつき


明石かた
海士のとまやの
煙にも
しはしそくもる
秋のよの月
あかしかた
あまのとまやの
けぶりにも
しはしそくもる
あきのよのつき


問人も
あらしと思ふを
みわの山
いかにすむらん
秋の夜の月
とふひとも
あらしとおもふを
みわのやま
いかにすむらん
あきのよのつき


よそにみし
雲たにもなし
かつらきや
嵐吹夜の
山のはの月
よそにみし
くもたにもなし
かつらきや
あらしふくよの
やまのはのつき


時しらぬ
雪に光や
さえぬらん
富士の高根の
秋の夜の月
ときしらぬ
ゆきにひかりや
さえぬらん
ふじのたかねの
あきのよのつき


夜もすから
庵もる賎は
秋の田の
いねかてにのみ
月やみるらん
よもすから
いほもるしずは
あきのたの
いねかてにのみ
つきやみるらん


いつくにか
思ふことをも
忍ふへき
くまなくみゆる
秋の夜の月
いつくにか
おもふことをも
しのふへき
くまなくみゆる
あきのよのつき


くもれとや
老の涙も
契けむ
昔より見る
秋の夜の月
くもれとや
おいのなみだも
ちぎりけむ
むかしよりみる
あきのよのつき

2-3イ:老の涙に-契らむ
秋の夜の
なかき思ひを
いかゝせん
月になくさむ
心ならすは
あきのよの
なかきおもひを
いかかせん
つきになくさむ
こころならすは


秋の夜も
やゝ更にけり
山鳥の
おろの初尾に
かゝる月影
あきのよも
ややふけにけり
やまどりの
おろのはつをに
かかるつきかげ


身にしれは
よるなく虫そ
あはれなる
浮世を秋の
なかき思ひに
みにしれは
よるなくむしそ
あはれなる
うきよをあきの
なかきおもひに


きり〴〵す
なかき恨を
すかのねの
思ひみたれて
なかぬ夜そなき
きりぎりす
なかきうらみを
すかのねの
おもひみたれて
なかぬよそなき


かすむ夜の
光を花と
匂ふにそ
月のかつらの
春もしらるゝ
かすむよの
ひかりをはなと
にほふにそ
つきのかつらの
はるもしらるる


春のきる
衣のぬきは
しらねとも
守影うすき
夜はの月かな
はるのきる
ころものぬきは
しらねとも
もるかげうすき
よはのつきかな


玉島や
川瀬の浪の
音はして
霞にうかふ
春の月かけ
たましまや
かはせのなみの
おとはして
かすみにうかふ
はるのつきかけ


なかむれは
こぬ人またる
春のよの
月こそうたて
空たのめなれ
なかむれは
こぬひとまたる
はるのよの
つきこそうたて
そらたのめなれ


おほろなる
光は月の
とかならて
霞にかこつ
春のよの空
おほろなる
ひかりはつきの
とかならて
かすみにかこつ
はるのよのそら


さ夜更て
宿もる犬の
声たかし
むらしつかなる
月の遠かた
さよふけて
やどもるいぬの
こゑたかし
むらしつかなる
つきのとほかた


をともなく
夜は更すきて
遠近の
里の犬こそ
声あはすなれ
をともなく
よはふけすきて
をちこちの
さとのいぬこそ
こゑあはすなれ


はるかなる
声はかりして
きり〴〵す
ねなくに秋の
夜をあかしつる
はるかなる
こゑはかりして
きりぎりす
ねなくにあきの
よをあかしつる


故郷は
軒はの荻を
かことにて
ねぬ夜の床に
秋風そふく
ふるさとは
のきはのをぎを
かことにて
ねぬよのとこに
あきかぜそふく


天川
かはへの霧の
ふかき夜に
妻むかへ舟
今かいつらし
あまのかは
かはへのきりの
ふかきよに
つまむかへふね
いまかいつらし


山のはは
そこともわかぬ
夕くれに
霞を出る
春の夜の月
やまのはは
そこともわかぬ
ゆふくれに
かすみをいづる
はるのよのつき


雲みたれ
春の夜風の
吹なへに
かすめる月そ
猶かすみゆく
くもみたれ
はるのよかぜの
ふくなへに
かすめるつきそ
なほかすみゆく


難波かた
おほろ月夜の
入しほに
明かたかすむ
淡路島山
なにはかた
おほろつきよの
いりしほに
あけかたかすむ
あはじしまやま


春の夜の
明ゆく空は
桜さく
山の端よりそ
しらみそめける
はるのよの
あけゆくそらは
さくらさく
やまのはよりそ
しらみそめける


山のはの
月まつ空の
にほふより
花にそむくる
春のともし火
やまのはの
つきまつそらの
にほふより
はなにそむくる
はるのともしび


おほろなる
影とは何か
思ひけん
花にうつろふ
春の夜の月
おほろなる
かげとはなにか
おもひけん
はなにうつろふ
はるのよのつき


おぼろなる
影とも見えず
軒近き
花に移ろふ
春の夜のつき
おぼろなる
かげともみえず
のきちかき
はなにうつろふ
はるのよのつき


くれぬとも
宿をはとはし
山桜
月にも花は
見えぬ物かは
くれぬとも
やどをはとはし
やまさくら
つきにもはなは
みえぬものかは


春の夜の
かすめる空の
月影に
散しく花の
色はまかひぬ
はるのよの
かすめるそらの
つきかげに
ちりしくはなの
いろはまかひぬ


みよし野の
峰の花園
風ふけは
麓にくもる
春のよの月
みよしのの
みねのはなぞの
かぜふけは
ふもとにくもる
はるのよのつき


風にさそ
ちるらん花の
面影の
見ぬ色おしき
春の夜のやみ
かぜにさそ
ちるらんはなの
おもかげの
みぬいろおしき
はるのよのやみ


よもすから
おしみ〳〵て
あかつきの
鐘とともにや
春はつくらん
よもすから
おしみおしみて
あかつきの
かねとともにや
はるはつくらん


待えても
たれかはきかむ
時鳥
たゝ一こゑを
さ夜更てなく
まちえても
たれかはきかむ
ほととぎす
たたひとこゑを
さよふけてなく


なをさりに
待人はみな
ねぬる夜の
ふけて後なく
郭公かな
なをさりに
まつひとはみな
ねぬるよの
ふけてのちなく
ほととぎすかな


ふくる夜に
おきてきかすは
時鳥
はつかなる音を
誰かしらまし
ふくるよに
おきてきかすは
ほととぎす
はつかなるねを
たれかしらまし


更る夜に
おきてまたねば
時鳥
はつかなるねも
いかできかまし
ふけるよに
おきてまたねば
ほととぎす
はつかなるねも
いかできかまし


晴やらぬ
雲より風は
もらねとも
月夜はしるし
五月雨の空
はやらぬ
くもよりかぜは
もらねとも
つきよはしるし
さみだれのそら


五月雨の
晴ぬる夜はの
郭公
月とゝもにや
山をいてけん
さみだれの
はれぬるよはの
ほととぎす
つきとともにや
やまをいてけん


五月雨の
月のほのかに
みゆる夜は
郭公たに
さやかにをなけ
さみだれの
つきのほのかに
みゆるよは
ほととぎすたに
さやかにをなけ


かゝり火の
影しうつれは
ぬは玉の
夜かはのそこは
水ももえけり
かかりひの
かげしうつれは
ぬはたまの
よかはのそこは
みづももえけり


大井河
う舟のかゝり
ほの見えて
くたすやなみの
よるそしらるゝ
おほゐかは
うふねのかかり
ほのみえて
くたすやなみの
よるそしらるる


かつら人
月の光の
さゝぬ夜も
のほるう舟に
さほはとるらし
かつらひと
つきのひかりの
ささぬよも
のほるうふねに
さほはとるらし


くれの雨に
河瀬の水や
まさるらん
はやくそくたる
かゝり火のかけ
くれのあめに
かはせのみづや
まさるらん
はやくそくたる
かかりひのかけ


夕やみの
鵜川のかゝり
くたし過て
あらぬ蛍そ
又もえてゆく
ゆふやみの
うかはのかかり
くたしすぎて
あらぬほたるそ
またもえてゆく


出て後
また程もへぬ
半天に
影しらみぬる
みしか夜の月
いでてのち
またほどもへぬ
なかそらに
かげしらみぬる
みしかよのつき


さえたもる
影そ程なき
呉竹の
夜わたる月の
明やすき比
さえたもる
かげそほどなき
くれたけの
よわたるつきの
あけやすきころ


よにかくる
すたれに風は
吹いれて
庭しろくなる
月そすゝしき
よにかくる
すたれにかぜは
ふきいれて
にはしろくなる
つきそすすしき


庭のうへの
水音近き
うたゝねに
枕すゝしき
月をみるかな
にはのうへの
みづおとちかき
うたたねに
まくらすすしき
つきをみるかな


かたふかて
月の明行
みしか夜は
入かたおしむ
山のはもなし
かたふかて
つきのあけゆく
みしかよは
いりかたおしむ
やまのはもなし


月影も
夏の夜わたる
泉川
河風涼し
水のしら波
つきかげも
なつのよわたる
いづみかは
かはかぜすずし
みづのしらなみ


夏の夜は
しつまる宿の
稀にして
さゝぬ戸口に
月そくまなき
なつのよは
しつまるやどの
まれにして
ささぬとくちに
つきそくまなき


また宵も
思へはしらむ
横雲に
やかてまきるゝ
短夜の月
またよひも
おもへはしらむ
よこぐもに
やかてまきるる
みぢかよのつき


くるゝより
なかむるたにも
程なきに
夕暗おしき
短夜の月
くるるより
なかむるたにも
ほどなきに
ゆふやみおしき
みぢかよのつき


月影の
かすむもつらし
よそまては
煙なたてそ
夜はのかやり火
つきかげの
かすむもつらし
よそまては
けぶりなたてそ
よはのかやりひ


やみよりも
すくなき夜はの
蛍かな
をのか光を
月にけたれて
やみよりも
すくなきよはの
ほたるかな
をのかひかりを
つきにけたれて


かきくらす
五月のさ夜の
雨雲に
かくれぬほしは
蛍なりけり
かきくらす
さつきのさよの
あめくもに
かくれぬほしは
ほたるなりけり


このまより
みゆるは谷の
蛍かも
いさりにあまの
海へ行かも
このまより
みゆるはたにの
ほたるかも
いさりにあまの
うみへゆくかも


草深き
窓の蛍は
影きえて
あくる色ある
野への白露
くさふかき
まどのほたるは
かげきえて
あくるいろある
のへのしらつゆ


軒白き
月の光に
山かけの
やみをしたひて
ゆく蛍かな
のきしらき
つきのひかりに
やまかけの
やみをしたひて
ゆくほたるかな


山陰や
くらき岩間の
忘水
たえ〳〵見えて
とふほたるかな
やまかげや
くらきいはまの
わすれみづ
たえだえみえて
とぶほたるかな


松風も
すゝしき程に
ふきかへて
さ夜更にけり
谷川の音
まつかぜも
すすしきほどに
ふきかへて
さよふけにけり
たにかはのおと


さ夜更て
岩もる水の
音きけは
涼しくなりぬ
うたゝねの床
さよふけて
いはもるみづの
おときけは
すずしくなりぬ
うたたねのとこ


月の色も
秋ちかしとや
さ夜更て
まかきの荻の
おとろかすらん
つきのいろも
あきちかしとや
さよふて
まかきのをぎの
おとろかすらん


露しけき
袖をはかさし
七夕の
涙ほすまの
秋の一夜に
つゆしけき
そでをはかさし
たなばたの
なみだほすまの
あきのひとよに


稀にあふ
秋のなぬかの
くれはとり
あやなくやかて
明ぬ此夜は
まれにあふ
あきのなぬかの
くれはとり
あやなくやかて
あかぬこのよは


いほむすふ
わさ田のなるこ
引かへて
夜寒になりぬ
露の衣手
いほむすふ
わさだのなるこ
ひきかへて
よさむになりぬ
つゆのころもで


なかき夜を
いかにあかして
女郎花
暁おきの
露けかるらん
なかきよを
いかにあかして
をみなへし
あかつきおきの
つゆけかるらん


松風は
いかてしるらん
秋の夜の
寝覚せらるゝ
おりにしも吹
まつかぜは
いかてしるらん
あきのよの
ねざめせらるる
おりにしもふく


秋はきぬ
鹿は尾上に
声たてつ
夜半のね覚を
問人はなし
あきはきぬ
しかはおのえに
こゑたてつ
よはのねさめを
とふひとはなし


宿近く
妻とふ鹿の
声のみそ
秋のねさめの
友と成ける
やどちかく
つまとふしかの
こゑのみそ
あきのねさめの
ともとなりける


鹿のねも
おのへの鐘も
たゆむなり
涙はつきぬ
秋のね覚に
しかのねも
おのへのかねも
たゆむなり
なみだはつきぬ
あきのねさめに


矢田の野や
夜寒の露の
をくなへに
浅茅色つき
をしか鳴也
やたののや
よさむのつゆの
をくなへに
あさぢいろつき
をしかなくなり


ふけまさる
人まつ風の
くらき夜に
山陰つらき
さをしかのこゑ
ふけまさる
ひとまつかぜの
くらきよに
やまかげつらき
さをしかのこゑ


棹鹿の
声きく時の
秋山に
またすみのほる
夜はの月影
さほしかの
こゑきくときの
あきやまに
またすみのほる
よはのつきかげ


秋の夜の
衣かりかね
鳴からに
寝覚の床も
風そさむけき
あきのよの
ころもかりかね
なくからに
ねざめのとこも
かぜそさむけき


月すみて
風はたさむき
秋の夜の
籬の草に
虫の声〳〵
つきすみて
かぜはたさむき
あきのよの
まがきのくさに
むしのこゑごゑ


鈴虫の
声ふりたつる
秋の夜は
あはれに物の
成まさるかな
すずむしの
こゑふりたつる
あきのよは
あはれにものの
なりまさるかな


夕つく夜
心もしのに
しら露の
をくこの庭に
きり〳〵すなく
ゆふつくよ
こころもしのに
しらつゆの
をくこのにはに
きりぎりすなく


暮月夜
心毛思努尓
白露乃
置此庭尓
蟋蟀鳴毛
ゆふづくよ
こころもしのに
しらつゆの
おくこのにはに
こほろぎなくも
Ночью сегодня сияет луна,
Сердце сжимается грусти полно…
В этом саду,
Где белеет повсюду роса,
Плачет сверчок!

秋の夜を
ひとりやなきて
あかさまし
ともなふ虫の
声なかりせは
あきのよを
ひとりやなきて
あかさまし
ともなふむしの
こゑなかりせは


秋のよを
ひとりやなきて
あかさまし
ともなふむしの
声なかりせば
あきのよを
ひとりやなきて
あかさまし
ともなふむしの
こゑなかりせば


よひのまの
村雲つたひ
影見えて
山の端めくる
秋のいなつま
よひのまの
むらくもつたひ
かげみえて
やまのはめくる
あきのいなつま


和田つ海の
とよはた雲に
入日さし
こよひの月夜
すみあかくこそ
わたつうみの
とよはたくもに
いりひさし
こよひのつくよ
すみあかくこそ


もゝしきの
おほ宮人の
立出て
あそふこよひの
月のさやけさ
ももしきの
おほみやひとの
たちいでて
あそふこよひの
つきのさやけさ


百師木之
大宮人之
退出而
遊今夜之
月清左
ももしきの
おほみやひとの
まかりでて
あそぶこよひの
つきのさやけさ
Как прозрачно чиста
Этой ночью луна,
Когда сотни вельмож,
Покидая дворец,
Веселятся…
* Эту песню сочинил один из придворных вельмож во время цукими — любования луной (СН, МС и др.), что, как и ханами— любование цветами, было распространенным обычаем в те времена и в известной мере сохранилось до настоящего времени. Возможно, весь цикл песен о луне был сложен во время цукими на поэтическом турнире придворных.
くるゝまの
籬の竹を
ふく風の
なひくにいつる
秋の夜の月
くるるまの
まがきのたけを
ふくかぜの
なひくにいつる
あきのよのつき


秋の夜の
なかき程をや
頼らん
出ていそかぬ
山の端の月
あきのよの
なかきほどをや
たのむらん
いでていそかぬ
やまのはのつき


澄のほる
たかねの月は
空晴て
山本白き
夜半の秋霧
すみのほる
たかねのつきは
そらはれて
やまもとしろき
よはのあききり


初瀬山
ひはらか嵐
鐘の声
夜ふかき月に
すましてそきく
はつせやま
ひはらかあらし
かねのこゑ
よふかきつきに
すましてそきく


やとるへき
露をはのこせ
よひのまの
月待程の
野への秋風
やとるへき
つゆをはのこせ
よひのまの
つきまつほどの
のへのあきかぜ


露をみかく
浅茅か月は
しつかにて
虫の声のみ
さ夜ふかき宿
つゆをみかく
あさぢかつきは
しつかにて
むしのこゑのみ
さよふかきやど


こよひこそ
秋とおほゆれ
月影に
蛬なきて
風そ身にしむ
こよひこそ
あきとおほゆれ
つきかげに
きりきりすなきて
かぜそみにしむ


にほの海や
秋の夜わたる
あまを舟
月にのりてや
浦つたふらん
にほのうみや
あきのよわたる
あまをふね
つきにのりてや
うらつたふらん


さゝ波や
うら風ふけて
秋の夜の
なからの山に
月そかたふく
ささなみや
うらかぜふけて
あきのよの
なからのやまに
つきそかたふく


こき出る
すまの夜舟の
遠近は
さなから月の
影のしら波
こきいづる
すまのよふねの
をちこちは
さなからつきの
かげのしらなみ


礒の上
ふるの高橋
代々かけて
月もいく夜か
すみわたるらん
いそのかみ
ふるのたかはし
よよかけて
つきもいくよか
すみわたるらん


風のをとも
身にしむ夜はの
秋の月
更て光そ
猶まさりゆく
かぜのをとも
みにしむよはの
あきのつき
ふけてひかりそ
なほまさりゆく


天つ風
雲吹はらふ
つねよりも
さやけさまさる
秋のよの月
あまつかぜ
くもふきはらふ
つねよりも
さやけさまさる
あきのよのつき


あまくもの
たなひけりとも
見えぬよは
ゆくつきかけそ
のとけかりける
あまくもの
たなひけりとも
みえぬよは
ゆくつきかけそ
のとけかりける


雨雲の
たなひけりとも
みえぬ夜は
ゆく月影そ
のとけかりける
あめくもの
たなひけりとも
みえぬよは
ゆくつきかげそ
のとけかりける


あくかるゝ
心は空に
さそはれて
ぬる夜すくなき
秋のよの月
あくかるる
こころはそらに
さそはれて
ぬるよすくなき
あきのよのつき


なかめわひ
あくかれたちぬ
我心
秋にかなしき
月のよな〳〵
なかめわひ
あくかれたちぬ
わがこころ
あきにかなしき
つきのよなよな


なかめても
誰をかまたん
月夜よし
夜よしとつけん
人しなけれは
なかめても
たれをかまたん
つきよよし
よよしとつけん
ひとしなけれは


いかなりし
人のなさけか
思ひ出る
こしかたかたれ
秋のよの月
いかなりし
ひとのなさけか
おもひいづる
こしかたかたれ
あきのよのつき


秋の夜も
わかよもいたく
更ぬれは
かたふく月を
よそにやはみる
あきのよも
わかよもいたく
ふけぬれは
かたふくつきを
よそにやはみる


秋の夜の
空すみわたる
月みれは
行ともなくて
かたふきにけり
あきのよの
そらすみわたる
つきみれは
ゆくともなくて
かたふきにけり


さ夜更て
衣うつなり
我ならて
またねぬ人は
あらしと思に
さよふけて
ころもうつなり
われならて
またねぬひとは
あらしとおもひに


更ゆけは
所々に
きこえつる
きぬたのをとそ
まれに成行
ふけゆけは
ところところに
きこえつる
きぬたのをとそ
まれになれゆく


秋風は
更にけらしな
里とをき
きぬたのをとの
すみまさりゆく
あきかぜは
ふけにけらしな
さととをき
きぬたのをとの
すみまさりゆく


夕霧に
道はまとひぬ
衣うつ
をとにつきてや
ゝとをからまし
ゆふぎりに
みちはまとひぬ
ころもうつ
をとにつきてや
やとをからまし


更ぬるか
此里人は
をともせて
遠山本に
ころもうつなり
ふけぬるか
このさとひとは
をともせて
とほやまもとに
ころもうつなり


久方の
月も夜さむに
成まゝに
秋は更ぬと
衣うつなり
ひさかたの
つきもよさむに
なるままに
あきはふけぬと
ころもうつなり


暮かたの
秋さり衣
ぬきをうすみ
たえぬ夜さむに
今そうつなる
くれかたの
あきさりころも
ぬきをうすみ
たえぬよさむに
いまそうつなる


衣うつ
しつかふせやの
板間あらみ
きぬたの上に
月もりにけり
ころもうつ
しつかふせやの
いたまあらみ
きぬたのうへに
つきもりにけり


秋ふくる
浅茅か庭の
きり〳〵す
夜やさむからし
声よはり行
あきふくる
あさぢかにはの
きりぎりす
よやさむからし
こゑよはりゆく


長夜の
ねさめの窓に
をとつるゝ
時雨は老の
友にそ有ける
ながきよの
ねさめのまどに
をとつるる
しぐれはおいの
ともにそあける


村雲の
すきのいほりの
あれまより
時雨にかはる
夜はの月影
むらくもの
すきのいほりの
あれまより
しぐれにかはる
よはのつきかげ


紅葉ちる
夜はのねさめの
山里は
時雨のをとも
わきそかねつる
もみぢちる
よはのねさめの
やまざとは
しぐれのをとも
わきそかねつる


紅葉はを
おとす時雨の
ふるなへに
夜さへそさむき
ひとりしぬれは
もみぢはを
おとすしぐれの
ふるなへに
よさへそさむき
ひとりしぬれは


すみのほる
空にはくもる
影もなし
木かけしくるゝ
冬の夜の月
すみのほる
そらにはくもる
かげもなし
きかけしくるる
ふゆのよのつき


をのれたに
ことゝひこなん
さ夜千鳥
須磨のうきねに
物や思ふと
をのれたに
こととひこなん
さよちとり
すまのうきねに
ものやおもふと


奥つ塩
さしての礒の
浜千鳥
風さむからし
夜半に友よふ
おくつしほ
さしてのいその
はまちとり
かぜさむからし
よはにともよふ


月きよみ
さ夜更ゆけは
い勢島や
いちしの浦に
千鳥なく也
つききよみ
さよふけゆけは
いせしまや
いちしのうらに
ちとりなくなり


梓弓
いちしの浦の
春の月
海士のたくなは
よるも引くなり
あづさゆみ
いちしのうらの
はるのつき
あまのたくなは
よるもひくなり


さほ川に
あそふ千鳥の
さ夜更て
その声きけは
いねられなくに
さほかはに
あそふちとりの
さよふけて
そのこゑきけは
いねられなくに


河千鳥
月夜をさむみ
いねすあれや
ねさむることに
声の聞ゆる
かはちとり
つきよをさむみ
いねすあれや
ねさむることに
こゑのきこゆる


冬の夜は
塩風さむみ
かみしまの
いそまの浦に
千鳥なくなり
ふゆのよは
しほかぜさむみ
かみしまの
いそまのうらに
ちとりなくなり


夜舟こく
せとの塩あひに
月さえて
をしまか礒に
千鳥しはなく
よふねこく
せとのしほあひに
つきさえて
をしまかいそに
ちとりしはなく


風さむき
吹井の浦の
さ夜千鳥
遠き塩干の
瀉に鳴なり
かぜさむき
ふけゐのうらの
さよちとり
とほきしほひの
はまになくなり


さゆる夜の
池の玉もの
みかくれて
氷にすける
波の下草
さゆるよの
いけのたまもの
みかくれて
こほりにすける
なみのしたくさ


しくれつる
外山の里の
さゆる夜は
吉野のたけに
初雪やふる
しくれつる
とやまのさとの
さゆるよは
よしののたけに
はつゆきやふる


夜もすから
里はしくれて
横雲の
わかるゝ嶺に
みゆるしら雪
よもすから
さとはしくれて
よこぐもの
わかるるみねに
みゆるしらゆき


今朝みれは
遠山しろし
都まて
風のをくらぬ
夜半の初雪
けさみれは
とほやましろし
みやこまて
かぜのをくらぬ
よはのはつゆき


夜半の嵐
はらひかねけり
今朝みれは
雪のうつまぬ
松杉もなし
よはのあらし
はらひかねけり
けさみれは
ゆきのうつまぬ
まつすぎもなし


ほしきよき
夜半のうす雪
空晴て
吹とをす風を
梢にそきく
ほしきよき
よはのうすゆき
そらはれて
ふきとをすかぜを
こずゑにそきく


焼すさふ
霜夜の庭火
影ふけて
雲ゐにすめる
朝倉のこゑ
やきすさふ
しもよのにはひ
かげふけて
くもゐにすめる
あさくらのこゑ


忘れめや
庭火に月の
影そへて
雲ゐに聞し
朝倉の声
わすれめや
にはひにつきの
かげそへて
くもゐにききし
あさくらのこゑ


むは玉の
この夜なあけそ
しは〳〵も
またふる年の
うちそと思はん
むはたまの
このよなあけそ
しはしはも
またふるとしの
うちそとおもはん


七夕の
雲の衣は
たゝ一夜
かさねてうとく
なる月日かな
たなばたの
くものころもは
たたひとよ
かさねてうとく
なるつきひかな

*3たゝ一重イ
秋の月
影のとかにも
みゆるかな
こやなかきよの
ためしなるらん
あきのつき
かげのとかにも
みゆるかな
こやなかきよの
ためしなるらん


のとかなる
世をみや川の
清きせに
すむもかひある
秋の夜の月
のとかなる
よをみやかはの
きよきせに
すむもかひある
あきのよのつき


足引の
山松かねを
まくらにて
さぬるこよひは
家し忍はる
あしびきの
やままつかねを
まくらにて
さぬるこよひは
いへししのはる


夜半の月
われのみをくる
山路そと
なれし都の
ともにつけこせ
よはのつき
われのみをくる
やまぢそと
なれしみやこの
ともにつけこせ


逢坂や
いそく関路も
夜やふかき
袖さへしめる
杉の下露
あふさかや
いそくせきぢも
よやふかき
そでさへしめる
すぎのしたつゆ


こえやせん
夜はふかくとも
逢坂の
鳥のねまたは
月もこそいれ
こえやせん
よはふかくとも
あふさかの
とりのねまたは
つきもこそいれ


旅ねして
物思ふ程に
秋の夜の
有明の月も
出にけるかな
たびねして
ものおもふほどに
あきのよの
ありあけのつきも
いでにけるかな


とまるへき
宿をは月に
あくかれて
あすの道ゆく
夜はの旅人
とまるへき
やどをはつきに
あくかれて
あすのみちゆく
よはのたびひと


かりねする
夜のまの露に
そほちつゝ
独朝たつ
のちのさゝ原
かりねする
よのまのつゆに
そほちつつ
ひとりあさたつ
のちのささはら


旅人の
わくる野原の
露おちて
やとりもあへぬ
秋のよの月
たびひとの
わくるのはらの
つゆおちて
やとりもあへぬ
あきのよのつき


まどろまじ
今宵ならでは
いつか見む
くろとの浜の
あきの夜の月
まどろまじ
こよひならでは
いつかみむ
くろとのはまの
あきのよのつき
Как можно спать?
Ведь если не теперь,
Когда ещё увидеть доведётся
На взморье Курото
Луну осенней ночи?

まとろまし
こよひならては
いつかみん
くろとの浜の
秋の夜の月
まとろまし
こよひならては
いつかみん
くろとのはまの
あきのよのつき


朝あけの
山分衣
ぬれてけり
ふかき夜たちの
露のしめりに
あさあけの
やまわけころも
ぬれてけり
ふかきよたちの
つゆのしめりに


むすひをく
宿こそかはれ
草枕
かりねはおなし
よな〳〵の露
むすひをく
やどこそかはれ
くさまくら
かりねはおなし
よなよなのつゆ


草枕
苔のむしろに
かたしきて
都恋しみ
あかす夜半かな
くさまくら
こけのむしろに
かたしきて
みやここひしみ
あかすよはかな


かりそめと
思ふ旅ねの
さゝの庵も
夜やなかゝらん
露のをきそふ
かりそめと
おもふたびねの
ささのいほも
よやなかからん
つゆのをきそふ


故郷に
さらはふきこせ
嶺の嵐
かりねの夜はの
夢は覚ぬと
ふるさとに
さらはふきこせ
みねのあらし
かりねのよはの
ゆめはさめぬと


草枕
あまり夜ふかく
立にけり
鳥のはつねも
今そ鳴なる
くさまくら
あまりよふかく
たちにけり
とりのはつねも
いまそなくなる


夜をこめて
いそきつれとも
松かねに
枕をしても
あかしつるかな
よをこめて
いそきつれとも
まつかねに
まくらをしても
あかしつるかな


尋ねても
おなしとまりの
うきねせん
波路へたつな
夜はの友舟
たづねても
おなしとまりの
うきねせん
なみぢへたつな
よはのともふね


夜をこめて
また漕出る
人もあれや
あまた声する
よその友舟
よをこめて
またこぎいづる
ひともあれや
あまたこゑする
よそのともふね


夜るとても
心のまゝに
ねはなかし
枕ならふる
人もこそしれ
よるとても
こころのままに
ねはなかし
まくらならふる
ひともこそしれ


阿武隈の
霧とはなしに
終夜
立ち渡りつゝ
よをもふるかな
あふくまの
きりとはなしに
よもすから
たちわたりつつ
よをもふるかな


なかむらん
人の心も
しらなくに
月をあはれと
思ふ夜はかな
なかむらん
ひとのこころも
しらなくに
つきをあはれと
おもふよはかな


おしますよ
一夜はかりの
逢ことに
かへん命は
さすかなれとも
おしますよ
ひとよはかりの
あふことに
かへんいのちは
さすかなれとも


人もつゝみ
我もかさねて
とひかたみ
たのめし夜はゝ
たゝ更そゆく
ひともつつみ
われもかさねて
とひかたみ
たのめしよはは
たたふけそゆく


こよひとへや
後のいく夜は
いくたひも
よし偽に
ならはなるとも
こよひとへや
のちのいくよは
いくたひも
よしいつはりに
ならはなるとも


憑めをきし
こよひはかりも
せめてまつ
かはるなかはる
心なりとも
たのめをきし
こよひはかりも
せめてまつ
かはるなかはる
こころなりとも


侘つゝは
いつはりにたに
たのめよと
思ひしことを
こよひこりぬる
わびつつは
いつはりにたに
たのめよと
おもひしことを
こよひこりぬる


頼めねは
人やはうきと
思ひなせと
こよひもつゐに
又明にけり
たのめねは
ひとやはうきと
おもひなせと
こよひもつゐに
またあけにけり


月そうき
かたふく影を
なかめすは
待夜の更る
空もしられし
つきそうき
かたふくかげを
なかめすは
まつよのふける
そらもしられし


たのめしを
待夜の雨の
明かたに
をやむしもこそ
つらくきこゆれ
たのめしを
まつよのあめの
あけかたに
をやむしもこそ
つらくきこゆれ


夜のうちは
まつにも露は
かゝりけり
あくれはきゆる
物をこそ思へ
よのうちは
まつにもつゆは
かかりけり
あくれはきゆる
ものをこそおもへ


おほつかな
こよひはたれと
契りてか
あけなん暮を
まてといふらん
おほつかな
こよひはたれと
ちぎりてか
あけなんくれを
まてといふらん


とをつまと
枕かはして
ねたる夜は
鳥の音なくな
あけはあくとも
とをつまと
まくらかはして
ねたるよは
とりのねなくな
あけはあくとも


雨もよに
ふりはへとはん
人もなし
なきにをとりて
いける身そうき
あめもよに
ふりはへとはん
ひともなし
なきにをとりて
いけるみそうき


夜るの雨の
をとにたくへる
君なれや
ふりしまされは
我こひまさる
よるのあめの
をとにたくへる
きみなれや
ふりしまされは
わがこひまさる


頼めても
人の契りは
むなしきに
こととふ月そ
袖に夜かれぬ
たのめても
ひとのちぎりは
むなしきに
こととふつきそ
そでによかれぬ


哀にも
めくりあふ夜の
月影を
思ひいれすや
人は見るらん
あはれにも
めくりあふよの
つきかげを
おもひいれすや
ひとはみるらん


うくつらき
人の面影
わかなみた
ともにそうかふ
月の夜すから
うくつらき
ひとのおもかげ
わかなみた
ともにそうかふ
つきのよすから


こひうれへ
ひとりなかむる
夜はの月
かはれやおなし
影もうらめし
こひうれへ
ひとりなかむる
よはのつき
かはれやおなし
かげもうらめし


夜もすから
恋なく袖に
月はあれと
見し面影は
かよひしもこす
よもすから
こひなくそでに
つきはあれと
みしおもかげは
かよひしもこす


いむといへは
忍ふ物から
夜もすから
天の河こそ
うらやまれつれ
いむといへは
しのふものから
よもすから
あまのかはこそ
うらやまれつれ


物思ふ
身はならはしの
長き夜に
つれなき人よ
ねさめたにせし
ものおもふ
みはならはしの
ながきよに
つれなきひとよ
ねさめたにせし


なきこふる
袖にはいかゝ
やとすへき
くもりならはぬ
秋の夜の月
なきこふる
そでにはいかか
やとすへき
くもりならはぬ
あきのよのつき


霰ふり
ならの落葉に
風吹て
物恋しらに
さ夜そ更行
あられふり
ならのおちばに
かぜふきて
ものこひしらに
さよそふけゆく


憂身には
いつともわかぬ
涙にて
霞をたとる
春の夜の月
うきみには
いつともわかぬ
なみだにて
かすみをたとる
はるのよのつき


我ための
なさけとそ聞
郭公
待あかす夜の
明ほのゝ声
わがための
なさけとそきく
ほととぎす
まちあかすよの
あけほののこゑ


行さきの
道もおほえぬ
五月やみ
くらゐの山に
身はまよひつゝ
ゆきさきの
みちもおほえぬ
さつきやみ
くらゐのやまに
みはまよひつつ


明ぬるか
鵜舟のかゝり
たき捨て
煙もしらむ
みしか夜の空
あかぬるか
うふねのかかり
たきすてて
けぶりもしらむ
みしかよのそら


夜をかけて
遠方めくる
夕立に
こなたの空は
月そ涼しき
よをかけて
とほかためくる
ゆふだちに
こなたのそらは
つきそすずしき


常よりも
みる程久し
夏の夜の
月には人を
まつへかりけり
つねよりも
みるほどひさし
なつのよの
つきにはひとを
まつへかりけり


さやけさは
たかすむ宿も
かはらしと
月にむかひて
思ひこそやれ
さやけさは
たかすむやども
かはらしと
つきにむかひて
おもひこそやれ


心とめて
誰かまことに
なかむると
こよひの空の
月にとはゝや
こころとめて
たれかまことに
なかむると
こよひのそらの
つきにとははや


久方の
月はむかしの
鏡なれや
むかへはうかふ
世々の面かけ
ひさかたの
つきはむかしの
かがみなれや
むかへはうかふ
よよのおもかけ


いつとても
おなし空ゆく
月のなと
春はおほろに
秋はさやけき
いつとても
おなしそらゆく
つきのなと
はるはおほろに
あきはさやけき


いくほとゝ
思へはかなし
老の身の
袖になれぬる
秋の夜の月
いくほとと
おもへはかなし
おいのみの
そでになれぬる
あきのよのつき


われのみそ
もとの身にして
恋忍ふ
みし面かけは
あらぬよの月
われのみそ
もとのみにして
こひしのふ
みしおもかけは
あらぬよのつき


思ふ事
なくてたにねぬ
月の夜を
ましていかにと
とふ人もかな
おもふこと
なくてたにねぬ
つきのよを
ましていかにと
とふひともかな


しらさりき
憂身なからに
めくりきて
おなし雲ゐの
月をみんとは
しらさりき
うきみなからに
めくりきて
おなしくもゐの
つきをみんとは


月はいま
遠き波路に
かたふきて
礒山かくれ
夜舟こくなり
つきはいま
とほきなみぢに
かたふきて
いそやまかくれ
よふねこくなり


月を猶
身のうきことの
なくさめと
みし夜の秋も
昔なりけり
つきをなほ
みのうきことの
なくさめと
みしよのあきも
むかしなりけり


長き夜の
友とそ頼む
きり〳〵す
我もつゐには
蓬生のもと
ながきよの
ともとそたのむ
きりきりす
われもつゐには
よもぎうのもと


むしのこと
声たてぬへき
世中に
思ひむせひて
過る比かな
むしのこと
こゑたてぬへき
よのなかに
おもひむせひて
すぐるころかな


なかき夜に
猶あまりある
思ひとや
明てもしはし
虫の鳴らん
なかきよに
なほあまりある
おもひとや
ありてもしはし
むしのなくらん


秋ふかく
なりゆくすまの
浦風に
関もる人や
夜さむなるらん
あきふかく
なりゆくすまの
うらかぜに
せきもるひとや
よさむなるらん


風さやく
さ夜のねさめの
さひしきは
はたれ霜ふり
つるさはになく
かぜさやく
さよのねさめの
さひしきは
はたれしもふり
つるさはになく


冬の夜は
鐘よりさきの
久しくて
暁またぬ
ね覚をそする
ふゆのよは
かねよりさきの
ひさしくて
あかつきまたぬ
ねさめをそする


山陰や
友を尋し
跡ふりて
たゝいにしへの
雪の夜の月
やまかげや
ともをたづねし
あとふりて
たたいにしへの
ゆきのよのつき


天つ風
乙女の袖も
さゆる夜は
思ひ出ても
ねられさりけり
あまつかぜ
をとめのそでも
さゆるよは
おもひいでても
ねられさりけり


なこの海に
妻よひかはし
鳴田鶴の
声うらかなし
さ夜や更ぬる
なこのうみに
つまよひかはし
なくたづの
こゑうらかなし
さよやふけぬる

*1なこの江にイ
さ夜ふかき
軒はの峰に
月は入て
くらきひはらに
嵐をそきく
さよふかき
のきはのみねに
つきはいりて
くらきひはらに
あらしをそきく


長き夜も
はや明かたや
ちかゝらし
ねさめの窓に
月そめくれる
ながきよも
はやあけかたや
ちかからし
ねさめのまどに
つきそめくれる


庭のかけは
また夜ふかしと
みる程に
月にしられて
夜はしらみけり
にはのかけは
またよふかしと
みるほどに
つきにしられて
よはしらみけり


まとろまて
さなからあかす
夜はも有を
ね覚となれは
なとか悲しき
まとろまて
さなからあかす
よはもあるを
ねさめとなれは
なとかかなしき


見る人に
いかにせよとか
月影の
またよひのまに
高く成ゆく
みるひとに
いかにせよとか
つきかげの
またよひのまに
たかくなりゆく


月をこそ
なかめなれしか
星の夜の
ふかきあはれを
こよひしりぬる
つきをこそ
なかめなれしか
ほしのよの
ふかきあはれを
こよひしりぬる


くらき夜の
山松風は
さはけとも
梢の空に
星そのとけき
くらきよの
やままつかぜは
さはけとも
こずゑのそらに
ほしそのとけき


更ぬるか
過行宿も
しつまりて
月の夜道に
あふ人もなし
ふけぬるか
すきゆくやども
しつまりて
つきのよみちに
あふひともなし


ともし火の
光さひしき
閨のうちに
さ夜も更ぬる
程そしらるゝ
ともしひの
ひかりさひしき
ねやのうちに
さよもふけぬる
ほどそしらるる


きゆるかと
みえつる夜半の
ともし火の
またねさめても
おなし影哉
きゆるかと
みえつるよはの
ともしひの
またねさめても
おなしかげかな


つく〳〵と
明行窓の
ともしひの
ありやとはかり
とふ人もなし
つくつくと
あけゆくまどの
ともしひの
ありやとはかり
とふひともなし


消やらて
残る影こそ
あはれなれ
我世更そふ
窓のともし火
きえやらて
のこるかげこそ
あはれなれ
わがよふけそふ
まどのともしひ


雨のをとの
聞ゆる窓は
さ夜更て
ぬれぬにしめる
ともし火のかけ
あめのをとの
きこゆるまどは
さよふけて
ぬれぬにしめる
ともしひのかけ


ふりしめる
あま夜のねやは
しつかにて
ほのほみしかき
灯の末
ふりしめる
あまよのねやは
しつかにて
ほのほみしかき
ともしびのすゑ


明しかね
窓くらき夜の
雨のをとに
ねさめの心
いくしほれしつ
あかしかね
まどくらきよの
あめのをとに
ねさめのこころ
いくしほれしつ


入かたの
月はすくなき
柴の戸に
明ぬ夜ふかき
嵐をそきく
いりかたの
つきはすくなき
しばのとに
あかぬよふかき
あらしをそきく


足引の
山田のひたの
をと高み
心にもあらぬ
ねさめをそする
あしびきの
やまだのひたの
をとたかみ
こころにもあらぬ
ねさめをそする


花の色に
ひかりさしそふ
はるの夜そ
このまの月は
みるへかりける
はなのいろに
ひかりさしそふ
はるのよそ
このまのつきは
みるへかりける


道かはる
みゆきかなしき
こよひかな
限りのたひと
見るにつけても
みちかはる
みゆきかなしき
こよひかな
かぎりのたひと
みるにつけても


みちかはる
みゆきかなしき
こよひかな
かぎりのたびと
見るにつけても
みちかはる
みゆきかなしき
こよひかな
かぎりのたびと
みるにつけても


年へても
さめすかなしき
夏の夜の
夢に夢そふ
秋の露けさ
としへても
さめすかなしき
なつのよの
ゆめにゆめそふ
あきのつゆけさ


さやかなる
月ともいさや
見えわかす
たゝかきくらき
心ちのみして
さやかなる
つきともいさや
みえわかす
たたかきくらき
ここちのみして


影たにも
とまらさりけり
雲の上を
玉のうてなと
誰かいひけん
かげたにも
とまらさりけり
くものうへを
たまのうてなと
たれかいひけん


寝覚して
思ひそいつる
ほとゝきす
雲ゐにきゝし
さ夜の一こゑ
ねざめして
おもひそいつる
ほとときす
くもゐにききし
さよのひとこゑ


うれしのや
うき世の中の
なくさめや
春のさくらに
秋の月影
うれしのや
うきよのなかの
なくさめや
はるのさくらに
あきのつきかげ


なか〳〵に
よはひたけてそ
色まさる
月と花とに
そめし心は
なかなかに
よはひたけてそ
いろまさる
つきとはなとに
そめしこころは


和歌の浦に
道ふみまよふ
よるの鶴
このなさけにそ
ねはなかれける
わかのうらに
みちふみまよふ
よるのつる
このなさけにそ
ねはなかれける


わかの浦の
友をはなれて
さ夜千鳥
その数ならぬ
ねこそなかるれ
わかのうらの
ともをはなれて
さよちとり
そのかずならぬ
ねこそなかるれ


弓はりの
月みるよひは
程もなく
入山のはそ
わひしかりける
ゆみはりの
つきみるよひは
ほどもなく
いるやまのはそ
わひしかりける


こしかたを
一夜のほとゝ
見る夢は
さめてそ遠き
むかしなりける
こしかたを
ひとよのほとと
みるゆめは
さめてそとほき
むかしなりける


弥陀頼む
人は雨夜の
月なれや
雲晴ねとも
西にこそゆけ
みだたのむ
ひとはあめよの
つきなれや
くもはれねとも
にしにこそゆけ


法の月
久しくもがなと
思へ共
さ夜更けにけり
光かくしつ
のりのつき
ひさしくもがなと
おもへとも
さよふけにけり
ひかりかくしつ


晴る夜の
雲ゐの星の
かす〳〵に
きよき光を
ならへてそみる
はるるよの
くもゐのほしの
かすかすに
きよきひかりを
ならへてそみる


草枕
たゝかりそめに
まよひ出て
哀いく夜の
たひねしつらん
くさまくら
たたかりそめに
まよひいでて
あはれいくよの
たひねしつらん


いにしへの
春のなかはを
思ひ出て
心にくもる
夜半の月影
いにしへの
はるのなかはを
おもひいでて
こころにくもる
よはのつきかげ


つたへきて
のこる光そ
あはれなる
春の煙に
消し夜の月
つたへきて
のこるひかりそ
あはれなる
はるのけぶりに
きえしよのつき


法の声に
きゝそわかれぬ
なかき夜の
ねふりをさます
あかつきの鐘
のりのこゑに
ききそわかれぬ
なかきよの
ねふりをさます
あかつきのかね


人はみな
をくりむかふと
いそく夜を
しめのうちにて
あかしつる哉
ひとはみな
をくりむかふと
いそくよを
しめのうちにて
あかしつるかな


君はさは
雨夜の月か
雲ゐより
人にしられて
山に入ぬる
きみはさは
あめよのつきか
くもゐより
ひとにしられて
やまにいりぬる


秋風に
妻まつ山の
夜をさむみ
さこそおのへの
鹿は鳴らめ
あきかぜに
つままつやまの
よをさむみ
さこそおのへの
しかはなくらめ


たれかゝに
思ひうつると
忘るなよ
夜な〳〵なれし
枕はかりは
たれかかに
おもひうつると
わするなよ
よなよななれし
まくらはかりは


くもりなき
空のかゝみと
みるまてに
秋の夜長く
照す月かけ
くもりなき
そらのかかみと
みるまてに
あきのよながく
てらすつきかけ


初瀬山
弓槻かしたも
あらはれて
今宵の月の
名こそかくれね
はつせやま
ゆつきかしたも
あらはれて
こよひのつきの
なこそかくれね


ますかゝみ
みぬめの浦は
名のみして
おなし影なる
秋のよの月
ますかかみ
みぬめのうらは
なのみして
おなしかげなる
あきのよのつき

Видя эту ровную, как гладь зеркала бухты Минумэ, понимаю, что зря она называется так, ведь на ней отражается луна точно такая же, как и на небе
里のあまの
浪かけ衣
よるさへや
月にも秋は
もしほたるらん
さとのあまの
なみかけころも
よるさへや
つきにもあきは
もしほたるらん


玉ひろふ
由良の湊に
照月の
光をそへて
よする白波
たまひろふ
ゆらのみなとに
てるつきの
ひかりをそへて
よするしらなみ


秋の田の
露しく床の
いなむしろ
月の宿とも
もるいほりかな
あきのたの
つゆしくとこの
いなむしろ
つきのやどとも
もるいほりかな


世のうきに
一かたならす
うかれ行
心さためよ
秋の夜の月
よのうきに
ひとかたならす
うかれゆく
こころさためよ
あきのよのつき


秋の夜は
山田の庵
いなつまの
ひかりのみこそ
もりあかしけれ
あきのよは
やまだのいほり
いなつまの
ひかりのみこそ
もりあかしけれ


秋の夜は
山田の庵に
電の
ひかりのみこそ
もりあかしけれ
あきのよは
やまだのいほに
かみなりの
ひかりのみこそ
もりあかしけれ
Осенней ночью
В сторожку на горном поле
Лишь молнии
Свет проникает
И освещает её...
Примерный перевод

をしねほす
山田の秋の
かり枕
ならはぬほとの
袖の露かな
をしねほす
やまだのあきの
かりまくら
ならはぬほとの
そでのつゆかな

をしね - поздний рис
夜やさむき
しつのをたまき
くり返し
いやしき閨に
衣うつなり
よやさむき
しつのをたまき
くりかへし
いやしきねやに
ころもうつなり


烏羽玉の
夜風をさむみ
故郷に
ひとりある人の
衣うつらし
むばたまの
よかぜをさむみ
ふるさとに
ひとりあるひとの
ころもうつらし


山鳥の
おのへの里の
秋風に
なかき夜さむの
衣うつ也
やまどりの
おのへのさとの
あきかぜに
なかきよさむの
ころもうつなり


夜をかさね
身にしみまさる
秋風を
恨かほにも
衣うつ哉
よをかさね
みにしみまさる
あきかぜを
うらみかほにも
ころもうつかな


よとゝもに
なたの塩やき
いとまなみ
浪のよるさへ
衣うつなり
よとともに
なたのしほやき
いとまなみ
なみのよるさへ
ころもうつなり


夜もすから
うちもたゆます
唐衣
たかため誰か
いそく成らん
よもすから
うちもたゆます
からころも
たかためたれか
いそくなるらん


風のをとに
おとろかれてや
わきも子か
ね覚の床に
衣うつらん
かぜのをとに
おとろかれてや
わきもこか
ねさめのとこに
ころもうつらん


水くきの
をかのあさちの

霜のふりはや
夜さむ成らん
みづくきの
をかのあさちの
きりきりす
しものふりはや
よさむなるらん


風さゆる
夜はの衣の
関守は
ねられぬまゝの
月やみるらん
かぜさゆる
よはのころもの
せきもりは
ねられぬままの
つきやみるらん


ひさきおふる
きよき河原の
霜の上に
かさねてさゆる
冬のよの月
ひさきおふる
きよきかはらの
しものうへに
かさねてさゆる
ふゆのよのつき


さ夜千鳥
浦つたひ行
浪の上に
かたふく月も
遠さかりつゝ
さよちとり
うらつたひゆく
なみのうへに
かたふくつきも
とほさかりつつ


空さゆる
かつらの里の
河上に
ちきりありてや
月もすむらん
そらさゆる
かつらのさとの
かはかみに
ちきりありてや
つきもすむらん


小夜千鳥
浦傳ひ行く
涙の上に
かたぶく月も
遠ざかりぬる
さよちとり
うらつたひゆく
なみのうへに
かたぶくつきも
とほざかりぬる


ゆふは河
岩もとすけの
ねにたてゝ
なかき夜あかす
鳴千鳥哉
ゆふはかは
いはもとすけの
ねにたてて
なかきよあかす
なくちとりかな


さらぬたに
ね覚かちなる
冬の夜を
ならの枯葉に
霰ふる也
さらぬたに
ねさかちなる
ふゆのよを
ならのかれはに
あられふるなり


霰ふる
しつかさゝやの
そよさらに
一夜はかりの
夢をやはみる
あられふる
しつかささやの
そよさらに
ひとよはかりの
ゆめをやはみる

賤の笹屋の
夜をさむみ
朝戸をあけて
けさみれは
庭もはたらに
雪降にけり
よをさむみ
あさとをあけて
けさみれは
にはもはたらに
ゆきふりにけり


白妙の
雪吹おろす
かさこしの
峰より出る
冬の夜の月
しろたへの
ゆきふきおろす
かさこしの
みねよりいづる
ふゆのよのつき


五十鈴川
神代の鏡
かけとめて
今も曇らぬ
秋の夜の月
いすずがは
かみよのかがみ
かけとめて
いまもくもらぬ
あきのよのつき


千はやふる
神代もおなし
影なれや
御裳川の
秋の夜の月
ちはやふる
かみよもおなし
かげなれや
みもすそかはの
あきのよのつき


いかはかり
曇なきよを
照すらん
名にあらはるゝ
月よみの杜
いかはかり
くもりなきよを
てらすらん
なにあらはるる
つきよみのもり


やはらくる
光はへたて
あらしかし
西の雲ゐの
秋の夜の月
やはらくる
ひかりはへたて
あらしかし
にしのくもゐの
あきのよのつき


いにしへは
しく人もなく
ならひきて
さゆる霜夜の
ゆかと成けん
いにしへは
しくひともなく
ならひきて
さゆるしもよの
ゆかとなるけん


行かへる
道たにしらぬ
中空に
むなしき闇そ
明る夜もなき
ゆきかへる
みちたにしらぬ
なかそらに
むなしきやみそ
あくるよもなき


さ夜千鳥
難波の芦の
かりの世に
何を恨みて
ねをは鳴らん
さよちとり
なにはのあしの
かりのよに
なにをうらみて
ねをはなくらん


故郷に
のこるはちすは
あるしにて
やとる一夜に
花そひらくる
ふるさとに
のこるはちすは
あるしにて
やとるひとよに
はなそひらくる


夕月夜
あかつきやみの
ほのかにも
見し人ゆへに
恋やわたらむ
ゆふつくよ
あかつきやみの
ほのかにも
みしひとゆへに
こひやわたらむ


長き夜の
ね覚に物を
思ふとも
しらてや人の
月をみるらん
ながきよの
ねさにものを
おもふとも
しらてやひとの
つきをみるらん


夜もすから
月にうれへて
ねをそなく
命にむかふ
物思ふとて
よもすから
つきにうれへて
ねをそなく
いのちにむかふ
ものおもふとて


なかき夜を
あかしの浦に
やく塩の
けふりは空に
立やのほらん
なかきよを
あかしのうらに
やくしほの
けふりはそらに
たちやのほらん


長き夜を
あかしの浦に
焼く塩の
けぶりは空に
立ちやのぼらぬ
ながきよを
あかしのうらに
やくしほの
けぶりはそらに
たちやのぼらぬ
В долгие ночи
От соли, что жгут
В бухте Акаси,
Дым в небе
Стоит, не поднимаясь[196].
196. Танка помещена в Сёкугосэнсю, 12. Акаси – название бухты, означает также «встречать рассвет», яку – «жечь» и «сгорать от любви».
播磨潟
恨みてのみぞ
過ぎしかど
今夜とまりぬ
をふの松原
はりまがた
うらみてのみぞ
すぎしかど
こよひとまりぬ
をふのまつはら


秋の夜を
まてとたのめし
言の葉に
今もかゝれる
露のはかなさ
あきのよを
まてとたのめし
ことのはに
いまもかかれる
つゆのはかなさ


秋の夜を
待てと頼めし
言の葉に
今もかかれる
露のはかなさ
あきのよを
まてとたのめし
ことのはに
いまもかかれる
つゆのはかなさ
До ночи осенней
Подожди, [тогда встретимся] —
Эти внушавшие надежду слова,
Подобно ныне падающей
Росе, преходящи[312] —
312. Танка помещена в Сёкугосэнвакасю, 13, приписывается правому министру Кудзё.
よひのまも
待に心や
なくさむと
今こんとたに
たのめをかなん
よひのまも
まつにこころや
なくさむと
いまこんとたに
たのめをかなん


よひのまも
まつに心や
なくさむと
いまこんとたに
たのめおかなん
よひのまも
まつにこころや
なくさむと
いまこむとたに
たのめおかなむ


君まつと
さゝてやすらふ
槙の戸に
いかて更ぬる
いさよひの月
きみまつと
ささてやすらふ
まきのとに
いかてふけぬる
いさよひのつき


今更に
待人こめや
あまの原
ふりさけみれは
夜も深にけり
いまさらに
まつひとこめや
あまのはら
ふりさけみれは
よもふけにけり


君こすは
衣手さむみ
むは玉の
こよひも又や
いねかてにせん
きみこすは
ころもでさむみ
むはたまの
こよひもまたや
いねかてにせん


うたゝねの
夢かとのみそ
なけきつる
明ぬる夜半の
程しなけれは
うたたねの
ゆめかとのみそ
なけきつる
あけぬるよはの
ほどしなけれは


いかてかは
鳥のなくらん
人しれす
思ふ心は
また夜深きに
いかてかは
とりのなくらん
ひとしれす
おもふこころは
またよふかきに


いかでかは
鳥のなくらん
人しれず
思ふ心は
まだよぶかきに
いかでかは
とりのなくらん
ひとしれず
おもふこころは
まだよぶかきに
Что это значит,
что поёшь ты, петух?
Ведь в сердце моем,
что не знает никто,
ещё тёмная ночь...

鐘のをとは
猶ふかき夜の
やすらひに
又おとろかす
鳥の音もうし
かねのをとは
なほふかきよの
やすらひに
またおとろかす
とりのねもうし


逢坂は
人のわかれの
道なれは
ゆふつけ鳥の
なかぬ夜もなし
あふさかは
ひとのわかれの
みちなれは
ゆふつけとりの
なかぬよもなし


夜さむなる
哀あり明の
月影に
いかにせんとか
おきわかるらん
よさむなる
あはれありあけの
つきかげに
いかにせんとか
おきわかるらん


秋の夜の
ちよをひとよに
なずらへて
やちよしねばや
あく時のあらん

あきのよの
ちよをひとよに
なずらへて
やちよしねばや
あくときのあらん

Если бы долгая ночь
осенью была длинна,
как тысяча долгих ночей, —
пусть восемь их будет, и всё ж
буду ли я насыщён?

秋の夜の
ちよをひとよに
なせりとも
ことばのこりて
とりやなきなん
あきのよの
ちよをひとよに
なせりとも
ことばのこりて
とりやなきなん
Пусть долгая ночь
осенью и будет длинна,
как тысяча долгих ночей, —
не останется разве, что нам говорить,
когда птички уже запоют?

いねかてに
庵もる田子の
かり枕
夜はにをくての
露そひまなき
いねかてに
いほもるたごの
かりまくら
よはにをくての
つゆそひまなき


月のため
ひるとおもふが
かひなきに
しばしくもりて
よるをしらせよ
つきのため
ひるとおもふが
かひなきに
しばしくもりて
よるをしらせよ


さ夜更る
枕の上に
声たてゝ
雲ゐの雁の
いつち行らん
さよふける
まくらのうへに
こゑたてて
くもゐのかりの
いつちゆくらん


船もがな
いざよふ波の
音はして
まだ夜は深し
うぢの網代木
ふねもがな
いざよふなみの
おとはして
まだよはふかし
うぢのあじろぎ


長月の
月も夜さむの
寢ねがてに
起き居て誰れか
衣擣つ覽
ながつきの
つきもよさむの
いねがてに
おきゐてたれか
ころもうつらん


牡鹿ふす
門田の霜の
冴ゆる夜ぞ
もる頃よりも
寢ねがてにする
をしかふす
かどたのしもの
さゆるよぞ
もるころよりも
いねがてにする


秋といへは
さらてたに猶
なかき夜を
いねすきけとや
鹿のなくらん
あきといへは
さらてたになほ
なかきよを
いねすきけとや
しかのなくらん


いねかてに
月を見よとや
秋風の
長き夜さむに
吹まさるらん
いねかてに
つきをみよとや
あきかぜの
ながきよさむに
ふきまさるらん


いもにこひ
夜さむなる身の
いねかてに
さも吹まさる
風の音かな
いもにこひ
よさむなるみの
いねかてに
さもふきまさる
かぜのおとかな


影やとす
雲のいつくは
しらねとも
みる程もなき
宵の稲妻
かげやとす
くものいつくは
しらねとも
みるほどもなき
よひのいなつま


蘆の葉に
雨降りかゝる
暗き夜の
入江の舟に
都をぞおもふ
あしのはに
あめふりかかる
くらきよの
いりえのふねに
みやこをぞおもふ


村雲の
絶間の影は
いそげども
更くるは遲き
あきの夜の月
むらくもの
たえまのかげは
いそげども
ふくるはおそき
あきのよのつき


山風に
瀧のよどみも
音立てゝ
村雨そゝぐ
夜半ぞすゞしき
やまかぜに
たきのよどみも
おとたてて
むらさめそゝぐ
よはぞすずしき


難波女に
みつとはなしに
芦のねの
よの短くて
明る侘しさ
なにはめに
みつとはなしに
あしのねの
よのみぢかくて
あくるわびしさ


あまつかぜ
氷をわたる
冬の夜の
少女の袖を
みがく月かげ
あまつかぜ
こほりをわたる
ふゆのよの
をとめのそでを
みがくつきかげ


旅の空
夜はの煙と
のぼりなば
蜑の藻汐火
たくかとやみむ
たびのそら
よはのけぶりと
のぼりなば
あまのもしほひ
たくかとやみむ
В небо странствия
Полуночное дым
Если не поднимался,
То и огонь, где рыбаки выжигают соль,
Гореть бы перестал...
Примерный перевод

春の夜の
あけのそほ舟
ほの〳〵と
いく山もとを
かすみきぬらん
はるのよの
あけのそほふね
ほのほのと
いくやまもとを
かすみきぬらん


天の川
水まさるらし
夏の夜は
流るゝ月の
よどむまもなし
あまのかは
みづまさるらし
なつのよは
ながるるつきの
よどむまもなし


月の行く
波の柵
かけとめよ
あまの河原の
みじか夜のそら
つきのゆく
なみのしがらみ
かけとめよ
あまのかはらの
みじかよのそら


あまの川
また初秋の
みしかよを
なとたなはたの
契そめ剣
あまのかは
またはつあきの
みしかよを
なとたなはたの
ちぎりそめけん


吉野山
あらしや花を
わたるらむ
木末にかをる
春の夜の月
よしのやま
あらしやはなを
わたるらむ
きすゑにかをる
はるのよのつき


春の夜の
月ばかりとや
眺めまし
散來る花の
陰なかりせば
はるのよの
つきばかりとや
ながめまし
ちりくるはなの
かげなかりせば


木の間洩る
影ともいはじ
よはの月
霞むも同じ
心づくしを
このまもる
かげともいはじ
よはのつき
かすむもおなじ
こころづくしを


さらでだに
影見え難き
夕月夜
出づる空より
まづ霞みつゝ
さらでだに
かげみえかたき
ゆふつくよ
いづるそらより
まづかすみつつ


夜と共に
霞める月の
名取河
なき名といはむ
晴間だになし
よとともに
かすめるつきの
なとりがは
なきなといはむ
はれまだになし


照りもせぬ
ならひを春の
光にて
月に霞の
晴るゝ夜ぞなき
てりもせぬ
ならひをはるの
ひかりにて
つきにかすみの
はるるよぞなき


夏の夜の
月待つ程は
郭公
我がやどばかり
過ぎがてに鳴け
なつのよの
つきまつほどは
ほととぎす
わがやどばかり
すぎがてになけ


夏の夜の
夢路に來鳴く
子規
覺めても聲は
なほのこりつゝ
なつのよの
ゆめぢにきなく
ほととぎす
さめてもこゑは
なほのこりつつ


難波潟
こやの八重ぶき
洩りかねて
芦間に宿る
夏の夜の月
なにはかた
こやのやへぶき
もりかねて
あしまにやどる
なつのよのつき


更けてこそ
置くべき霜を
宵の間に
暫し見せたる
庭の月影
ふけてこそ
おくべきしもを
よひのまに
しばしみせたる
にはのつきかげ


見る程も
なくて明行く
夏の夜の
月もや人の
老となるらむ
みるほども
なくてあけゆく
なつのよの
つきもやひとの
おいとなるらむ


待ち出づる
山の端ながら
明けにけり
月に短き
夏の夜の空
まちいづる
やまのはながら
あけにけり
つきにみぢかき
なつのよのそら


夏の夜は
照射の鹿の
めをだにも
合せぬ程に
明けぞしにける
なつのよは
ともしのしかの
めをだにも
あはせぬほどに
あけぞしにける


暮るゝより
やがて待たるゝ
心にも
習はで遅き
山の端の月
くるるより
やがてまたるる
こころにも
ならはでおそき
やまのはのつき


雲拂ふ
風のあとより
出で初めて
さはる影なき
秋の夜の月
くもはらふ
かぜのあとより
いでそめて
さはるかげなき
あきのよのつき


誘はれて
月にかゝれる
浮雲も
やがて晴れ行く
よはの秋風
さそはれて
つきにかかれる
うきくもも
やがてはれゆく
よはのあきかぜ


秋田もる
かりほの苫屋
薄からし
月に濡れたる
よはのさ莚
あきたもる
かりほのともや
うすからし
つきにぬれたる
よはのさむしろ


わさ田もる
床の秋風
吹き初めて
假寐寂しき
月を見るかな
わさだもる
とこのあきかぜ
ふきそめて
かりねさびしき
つきをみるかな


あくがるゝ
心の果よ
孰く迄
さやけきよはの
月にそふらむ
あくがるる
こころのはてよ
いづくまで
さやけきよはの
つきにそふらむ


むめかかに
おとろかれつつ
春のよの
やみこそ人は
あくからしけれ
うめかかに
おとろかれつつ
はるのよの
やみこそひとは
あくからしけれ


さ夜ふけて
風やふくらん
花のかの
にほふここちの
そらにするかな
さよふけて
かせやふくらむ
はなのかの
にほふここちの
そらにするかな


春のよは
ふきまふ風の
うつり香を
木ことにむめと
おもひけるかな
はるのよは
ふきまふかせの
うつりかを
きことにうめと
おもひけるかな


ほとゝきす
待につけてそ
夏の夜を
ねぬに明ぬと
思ひ知ぬる
ほとときす
まちにつけてそ
なつのよを
ねぬにあかぬと
おもひしらぬる


郭公
待よひ過て
つれなくは
あくる雲ゐに
一こゑもかな
ほととぎす
まつよひすぎて
つれなくは
あくるくもゐに
ひとこゑもかな


あくかれし
人の心も
ほとゝきす
里なれそむる
夜はの一声
あくかれし
ひとのこころも
ほとときす
さとなれそむる
よはのひとこゑ


心あらは
音をそへてなけ
時鳥
あやめをむすふ
夜半の枕に
こころあらは
ねをそへてなけ
ほととぎす
あやめをむすふ
よはのまくらに


片敷の
さ夜の枕に
通ふなり
あやめにかほる
軒の下風
かたしきの
さよのまくらに
かよふなり
あやめにかほる
のきのしたかぜ


時しあれは
賎のをた巻
くるゝ夜に
むかしを今と
匂ふ立花
ときしあれは
しづのをたまき
くるるよに
むかしをいまと
にほふたちばな


出るより
くもらぬ影を
みかは水
うつすも清き
夏のよの月
いづるより
くもらぬかげを
みかはみづ
うつすもきよき
なつのよのつき


あけぬるか
また花さかぬ
萩の戸の
露にも移る
夏のよの月
あけぬるか
またはなさかぬ
はぎのとの
つゆにもうつる
なつのよのつき


やとりつる
月は残りて
短夜の
雲のいつくも
あくる空哉
やとりつる
つきはのこりて
みぢかよの
くものいつくも
あくるそらかな


すみのほる
空かとみれは
夏のよの
明る光や
月にそふらん
すみのほる
そらかとみれは
なつのよの
あくるひかりや
つきにそふらん


今年生の
竹のさ枝の
みしか夜に
葉分の月も
みる程そなき
ことしふの
たけのさえだの
みしかよに
はわけのつきも
みるほどそなき


夏かりの
ゐなのさゝ原
折敷て
みしかき夜はの
いやはねらるゝ
なつかりの
ゐなのささはら
をりしきて
みしかきよはの
いやはねらるる


よとゝもに
もえて年ふる
伊吹山
秋は草木の
色に出つゝ
よとともに
もえてとしふる
いぶきやま
あきはくさきの
いろにいでつつ


あさちふの
下葉も今は
うらかれて
夜な〳〵いたく
さゆる霜かな
あさちふの
したばもいまは
うらかれて
よなよないたく
さゆるしもかな


山のはに
我も入なむ
月もいれ
夜な〳〵ことに
又友にせん
やまのはに
われもいりなむ
つきもいれ
よなよなことに
またともにせん


秋の夜は
心の雲も
晴にけり
まことの月の
すむに任せて
あきのよは
こころのくもも
はれにけり
まことのつきの
すむにまかせて


いさりする
よさのあま人
こよひさへ
逢ことなみに
袖ぬらせとや
いさりする
よさのあまひと
こよひさへ
あふことなみに
そでぬらせとや


かはかりも
いかならん世の
雲間にか
又は見るへき
秋のよの月
かはかりも
いかならんよの
くもまにか
またはみるへき
あきのよのつき


めくりあふ
わすれかたみの
夜半の月
涙をかけて
契やはせし
めくりあふ
わすれかたみの
よはのつき
なみだをかけて
ちぎりやはせし


おもひきや
かさねし夜はの
から衣
かへして君を
夢にみんとは
おもひきや
かさねしよはの
からころも
かへしてきみを
ゆめにみんとは


はかなくて
はや忘れにし
うたゝねを
思あはする
夜半の夢かな
はかなくて
はやわすれにし
うたたねを
おもひあはする
よはのゆめかな


思ひかね
見しやいかにと
春の夜の
はかなき夢を
驚すかな
おもひかね
みしやいかにと
はるのよの
はかなきゆめを
おどろかすかな


芦の屋に
蛍やまかふ
あまやたく
思ひも恋も
よるはもえつゝ
あしのやに
ほたるやまかふ
あまやたく
おもひもこひも
よるはもえつつ


今よひさへ
よそにやきかむ
我ための
天河原は
わたる瀬もなし
こよひさへ
よそにやきかむ
わがための
あまのかはらは
わたるせもなし


はたさむく
風は夜ことに
吹まさる
我みし人は
音つれもせす
はたさむく
かぜはよことに
ふきまさる
わがみしひとは
おとつれもせす


今はたゝ
なれしその夜を
思出て
我身さへこそ
恋しかりけれ
いまはたた
なれしそのよを
おもひいでて
わがみさへこそ
こひしかりけれ


枕とて
むすふはかりそ
あやめ草
ねぬに明ぬる
夏の夜なれは
まくらとて
むすふはかりそ
あやめくさ
ねぬにあけぬる
なつのよなれは


明ぬとも
天河霧
立こめて
猶夜をのこせ
ほし合の空
あかぬとも
あまのがはきり
たちこめて
なほよをのこせ
ほしあひのそら


老ぬれは
さらぬ別も
身にそひぬ
いつ迄かみん
秋の夜の月
おいぬれは
さらぬわかれも
みにそひぬ
いつまでかみん
あきのよのつき


こよひとや
かねてあらしの
払らん
そらに雲なき
山のはの月
こよひとや
かねてあらしの
はらふらん
そらにくもなき
やまのはのつき


夜をさむみ
閨のふすまの
さゆるにも
わらやの風を
思こそやれ
よをさむみ
ねやのふすまの
さゆるにも
わらやのかぜを
おもひこそやれ


山のはに
いさよふ月を
いてんかと
待つゝをるに
夜そ更にける
やまのはに
いさよふつきを
いてんかと
まちつつをるに
よそふけにける


山末尓
不知夜歴月乎
将出香登
待乍居尓
夜曽降家類
やまのはに
いさよふつきを
いでむかと
まちつつをるに
よぞふけにける
Пока стоял и ждал,
Не выйдет ли луна,
Что не решается на небе показаться
Из-за высоких гребней дальних гор,
Ночь темная уже сошла на землю.

老にける
身にこそかこて
秋の夜の
月みるたひに
くもる涙を
おいにける
みにこそかこて
あきのよの
つきみるたひに
くもるなみだを


里とをき
野中の庵の
月影に
鳴て夜ふかき
鳥の声かな
さととをき
のなかのいほの
つきかげに
なきてよふかき
とりのこゑかな


むかし思ふ
高野の山の
深き夜に
あかつき遠く
すめる月影
むかしおもふ
たかののやまの
ふかきよに
あかつきとほく
すめるつきかげ


むは玉の
あかつき闇の
くらき夜に
何を明ぬと
鳥の鳴らん
むはたまの
あかつきやみの
くらきよに
なにをあけぬと
とりのなくらん


長き夜の
夢のうちにも
待わひぬ
さむるならひの
暁のそら
ながきよの
ゆめのうちにも
まちわひぬ
さむるならひの
あかつきのそら


なれぬ夜の
旅ねなやます
松風に
此里人や
夢むすふらん
なれぬよの
たびねなやます
まつかぜに
このさとひとや
ゆめむすふらん


春の夜の
おほろ月よの
名残とや
出る朝日も
猶かすむらん
はるのよの
おほろつくよの
なごりとや
いづるあさひも
なほかすむらん


雲はなを
よもの春風
吹はらへ
霞にゆるす
おほろ月夜そ
くもはなを
よものはるかぜ
ふきはらへ
かすみにゆるす
おほろつくよそ


春はなを
かすむにつけて
深きよの
哀をみする
月の影哉
はるはなを
かすむにつけて
ふかきよの
あはれをみする
つきのかげかな


あすか風
河音ふけて
たをやめの
袖にかすめる
春のよの月
あすかかぜ
かはおとふけて
たをやめの
そでにかすめる
はるのよのつき


咲匂ふ
花をひかりに
さしそへて
木のまを出る
春のよの月
さきにほふ
はなをひかりに
さしそへて
このまをいづる
はるのよのつき


散かゝる
花のかゝみの
水の面に
かさねてくもる
春のよの月
ちりかかる
はなのかかみの
みのおもに
かさねてくもる
はるのよのつき


くらきよの
雨にたくひて
ちる花を
春のみそれと
思ひける哉
くらきよの
あめにたくひて
ちるはなを
はるのみそれと
おもひけるかな


春の野に
菫つみにと
こし我そ
のをなつかしみ
一夜ねにける
はるののに
すみれつみにと
こしわれそ
のをなつかしみ
ひとよねにける


春野尓
須美礼採尓等
来師吾曽
野乎奈都可之美
一夜宿二来
はるののに
すみれつみにと
こしわれぞ
のをなつかしみ
ひとよねにける
Я в весеннее поле пошел за цветами,
Мне хотелось собрать там фиалок душистых,
И поля
Показались так дороги сердцу,
Что всю ночь там провел средь цветов до рассвета!
* Песня 1424 считается одной из лучших песен Ямабэ Акахито.
* Дата написания и обстоятельства, при которых сложены песни, не указаны. Полагаем, что они сложены на поэтическом турнире на тему о весне. Некоторые комментаторы (ТЮ) считают их песнями-аллегориями, где речь идет о возлюбленной и о любви к ней. Однако это надуманное толкование, для Акахито характерно именно воспевание самой природы, любование цветами, снегом, сбор весенних трав, цветов и т. д., и все четыре песни следует воспринимать в их прямом значении. То, что п. 1426 написана от лица девушки, подтверждает предположение, что она была сложена на поэтическом турнире, где обычно слагали песни от любого лица (см. п. 1425).
郭公
夜ふかきこゑは
月まつと
おきていをねぬ
人そ聞ける
ほととぎす
よふかきこゑは
つきまつと
おきていをねぬ
ひとそききける


たぐひなく
哀とぞ聞く
小夜ふけて
雲居に渡る
たづの一聲
たぐひなく
あはれとぞきく
さよふけて
くもゐにわたる
たづのひとこゑ


軒ちかき
花橘の
にほひきて
ねぬ夜の夢は
昔なりけり
のきちかき
はなたちばなの
にほひきて
ねぬよのゆめは
むかしなりけり


ともしして
こよひもあけぬ
玉くしけ
二村山の
みねの横雲
ともしして
こよひもあけぬ
たまくしけ
ふたむらやまの
みねのよこぐも


手に結ふ
岩井の清水
底みえて
影もにこらぬ
夏のよの月
てにむすふ
いはゐのしみづ
そこみえて
かげもにこらぬ
なつのよのつき


さらぬたに
みる程もなき
夏のよを
またれて出る
夏の月かな
さらぬたに
みるほどもなき
なつのよを
またれていづる
なつのつきかな


暁の
そらとはいはし
夏の夜は
またよひなから
有明の月
あかつきの
そらとはいはし
なつのよは
またよひなから
ありあけのつき


草枕
おなしたひねの
袖にまた
夜はのしくれも
やとはかりけり
くさまくら
おなしたひねの
そてにまた
よはのしくれも
やとはかりけり


秋の夜の
あやしき程の
たそかれに
荻ふく風の
音を聞哉
あきのよの
あやしきほどの
たそかれに
をぎふくかぜの
をとをきくかな


つくはねの
山鳥のおの
ますかゝみ
かけて出たる
秋の夜の月
つくはねの
やまどりのおの
ますかかみ
かけていでたる
あきのよのつき


心あらは
衛士のたく火も
たゆむらん
こよひそ秋の
月はみるへき
こころあらは
ゑじのたくひも
たゆむらん
こよひそあきの
つきはみるへき


里の名も
久しく成ぬ
山城の
とはにあひみん
秋のよの月
さとのなも
ひさしくなりぬ
やましろの
とはにあひみん
あきのよのつき


すむ月の
影すさましく
更る夜に
いとゝ秋なる
荻の上風
すむつきの
かげすさましく
ふけるよに
いととあきなる
をぎのうはかぜ


おほつかな
いかなるむかし
さえそめて
こよひの月の
名をのこしけん
おほつかな
いかなるむかし
さえそめて
こよひのつきの
なをのこしけん


のとかにも
みゆる空かな
雲はれて
いることをそき
秋のよの月
のとかにも
みゆるそらかな
くもはれて
いることをそき
あきのよのつき


こよひわれ
吉野のたけの
高ねにて
雲も及はぬ
月をみる哉
こよひわれ
よしののたけの
たかねにて
くももおよはぬ
つきをみるかな


さしのほる
ゐなの湊の
夕塩に
光みちたる
秋の夜の月
さしのほる
ゐなのみなとの
ゆふしほに
ひかりみちたる
あきのよのつき


かきくもる
心いとふな
夜半の月
何ゆへおつる
秋のなみたそ
かきくもる
こころいとふな
よはのつき
なにゆへおつる
あきのなみたそ


人をこそ
またすもあらめ
くもれとは
いかゝ思はん
秋のよの月
ひとをこそ
またすもあらめ
くもれとは
いかかおもはん
あきのよのつき


袖のうへ
枕のしたに
やとりきて
いくとせなれぬ
秋のよの月
そでのうへ
まくらのしたに
やとりきて
いくとせなれぬ
あきのよのつき


なかめきて
さのみつきせぬ
涙とも
老てしりぬる
秋のよの月
なかめきて
さのみつきせぬ
なみだとも
おいてしりぬる
あきのよのつき


みるまゝに
秋風さむし
天の原
とわたる月の
夜そ更にける
みるままに
あきかぜさむし
あまのはら
とわたるつきの
よそふけにける


むは玉の
夜は更ぬらし
玉くしけ
ふたかみ山に
月かたふきぬ
むはたまの
よはふけぬらし
たまくしけ
ふたかみやまに
つきかたふきぬ


奴婆多麻乃
欲波布氣奴良之
多末久之氣
敷多我美夜麻尓
月加多夫伎奴
ぬばたまの
よはふけぬらし
たまくしげ
ふたがみやまに
つきかたぶきぬ
Ночь, как черные ягоды тута,
Как видно, сошла на землю,
Шкатулки бесценная крышка —
Гора Футагами — закрыла
Луну, что спустилась за горы…
* Гора Футагами — священная гора, прославленная в песнях, — одно из красивейших зрелищ провинции Эттю.
長き夜は
いつの人まに
更ぬらん
めかれぬ月そ
西になり行
ながきよは
いつのひとまに
ふけぬらん
めかれぬつきそ
にしになりゆく


夜さむなる
ほやの薄の
秋風に
そよさそ鹿も
妻をこふらん
よさむなる
ほやのすすきの
あきかぜに
そよさそしかも
つまをこふらん


つれもなき
妻をやたのむ
秋風の
身にさむき夜は
鹿も鳴也
つれもなき
つまをやたのむ
あきかぜの
みにさむきよは
しかもなくなり


たれきけと
声高さこに
さをしかの
なか〳〵しよを
ひとり鳴らん
たれきけと
こゑたかさこに
さをしかの
なかなかしよを
ひとりなくらん


誰きけと
聲高砂に
さを鹿の
なが〳〵し夜を
獨り鳴くらむ
たれきけと
こゑたかさごに
さをしかの
ながながしよを
ひとりなくらむ


誰聞けと
こゑたかさこに
さをしかの
なかなかしよを
ひとりなくらん
たれきけと
こゑたかさこに
さをしかの
なかなかしよを
ひとりなくらん


長き夜の
暁かたの
木からしに
ねさめもしるく
うつ衣かな
ながきよの
あかつきかたの
こからしに
ねさめもしるく
うつころもかな


さらてたに
身にしむよはの
秋風に
いかなる色の
衣うつらん
さらてたに
みにしむよはの
あきかぜに
いかなるいろの
ころもうつらん


久かたの
かつらの里の
さ夜ころも
をりはへ月の
色にうつなり
ひさかたの
かつらのさとの
さよころも
をりはへつきの
いろにうつなり


あかしかた
むかしの跡を
尋きて
こよひも月に
袖ぬらしつる
あかしかた
むかしのあとを
たづねきて
こよひもつきに
そでぬらしつる


亀のおの
滝つ河なみ
玉ちりて
ちよの数みる
秋のよの月
かめのおの
たきつかはなみ
たまちりて
ちよのかずみる
あきのよのつき


さをしかの
入野の薄
霜かれて
手枕さむき
秋のよの月
さをしかの
いりののすすき
しもかれて
たまくらさむき
あきのよのつき


長き夜も
あかすそみつる
久堅の
天のとわたる
有明の月
ながきよも
あかすそみつる
ひさかたの
あまのとわたる
ありあけのつき


袖ぬらす
さよのね覚の
初時雨
おなし枕に
きく人もかな
そでぬらす
さよのねさめの
はつしぐれ
おなしまくらに
きくひともかな


うつろはむ
ときやみわかん
冬の夜の
霜もひとつに
さける白菊
うつろはむ
ときやみわかん
ふゆのよの
しももひとつに
さけるしらきく


ときつ風
さむく吹らし
かすゐかた
塩干の千とり
夜半に鳴なり
ときつかぜ
さむくふくらし
かすゐかた
しほひのちとり
よはになくなり


こゑたてゝ
千鳥なく也
古郷の
さほの河風
夜さむ成らし
こゑたてて
ちとりなくなり
ふるさとの
さほのかはかぜ
よさむなるらし


塩風も
夜やさむからし
奥つ波
たかしの浜に
千鳥なくなり
しほかぜも
よやさむからし
おくつなみ
たかしのはまに
ちとりなくなり


さゆる夜の
ね覚の千鳥
おりからや
よその袂に
涙そふらん
さゆるよの
ねさのちとり
おりからや
よそのたもとに
なみだそふらん


なく千鳥
袖の湊を
とひこかし
もろこし船の
よるのねさめに
なくちとり
そでのみなとを
とひこかし
もろこしふねの
よるのねさめに


浪のよる
礒のうきねの
さ夜枕
ことゝひすてゝ
行千とりかな
なみのよる
Иそのうきねの
さよまくら
こととひすてて
ゆくちとりかな


うたゝねと
思ひつるまに
冬のよの
千鳥なくまて
更にける哉
うたたねと
おもひつるまに
ふゆのよの
ちとりなくまて
ふけにけるかな


心とや
ひとりあかしの
浦ちとり
友まとふへき
夜半の月かは
こころとや
ひとりあかしの
うらちとり
ともまとふへき
よはのつきかは


たれか又
涙のつらゝ
袖さえて
霜夜の月に
ものおもふらん
たれかまた
なみだのつらら
そでさえて
しもよのつきに
ものおもふらん


ふかきよの
雲ゐの月や
さえぬらん
霜にわたせる
かさゝきの橋
ふかきよの
くもゐのつきや
さえぬらん
しもにわたせる
かささきのはし


このねぬる
夜のまの風や
さえぬらん
筧の水の
けさはこほれる
このねぬる
よのまのかぜや
さえぬらん
かけひのみづの
けさはこほれる


忘れめや
雲のかよひち
立かへり
乙女の袖を
月に見し夜は
わすれめや
くものかよひち
たちかへり
をとめのそでを
つきにみしよは


白雪の
ふりにし跡を
たつねても
こよひそいのる
御代の千とせを
しらゆきの
ふりにしあとを
たつねても
こよひそいのる
みよのちとせを


一とせは
ひとよはかりの
心地して
やそちあまりを
夢にみるかな
ひととせは
ひとよはかりの
ここちして
やそちあまりを
ゆめにみるかな


宮柱
たつるこよひの
秋の月
又いく度か
めくりあふへき
みやはしら
たつるこよひの
あきのつき
またいくたびか
めくりあふへき


夢にたに
通ひし中は
絶はてぬ
見しやその夜の
まゝの継はし
ゆめにたに
かよひしなかは
たえはてぬ
みしやそのよの
ままのつぎはし


むねの月
心の水も
よな〳〵の
しつかなるにそ
すみはしめける
むねのつき
こころのみづも
よなよなの
しつかなるにそ
すみはしめける


有明の
月に心は
なくさまて
めくりあふよを
待そかなしき
ありあけの
つきにこころは
なくさまて
めくりあふよを
まつそかなしき


しら鳥の
鷺坂山の
松かけに
やとりてゆかむ
夜も更にけり
しらとりの
さぎさかやまの
まつかけに
やとりてゆかむ
よもふけにけり


浪かくる
野島かさきに
袖ぬれて
おはなかたしき
ねぬるよは哉
なみかくる
のじまかさきに
そでぬれて
おはなかたしき
ねぬるよはかな


おもひやれ
生田の杜の
秋風に
古郷こふる
夜半のね覚を
おもひやれ
いくたのもりの
あきかぜに
ふるさとこふる
よはのねさを


みやこ思ふ
我心しれ
夜半の月
ほとは千里の
山ちこゆとも
みやこおもふ
わがこころしれ
よはのつき
ほとはちさとの
やまちこゆとも


いかにねて
夢もむすはん
草枕
あらしふく夜の
さやの中山
いかにねて
ゆめもむすはん
くさまくら
あらしふくよの
さやのなかやま


塩風に
笘のうはふき
ひまみえて
うきねの枕
あけぬ此夜は
しほかぜに
とまのうはふき
ひまみえて
うきねのまくら
あけぬこのよは


思ひねの
涙なそへそ
夜半の月
くもるといはゝ
人もこそしれ
おもひねの
なみだなそへそ
よはのつき
くもるといはは
ひともこそしれ


かきくもれ
たのむる宵の
村雨に
さはらぬ人の
こゝろをもみん
かきくもれ
たのむるよひの
むらさめに
さはらぬひとの
こころをもみん


こぬ人の
なさけなりけり
長き夜の
更るまてみる
山のはの月
こぬひとの
なさけなりけり
ながきよの
ふけるまてみる
やまのはのつき


うかるへき
別をかねて
したへとや
またふかき夜に
鳥の鳴らん
うかるへき
わかれをかねて
したへとや
またふかきよに
とりのなくらん


秋の夜の
ちよを一よに
なせりとも
詞のこりて
鳥や鳴なん
あきのよの
ちよをひとよに
なせりとも
ことばのこりて
とりやなきなん


はかなしや
その夜の夢を
かたみにて
うつゝもしらぬ
床のさ莚
はかなしや
そのよのゆめを
かたみにて
うつつもしらぬ
とこのさむしろ


秋山に
恋する鹿の
音にたてゝ
鳴そしぬへき
君かこぬよは
あきやまに
こひするしかの
ねにたてて
なくそしぬへき
きみかこぬよは


ねられねは
夢にもみえす
春のよを
あかしかねつる
身こそつらけれ
ねられねは
ゆめにもみえす
はるのよを
あかしかねつる
みこそつらけれ


山のはに
またれて出る
月影の
はつかにみえし
夜はの恋しさ
やまのはに
またれていづる
つきかげの
はつかにみえし
よはのこひしさ


逢そめし
夜半さへ月の
比ならて
後忍ふへき
形見たになし
あひそめし
よはさへつきの
ころならて
のちしのふへき
かたみたになし


さはた川
ゐてなるあしの
かり初に
あさしや契
一よはかりは
さはたかは
ゐてなるあしの
かりそめに
あさしやちぎり
ひとよはかりは


春の夜の
夢にまさりて
物そ思ふ
ほのかにみえし
月のうつゝは
はるのよの
ゆめにまさりて
ものそおもふ
ほのかにみえし
つきのうつつは


恨ても
なきてもなにを
かこたまし
みしよの月の
つらさならては
うらみても
なきてもなにを
かこたまし
みしよのつきの
つらさならては


なさけにも
なとかと待し
よな〳〵は
うきほとしらぬ
我身なりけり
なさけにも
なとかとまちし
よなよなは
うきほとしらぬ
わがみなりけり


春のよの
みしかき夢と
聞しかと
なかき思ひの
さむるともなし
はるのよの
みしかきゆめと
ききしかと
なかきおもひの
さむるともなし


むかしわか
つらねし袖は
朽はてゝ
なみたにのこる
秋の夜の月
むかしわか
つらねしそでは
くちはてて
なみたにのこる
あきのよのつき


ふしわふる
籬の竹の
なかきよも
猶をきあまる
秋の白露
ふしわふる
まがきのたけの
なかきよも
なほをきあまる
あきのしらつゆ


身のうさを
なけかぬ秋の
よはもあらは
袖にくまなく
月はみてまし
みのうさを
なけかぬあきの
よはもあらは
そでにくまなく
つきはみてまし

*4袖にくまなきイ
いかにして
身をかへてみん
秋の月
なみたのはるゝ
此よならねは
いかにして
みをかへてみん
あきのつき
なみたのはるる
このよならねは


いとゝしく
物思ふ夜はの
月かけに
むかしをこふる
袖の露けさ
いととしく
ものおもふよはの
つきかけに
むかしをこふる
そでのつゆけさ


ふかき夜の
雲ゐの月や
さえぬらん
霜にわたせる
かさゝきのはし
ふかきよの
くもゐのつきや
さえぬらん
しもにわたせる
かささきのはし

Есть в свитке "Зима"
むは玉の
よはの枕に
をく霜の
かさなるまゝに
身こそふりぬれ
むはたまの
よはのまくらに
をくしもの
かさなるままに
みこそふりぬれ


くもれとは
思はぬ物を
秋のよの
月になみたの
なとこほるらん
くもれとは
おもはぬものを
あきのよの
つきになみたの
なとこほるらん


更に尚
凉しくなりぬ
星あひの
影見る水に
夜や更けぬらむ
さらになほ
すずしくなりぬ
ほしあひの
かげみるみづに
よやふけぬらむ


みそき河
なかれてはやく
過る日の
けふみなつきは
夜も更にけり
みそきかは
なかれてはやく
すぐるひの
けふみなつきは
よもふけにけり


しはつ山
ならの若葉に
もる月の
影さゆるまて
夜は更にけり
しはつやま
ならのわかばに
もるつきの
かげさゆるまて
よはふけにけり


更にけり
をきそふ露も
玉たれの
こすのおほ野の
よはの月影
ふけにけり
をきそふつゆも
たまたれの
こすのおほのの
よはのつきかげ


さ夜更て
堀江こくなる
まつら舟
かち音たかし
みをはやみかも
さよふけて
ほりえこくなる
まつらふね
かちおとたかし
みをはやみかも


袖のかや
なをとまるらん
立はなの
こしまによせし
よはのうき舟
そでのかや
なをとまるらん
たつはなの
こしまによせし
よはのうきふね


山人の
衣なるらし
しろたへの
月にさらせる
布引のたき
やまひとの
ころもなるらし
しろたへの
つきにさらせる
ぬのびきのたき


あかつきの
鳥の音きかぬ
山さとは
寝覚そ夜はの
程をしりける
あかつきの
とりのおときかぬ
やまさとは
ねざめそよはの
ほどをしりける


更ゆけは
山陰もなし
吉野なる
なつみの河の
秋のよの月
ふけゆけは
やまかげもなし
よしのなる
なつみのかはの
あきのよのつき


長きよに
ねふりはさめて
いかなれは
此よを夢と
思ふなるらん
ながきよに
ねふりはさめて
いかなれは
このよをゆめと
おもふなるらん


聞なるゝ
やそちあまりの
鐘のこゑ
よひあかつきも
哀いつまて
ききなるる
やそちあまりの
かねのこゑ
よひあかつきも
あはれいつまて


なかき夜の
ねさめに思ふ
程はかり
うき世をいとふ
心ありせは
なかきよの
ねさめにおもふ
ほどはかり
うきよをいとふ
こころありせは


ねさめする
夜半の心の
まゝならは
思ひさためぬ
身とはなけかし
ねさめする
よはのこころの
ままならは
おもひさためぬ
みとはなけかし


うつゝにて
夢なる物は
長き夜の
ねさめにおもふ
むかしなりけり
うつつにて
ゆめなるものは
ながきよの
ねさめにおもふ
むかしなりけり


秋の夜の
千夜を一夜に
なすらへて
やちよしねはや
あく時のあらむ
あきのよの
ちよをひとよに
なすらへて
やちよしねはや
あくときのあらむ


霜こほる
露の玉にも
あらなくに
袖にたまらぬ
夜半のさし櫛
しもこほる
つゆのたまにも
あらなくに
そでにたまらぬ
よはのさしくし


雲の上や
しるきみ垣の
内にのみ
くるゝよすがら
もるや殿守
くものうへや
しるきみかきの
うちにのみ
くるるよすがら
もるやとのもり


おき迷ふ
霜もさながら
さゆる夜に
誰けちかぬる
ほのほ成る覽
おきまよふ
しももさながら
さゆるよに
たれけちかぬる
ほのほなるらん


御はぎの
ふときほそきも
たちそひて
月に忘れぬ
夜半の面影
おはぎの
ふときほそきも
たちそひて
つきにわすれぬ
よはのおもかげ


うちわびて
ねにける夜半の
鐘の音に
驚かされて
月や詠めし
うちわびて
ねにけるよはの
かねのねに
おどろかされて
つきやながめし


秋のよの
月に冴えたる
鐘の音に
やがてもときの
うつりぬる哉
あきのよの
つきにさえたる
かねのねに
やがてもときの
うつりぬるかな


あくがるゝ
心くらべも
ある物を
なほ尋ねみよ
秋のよの月
あくがるる
こころくらべも
あるものを
なほたづねみよ
あきのよのつき


尋ねみむ
心のへだて
くまもあらじ
ちかき雲井の
秋のよの月
たづねみむ
こころのへだて
くまもあらじ
ちかきくもゐの
あきのよのつき


遠近の
砧の音に
いく里も
おなじ夜さむの
あはれをぞ知る
をちこちの
きぬたのおとに
いくさとも
おなじよさむの
あはれをぞしる


夜もあけば
きつにはめなで
くたかけの
まだきになきて
せなをやりつる
よもあけば
きつにはめなで
くたかけの
まだきになきて
せなをやりつる
Как настанет рассвет,
вот, брошу тебя я лисе,
гадкий петух!
Слишком рано запел ты
и дружка угнал моего
* [А.С.] А.Вовин пишет, что "きつにはめなでくた" - это вставка айнского языка

せな - вост. seko
契りをきし
心の末の
変らずは
一人片敷け
夜半の狭衣
ちぎりをきし
こころのすゑの
かはらずは
ひとりかたしけ
よはのさころも
Если клятвы любви
будут в сердце твоём неизменны, —
эти платья надев,
успокойся и в час полночный
без меня почивай на ложе...

あまた年
さすがになれし
小夜衣
重ねぬ袖に
残る移り香
あまたとし
さすがになれし
さよころも
かさねぬそでに
のこるうつりが
За долгие годы
мне, право, ты стала близка.
Пускай в изголовье
рукава твои не лежали —
не забыть мне их аромата!

われゆゑの
思ひならねど
小夜衣
涙の聞けば
濡るる袖かな
われゆゑの
おもひならねど
さよころも
なみだのきけば
ぬるるそでかな


秋の夜を
徒にのみ
おきあかす
露は我身の
上にぞありける
あきのよを
いたづらにのみ
おきあかす
つゆはわがみの
うへにぞありける


またてきく
年はなけれと
郭公
ねぬよのいたく
つもる比かな
またてきく
としはなけれと
ほととぎす
ねぬよのいたく
つもるころかな

Пропущена "ночь" ё после нэну
玉くしけ
明行空を
かきりにて
待夜みしかき
郭公かな
たまくしけ
あけゆくそらを
かきりにて
まつよみしかき
ほととぎすかな


一声も
いつらは夜半の
時鳥
まつかとすれは
あくるしのゝめ
ひとこゑも
いつらはよはの
ほととぎす
まつかとすれは
あくるしののめ


人伝の
ことの葉をたに
郭公
待よのかひに
聞よしもかな
ひとづての
ことのはをたに
ほととぎす
まつよのかひに
きくよしもかな


さ夜更て
くらふの山の
時鳥
行ゑもしらす
鳴わたるなり
さよふけて
くらふのやまの
ほととぎす
ゆくゑもしらす
なきわたるなり


やとりとる
人や聞らん
短夜の
空もくらふの
山ほとゝきす
やとりとる
ひとやきくらん
みぢかよの
そらもくらふの
やまほとときす


一こゑに
あくるときけと
郭公
また深き夜の
月になく也
ひとこゑに
あくるときけと
ほととぎす
またふかきよの
つきになくなり


郭公
あかすも有かな
玉くしけ
二上山の
夜半の一声
ほととぎす
あかすもあるかな
たまくしけ
ふたかみやまの
よはのひとこゑ


ゆふつくよ
おほつかなきを
玉匣
ふたみの浦は
曙てこそ見め
ゆふつくよ
おほつかなきを
たまくしけ
ふたみのうらは
あけてこそみめ
В опустившейся мгле,
чуть видимы, волны мерцают,
но наступит рассвет —
и предстанет бухта Футами
драгоценной дивной шкатулкой…

玉櫛笥
ふた上山の
木の間より
いづれば明くる
夏の夜の月
たまくしげ
ふたかみやまの
このまより
いづればあくる
なつのよのつき
Сквозь просветы деревьев
На горе Футагами,
Что словно дорогой ларец с крышкою,
Светает, только выйдет лишь
Луна летней ночи.
Примерный перевод

さゆる夜は
ふるや霰の
玉くしげ
みむろの山の
明方のそら
さゆるよは
ふるやあられの
たまくしげ
みむろのやまの
あけかたのそら


夏の夜の
空はあやなく
明ぬへし
ね待の月の
程過るまに
なつのよの
そらはあやなく
あかぬへし
ねまつのつきの
ほどすぐるまに


待わふる
心つくしの
そのまゝに
明る木の間の
みしか夜の月
まちわふる
こころつくしの
そのままに
あくるこのまの
みしかよのつき


夏かりの
玉江の芦の
みしか夜に
見る空もなき
月の影哉
なつかりの
たまえのあしの
みしかよに
みるそらもなき
つきのかげかな


夏の夜は
はかなき程の
夢をたに
見はてぬさきに
明るしのゝめ
なつのよは
はかなきほどの
ゆめをたに
みはてぬさきに
あくるしののめ


鵜かひ舟
くたすとなせの
みなれ棹
さしも程なく
明る夜半かな
うかひふね
くたすとなせの
みなれさほ
さしもほどなく
あくるよはかな


夕やみに
あまの漁火
見えつるは
籬か島の
蛍なりけり
ゆふやみに
あまのいざりび
みえつるは
まがきかしまの
ほたるなりけり


天河
霧立わたり
ひこほしの
かち音聞ゆ
夜の更行は
あまのがは
きりたちわたり
ひこほしの
かちおときこゆ
よのふけゆけは


天漢
霧立度
牽牛之
楫音所聞
夜深徃
あまのがは
きりたちわたり
ひこほしの
かぢのおときこゆ
よのふけゆけば
Вот над Рекой Небес
Встает густой туман,
И слышен шум весла
От лодки Волопаса,—
Знать, ночь на землю к нам сошла!

荻原や
夜半に秋風
露ふけは
あらぬ玉ちる
床のさ莚
をぎはらや
よはにあきかぜ
つゆふけは
あらぬたまちる
とこのさむしろ


女郎花
よるなつかしく
匂ふかな
草の枕も
かはすはかりに
をみなへし
よるなつかしく
にほふかな
くさのまくらも
かはすはかりに


小山田に
風の吹しく
いなむしろ
よるなく鹿の
ふしとなりけり
をやまだに
かぜのふきしく
いなむしろ
よるなくしかの
ふしとなりけり


枯そむる
小野の草臥
ふしわひて
夜寒の床に
鹿そ啼なる
かれそむる
をののくさふし
ふしわひて
よさむのとこに
しかそなくなる


秋風に
夜わたる雁の
ねにたてゝ
涙うつろふ
庭の萩原
あきかぜに
よわたるかりの
ねにたてて
なみだうつろふ
にはのはぎはら


思ひやる
山のあなたの
光より
心にすめる
秋の夜の月
おもひやる
やまのあなたの
ひかりより
こころにすめる
あきのよのつき


槙の戸を
さゝていく夜に
成ぬらん
みれともあかぬ
月をなかめて
まきのとを
ささていくよに
なりぬらん
みれともあかぬ
つきをなかめて


秋ふかき
梢の風の
音たてゝ
夜寒に月の
影そなり行
あきふかき
こずゑのかぜの
おとたてて
よさむにつきの
かげそなりゆく


なれたにも
かたらひすつな
時鳥
物おもふころの
夜はのね覚を
なれたにも
かたらひすつな
ほととぎす
ものおもふころの
よはのねさめを


なき跡の
かたみとまてや
契けん
面影のこす
秋の夜の月
なきあとの
かたみとまてや
ちぎりけん
おもかげのこす
あきのよのつき


春の夜の
嵐や空に
さむからし
かすみもなれぬ
月の影哉
はるのよの
あらしやそらに
さむからし
かすみもなれぬ
つきのかげかな


蕤賓怨婦兩眉低
耿耿閨中待曉雞
粉黛壞來收淚處
郭公夜夜百般啼



夜哉暗杵
道哉迷倍留
郭公鳥
吾屋門緒霜
難過丹鳴
よやくらき
みちやまどへる
ほととぎす
わがやどをしも
すぎがてになく

紀友則
夏之夜之
霜哉降禮留砥
見左右丹
荒垂屋門緒
照栖月影
なつのよの
しもやふれると
みるまでに
あれたるやどを
てらすつきかげ

佚名
沙亂丹
物思居者
郭公鳥
夜深鳴手
五十人槌往濫
さみだれに
ものおもひをれば
ほととぎす
よふかくなきて
いづちゆくらむ

紀友則
初夜之間裳
葬處無見湯留
夏蟲丹
迷增禮留
戀裳為鉋
よひのまも
はかなくみゆる
なつむしに
まどひまされる
こひもするかな

紀友則
好女係心夜不眠
終宵臥起淚連連
贈花贈札迷情切
其奈遊蟲入夏燃



夏之夜之
臥歟砥為禮者
郭公
鳴人音丹
明留篠之目
なつのよの
ふすかとすれば
ほととぎす
なくひとこゑに
あくるしののめ

紀貫之
日常夜短懶晨興
夏漏遲明聽郭公
嘯取詞人偷走筆
文章氣味與春同



夏枕驚眠有妬聲
郭公夜叫忽過庭
一留一去傷人意
珍重今年報舊鳴



山鳥の
おろのはつおの
長き夜に
月や鏡と
照まさるらん
やまどりの
おろのはつおの
ながきよに
つきやかがみと
てりまさるらん


なかむれは
空すみわたる
秋の夜の
月こそ人の
心なりけれ
なかむれは
そらすみわたる
あきのよの
つきこそひとの
こころなりけれ


由良のとを
夜わたる月に
さそはれて
行ゑもしらす
出る舟人
ゆらのとを
よわたるつきに
さそはれて
ゆくゑもしらす
いづるふなびと


和歌のうらや
道ふみまよふ
さ夜千鳥
跡つけんとは
思はさりしを
わかのうらや
みちふみまよふ
さよちとり
あとつけんとは
おもはさりしを


難波かた
入江の芦の
夜とともに
月こそやとれ
秋のうら波
なにはかた
いりえのあしの
よとともに
つきこそやとれ
あきのうらなみ


夜緒寒美
衣借金
鳴苗丹
芽之下葉裳
移徙丹藝里
よをさむみ
ころもかりがね
なくなへに
はぎのしたばも
うつろひにけり

柿本人麻呂
夏夜明月無翳處
銀漢落波開白明
夜月無程早朝連
先羽殉蹈無跡處



夏之夜之
月者無程
乍明
朝之間緒曾
加許知寄介留
なつのよの
つきはほどなく
あけながら
あしたのまをぞ
かこちよせける

佚名
夏の夜の
月は程なく
明けぬれど
朝のまをぞ
喞ちよせつる
なつのよの
つきはほどなく
あけぬれど
あしたのまをぞ
かこちよせつる


鵲之
嶺飛越斗
鳴徃者
夏之夜度
月曾隱留
かささきの
みねとびこゆと
なきゆけば
なつのよわたる
つきぞかくるる

佚名
鵲の
峯とびこえて
なきゆけば
夏の夜渡る
月ぞかくるゝ
かささぎの
みねとびこえて
なきゆけば
なつのよわたる
つきぞかくるる
Если сороки
Перелетят вершину
И закричат,
То пересекающая летнюю ночь
Луна скроется!
Примерный перевод

吹風之
吾屋門丹來
夏夜者
月之影許曾
涼雁介禮
ふくかぜの
わがやどにくる
なつのよは
つきのかげこそ
すずしかりけれ


草繁芝
多放往之
夏之夜裳
別手別者
袂者沾南
くさしげみ
したはなれゆく
なつのよも
わけてわかれば
たもとはぬらむ

佚名
夏之夜之
露那駐曾
藕葉之
誠之玉砥
誠芝果禰香
なつのよの
つゆなとどめぞ
はちすばの
まことのたまと
なりしはてねば

佚名
夜露一種染萬藕
流水布無葉不倦
裁縫無刀尺仙服
飛花帷葉隨步收



夏之夜之
松葉牟曾與丹
吹風者
五十人連歟雨之
音丹殊成
なつのよの
まつはもぞよに
ふくかぜは
いつれかあめの
おとにことなる

佚名
秋之夜丹
雨砥聞江手
降鶴者
風丹散希留
黃葉成介里
あきのよに
あめときゆえて
ふりつるは
かぜにちりける
もみぢなりけり

佚名
秋之夜緒
明芝侘沼砥
云藝留曾
物思人之
為丹佐里介留
あきのよを
あかしわびぬと
いひけるぞ
ものおもふひとの
ためにざりけに

佚名
秋之夜之
月之影許曾
自木間
墮者衣砥
見江亘氣禮
あきのよの
つきのかげこそ
このまより
おつればきぬと
みえわたりけれ

佚名
銀河
秋之夜量
與砥麻南
流留月之
景緒駐部久
あまのかは
あきのよはかり
よとまなむ
ながるるつきの
かげをとむべく

佚名
礒之上
古杵心者
秋之夜之
黃葉折丹曾
思出鶴
いそのかみ
ふるきこころは
あきのよの
もみぢをるにぞ
おもひいでつる

佚名
吹風者
往裳不知砥
冬來者
獨寢夜之
身丹曾芝美介留
ふくかぜは
ゆくもしらねと
ふゆくれば
ひとりぬるよの
みにぞしみける

佚名
天河
八十瀬の浪や
洗ふらん
きよくそすめる
秋の夜の月
あまのがは
やそせのなみや
あらふらん
きよくそすめる
あきのよのつき


よるとたに
水の白波
わきかねて
あかぬ石間に
やとる月影
よるとたに
みづのしらなみ
わきかねて
あかぬいしまに
やとるつきかげ


高円の
野への秋風
更るよに
衣手さむみ
月を見るかな
たかまとの
のへのあきかぜ
ふけるよに
ころもでさむみ
つきをみるかな


さむしろに
ひとりね待の
夜はの月
しき忍ふへき
秋の空かは
さむしろに
ひとりねまちの
よはのつき
しきしのふへき
あきのそらかは


見れはとて
なくさみもせす
秋の月
暮る夜毎の
老の涙に
みれはとて
なくさみもせす
あきのつき
くるよるごとの
おいのなみだに


風さむみ
するわさならし
長月の
よるはすからに
衣うつこゑ
かぜさむみ
するわさならし
ながつきの
よるはすからに
ころもうつこゑ


この里に
夜半の河風
さむけれは
手玉もゆらに
衣うつ也
このさとに
よはのかはかぜ
さむけれは
ただまもゆらに
ころもうつなり


飛鳥風
袖ふく夜半の
寒けれは
また此里も
衣うつなり
あすかかぜ
そでふくよはの
さむけれは
またこのさとも
ころもうつなり


夏の夜の
月はほどなく
明けながら
朝の間をぞ
かこちよせける
なつのよの
つきはほどなく
あけながら
あしたのまをぞ
かこちよせける


宵の間は
はかなく見ゆる
夏蟲に
まどひまされる
恋もするかな
よひのまは
はかなくみゆる
なつむしに
まどひまされる
こひもするかな


夏の夜は
臥すかとすれは
郭公
鳴くひと声に
明くるしののめ
なつのよは
ふすかとすれは
ほととぎす
なくひとこゑに
あくるしののめ


夏の夜の
霜や置けると
見るまでに
荒れたる宿を
照らす月影
なつのよの
しもやおけると
みるまでに
あれたるやどを
てらすつきかげ


五月雨に
物思ひをれば
郭公
夜深く鳴きて
いづち行くらむ
さみだれに
ものおもひをれば
ほととぎす
よふかくなきて
いづちゆくらむ


夏の夜は
水や勝れる
天の河
流るる月の
影もとどめぬ
なつのよは
みづやまされる
あまのかは
ながるるつきの
かげもとどめぬ


夏の夜の
松葉もそよと
吹く風は
いづれか雨の
声にかはれる
なつのよの
まつはもそよと
ふくかぜは
いづれかあめの
こゑにかはれる


夜やくらき
道やまとへる
ほとゝきす
我やとにしも
すきかてになく
よやくらき
みちやまとへる
ほとときす
わがやどにしも
すぎかてになく


夜や暗き
路や惑へる
郭公
わが宿をしも
過ぎかてにする
よやくらき
ぢやまどへる
ほととぎす
わがやどをしも
すぎかてにする


夏の日を
天雲しばし
隠さなむ
寝るほどもなく
明くる夜にせむ
なつのひを
あまぐもしばし
かくさなむ
ねるほどもなく
あくるよにせむ


暮るるかと
見れは明けぬる
夏の夜を
あかすとやなく
山郭公
くるるかと
みれはあけぬる
なつのよを
あかすとやなく
やまほととぎす


秋の夜の
月の影こそ
木の間より
落つれはきぬと
見えわたりけれ
あきのよの
つきのかげこそ
このまより
おつれはきぬと
みえわたりけれ


吹く風は
色も見えねと
冬来れば
ひとり寝る夜の
身にぞしみける
ふくかぜは
いろもみえねと
ふゆくれば
ひとりねるよの
みにぞしみける


思ひつつ
昼はかくても
慰めつ
夜こそ涙
尽きずなかるる
おもひつつ
ひるはかくても
なぐさめつ
よるこそなみだ
つきずなかるる


左夜深而
妹乎念出
布妙之
枕毛衣世二
<嘆>鶴鴨
さよふけて
いもをおもひいで
しきたへの
まくらもそよに
なげきつるかも
Спустилась ночь —
И вспомнил я о милой,
И так я горевал порой ночной,
Что даже крытое шелками изголовье
Стонало жалобно со мной!

夕月夜
おぼろに人を
見てしより
天雲はれぬ
心地こそすれ
ゆふつくよ
おぼろにひとを
みてしより
あまぐもはれぬ
ここちこそすれ


夏の夜の
露なとどめそ
蓮葉の
まことの珠と
なりしはてずば
なつのよの
つゆなとどめそ
はちすはの
まことのたまと
なりしはてずば


夏草も
夜の間は露に
いこふらむ
つねに焦がるる
我れぞかなしき
なつくさも
よのまはつゆに
いこふらむ
つねにこがるる
われぞかなしき


夏の月
ひかり惜しまず
照るときは
流るる水に
影ろ副そ立つ
なつのつき
ひかりをしまず
てるときは
ながるるみづに
かげろふそたつ


妻こふる
我身ひとつの
秋とてや
夜な〳〵月に
鹿の鳴らん
つまこふる
わがみひとつの
あきとてや
よなよなつきに
しかのなくらん