鳴きぬべき
頃と思へば
時鳥
寐覺にまたぬ
あかつきぞなき
なきぬべき
ころとおもへば
ほととぎす
ねざめにまたぬ
あかつきぞなき
み山いてて
夜はにやきつる
郭公
暁かけて
こゑのきこゆる
みやまいてて
よはにやきつる
ほとときす
あかつきかけて
こゑのきこゆる
降り晴れて
氷れる雪の
梢より
あかつき深き
鳥のはつこゑ
ふりはれて
こほれるゆきの
こずゑより
あかつきふかき
とりのはつこゑ
たれに猶
忍ぶのさとの
郭公
あかつきふかき
雲に鳴らん
たれになほ
しのぶのさとの
ほととぎす
あかつきふかき
くもになくらん
阿可都岐波
止利母奈倶那利
天羅天羅能
可祢毛止与表奴
阿介婆天奴巳能与
あかつきは
とりもなくなり
てらでらの
かねもとよみぬ
あけはてぬこのよ
曉と
おもはでしもや
時鳥
まだなかぞらの
つきに鳴くらむ
あかつきと
おもはでしもや
ほととぎす
まだなかぞらの
つきになくらむ
曉の
おもひを添へて
時鳥
などいひ知らぬ
そらに鳴くらむ
あかつきの
おもひをそへて
ほととぎす
などいひしらぬ
そらになくらむ
月影に
鵜舟のかゞり
さしかへて
曉やみの
夜がはこぐなり
つきかげに
うふねのかがり
さしかへて
あかつきやみの
よがはこぐなり
曉の
鳥の八こゑに
一聲を
鳴きそへて行く
ほとゝぎすかな
あかつきの
とりのやこゑに
ひとこゑを
なきそへてゆく
ほととぎすかな
夏草の
あかつきおきの
露のまに
移れば明くる
山の端の月
なつくさの
あかつきおきの
つゆのまに
うつればあくる
やまのはのつき
露置きて
ながむる程を
思ひやれ
天の河原の
あかつきの空
つゆおきて
ながむるほどを
おもひやれ
あめのかはらの
あかつきのそら
てる月を
ひるかとみれは
あかつきに
はねかくしきも
あらしとそ思ふ
てるつきを
ひるかとみれは
あかつきに
はねかくしきも
あらしとそおもふ
いかてなほ
ひとにもとはん
あかつきの
あかぬわかれや
なにゝにたりと
いかてなほ
ひとにもとはん
あかつきの
あかぬわかれや
なにににたりと
いかで我
人にもとはむ
曉の
あかぬ別れや
なにゝ似たりと
いかでわれ
ひとにもとはむ
あかつきの
あかぬわかれや
なにゝにたりと
我ぞまづ
ねはなかれける
曉の
鳥をもまたぬ
人のわかれに
われぞまづ
ねはなかれける
あかつきの
とりをもまたぬ
ひとのわかれに
夏深き
板井の水の
いはまくら
秋風ならぬ
あかつきぞなき
なつふかき
いたゐのみづの
いはまくら
あきかぜならぬ
あかつきぞなき
いかにねて
みえし夢ぞと
おどろけど
思あはする
曉ぞなき
いかにねて
みえしゆめぞと
おどろけど
おもひあはする
あかつきぞなき
はつ霜や
おきはしむらん
暁の
かねのおとこそ
ほのきこゆなれ
はつしもや
おきはしむらむ
あかつきの
かねのおとこそ
ほのきこゆなれ
たかさこの
をのへのかねの
おとすなり
暁かけて
霜やおくらん
たかさこの
をのへのかねの
おとすなり
あかつきかけて
しもやおくらむ
神無月
しぐれずとても
曉の
寐覺のそでは
かわくものかは
かみなづき
しぐれずとても
あかつきの
ねざめのそでは
かわくものかは
年經たる
深山のおくの
秋のそら
寐ざめ志ぐれぬ
曉ぞなき
としへたる
みやまのおくの
あきのそら
ねざめしぐれぬ
あかつきぞなき
この比の
ね覺はものゝ
悲しきに
暁ばかり
しぐれずもがな
このころの
ねさめはものの
かなしきに
あかつきばかり
しぐれずもがな
В это время,
Когда не спишь
И всё тоскливо,
Ах, хоть на рассвете
Не лил бы дождь!
このころの
あか月つゆに
わかやとの
萩のしたはは
色つきにけり
このころの
あかつきつゆに
わかやとの
はきのしたはは
いろつきにけり
一こゑに
あくる夜ならば
曉の
夕付鳥は
いかゞなくらむ
ひとこゑに
あくるよならば
あかつきの
ゆふつけどりは
いかがなくらむ
とりのねに
おどろかされて
暁の
ね覺しづかに
世を思ふ哉
とりのねに
おどろかされて
あかつきの
ねざめしづかに
よをおもふかな
をこたらぬ
暁をきの
身になれて
鳥のはつ音は
まつとしもなし
をこたらぬ
あかつきをきの
みになれて
とりのはつねは
まつとしもなし
我ならぬ
人もさこそは
聞きつらめ
曉がたの
たきぐちのこゑ
われならぬ
ひともさこそは
ききつらめ
あかつきがたの
たきぐちのこゑ
うき物と
たれかいひけん
暁の
わかれたにこそ
かたみなりけれ
うきものと
たれかいひけん
あかつきの
わかれたにこそ
かたみなりけれ
暁の
別れのきはに
しられけり
またと思はぬ
人のけしきは
あかつきの
わかれのきはに
しられけり
またとおもはぬ
ひとのけしきは
よもすから
おしみ〳〵て
あかつきの
鐘とともにや
春はつくらん
よもすから
おしみおしみて
あかつきの
かねとともにや
はるはつくらん
高円の
野への秋はき
此比の
暁露に
咲にけるかも
たかまとの
のへのあきはき
このころの
あかつきつゆに
さきにけるかも
なかき夜を
いかにあかして
女郎花
暁おきの
露けかるらん
なかきよを
いかにあかして
をみなへし
あかつきおきの
つゆけかるらん
深山路や
暁かけて
なく鹿の
声するかたに
月そかたふく
みやまぢや
あかつきかけて
なくしかの
こゑするかたに
つきそかたふく
足曳の
山田もる庵に
ね覚して
鹿の音きかぬ
暁そなき
あしびきの
やまだもるいほに
ねさして
しかのねきかぬ
あかつきそなき
有明は
いるうらみなき
山のはの
つらさにかはる
あかつきの空
ありあけは
いるうらみなき
やまのはの
つらさにかはる
あかつきのそら
暁に
つもりやまさる
外面なる
竹の雪おれ
声つゝくなり
あかつきに
つもりやまさる
そともなる
たけのゆきおれ
こゑつつくなり
初瀬山
尾上の雪け
雲晴て
嵐にちかき
あかつきの鐘
はつせやま
おのえのゆきけ
くもはれて
あらしにちかき
あかつきのかね
我せこを
やまとへやると
さよ更て
暁露に
われ立ぬれぬ
わがせこを
やまとへやると
さよふけて
あかつきつゆに
われたちぬれぬ
うきをしるも
いく暁に
成ぬらん
こよひもはやく
鳥なきぬ也
うきをしるも
いくあかつきに
なりぬらん
こよひもはやく
とりなきぬなり
暁の
嵐にむせふ
鳥のねに
我もなきてそ
おき別れゆく
あかつきの
あらしにむせふ
とりのねに
われもなきてそ
おきわかれゆく
あはぬ夜は
恋つゝもねき
暁の
別れの道に
なとまとふらん
あはぬよは
こひつつもねき
あかつきの
わかれのみちに
なとまとふらん
明やすき
人の別を
うらみしに
わかあかつきの
今は久しき
あけやすき
ひとのわかれを
うらみしに
わかあかつきの
いまはひさしき
心つきし
よひあかつきの
鐘のをとも
またす別て
きくしもそうき
こころつきし
よひあかつきの
かねのをとも
またすわかれて
きくしもそうき
冬の夜は
鐘よりさきの
久しくて
暁またぬ
ね覚をそする
ふゆのよは
かねよりさきの
ひさしくて
あかつきまたぬ
ねさめをそする
月のいる
枕の山は
明そめて
軒端をわたる
あかつきの雲
つきのいる
まくらのやまは
あけそめて
のきはをわたる
あかつきのくも
いく声に
夢かおとろく
暁の
ね覚の後の
鐘そすくなき
いくこゑに
ゆめかおとろく
あかつきの
ねさののちの
かねそすくなき
里〳〵の
鳥の初音は
聞ゆれと
また月たかき
暁の空
さとさとの
とりのはつねは
きこゆれと
またつきたかき
あかつきのそら
鐘のをと
鳥の音きかぬ
ねさめには
暁になる
程もわかれす
かねのをと
とりのねきかぬ
ねさめには
あかつきになる
ほどもわかれす
暁の
鐘のひゝきに
夢さめて
猶その後も
夜はそ久しき
あかつきの
かねのひゝきに
ゆめさめて
なほそののちも
よはそひさしき
むら〳〵に
雲のわかるゝ
絶まより
暁しるき
星いてにけり
むらむらに
くものわかるる
たえまより
あかつきしるき
ほしいてにけり
法の声に
きゝそわかれぬ
なかき夜の
ねふりをさます
あかつきの鐘
のりのこゑに
ききそわかれぬ
なかきよの
ねふりをさます
あかつきのかね
冬山の
雪ふきしほる
木からしに
かたもさためぬ
暁の鐘
ふゆやまの
ゆきふきしほる
こからしに
かたもさためぬ
あかつきのかね
やはらくる
光にも又
契かな
やみちはれなむ
あかつきの空
やはらくる
ひかりにもまた
ちぎりかな
やみちはれなむ
あかつきのそら
夕月夜
あかつきやみの
ほのかにも
見し人ゆへに
恋やわたらむ
ゆふつくよ
あかつきやみの
ほのかにも
みしひとゆへに
こひやわたらむ
暁の
わかれをしらて
くやしくも
あはぬつらさを
恨けるかな
あかつきの
わかれをしらて
くやしくも
あはぬつらさを
うらみけるかな
あかつきは
行ゑもしらぬ
別かな
峰のあらしの
横雲の空
あかつきは
ゆくゑもしらぬ
わかれかな
みねのあらしの
よこぐものそら
暁の
なみたはかりを
形見にて
わかるゝ袖に
したふ月影
あかつきの
なみたはかりを
かたみにて
わかるるそでに
したふつきかげ
大井河
鵜舟くだせば
あかつきの
月は空にぞ
さし昇りける
おほゐかは
うふねくだせば
あかつきの
つきはそらにぞ
さしのぼりける
よひのまは
もらぬ木はに
袖ぬれて
時雨になりぬ
暁の空
よひのまは
もらぬこのはに
そでぬれて
しぐれになりぬ
あかつきのそら
曉の
枕の志たに
住みなれて
寐覺ことゝふ
きり〴〵すかな
あかつきの
まくらのしたに
すみなれて
ねざめこととふ
きりぎりすかな
はれやらぬ
心の月も
雲間より
此あかつきそ
すみまさりける
はれやらぬ
こころのつきも
くもまより
このあかつきそ
すみまさりける
忘るなよ
とはかりいひて
別にし
その暁や
かきりなりけん
わするなよ
とはかりいひて
わかれにし
そのあかつきや
かきりなりけん
こぬ宵も
つらからぬかは
月影を
あかつきはかり
何うらみけん
こぬよひも
つらからぬかは
つきかげを
あかつきはかり
なにうらみけん
うしとのみ
思ひし物を
暁の
ゆふつけ鳥は
今そ恋しき
うしとのみ
おもひしものを
あかつきの
ゆふつけとりは
いまそこひしき
契をく
み山の秋の
あかつきを
猶うき物と
鹿そ鳴なる
ちぎりをく
みやまのあきの
あかつきを
なほうきものと
しかそなくなる
むかし思ふ
高野の山の
深き夜に
あかつき遠く
すめる月影
むかしおもふ
たかののやまの
ふかきよに
あかつきとほく
すめるつきかげ
山寺の
あかつきかたの
鐘のをとに
なかきねふりを
さましてし哉
やまてらの
あかつきかたの
かねのをとに
なかきねふりを
さましてしかな
契あれは
暁ふかく
聞かねに
行末かけて
夢やさめなむ
ちぎりあれは
あかつきふかく
きくかねに
ゆくすゑかけて
ゆめやさめなむ
むは玉の
あかつき闇の
くらき夜に
何を明ぬと
鳥の鳴らん
むはたまの
あかつきやみの
くらきよに
なにをあけぬと
とりのなくらん
暁の
しきのはねかき
かきもあへし
我思ふことの
数をしらせは
あかつきの
しきのはねかき
かきもあへし
わがおもふことの
かずをしらせは
長き夜の
夢のうちにも
待わひぬ
さむるならひの
暁のそら
ながきよの
ゆめのうちにも
まちわひぬ
さむるならひの
あかつきのそら
いく里の
ゆふつけ鳥に
別きぬ
おなし旅ねの
あかつきの空
いくさとの
ゆふつけとりに
わかれきぬ
おなしたびねの
あかつきのそら
春はたゝ
かすむはかりの
山のはに
暁かけて
月いつるころ
はるはたた
かすむはかりの
やまのはに
あかつきかけて
つきいつるころ
暁の
そらとはいはし
夏の夜は
またよひなから
有明の月
あかつきの
そらとはいはし
なつのよは
またよひなから
ありあけのつき
天の河
暁やみの
かへるさに
またたとらるゝ
あさせしら浪
あまのかは
あかつきやみの
かへるさに
またたとらるる
あさせしらなみ
いてやこの
時雨をとせぬ
暁も
老のねさめは
袖やぬらさん
いてやこの
しぐれをとせぬ
あかつきも
おいのねさめは
そでやぬらさん
あかつきの
鐘のこゑこそ
うれしけれ
なかきうきよの
明ぬと思へは
あかつきの
かねのこゑこそ
うれしけれ
なかきうきよの
あかぬとおもへは
あかつきの
鳥のうきねも
またきかす
我身にしらぬ
関の名なれは
あかつきの
とりのうきねも
またきかす
わがみにしらぬ
せきのななれは
暁の
ゆふつけ鳥の
おなしねに
幾度つらき
わかれしつらん
あかつきの
ゆふつけとりの
おなしねに
いくたびつらき
わかれしつらん
かきりとは
思はぬ物を
あかつきの
別のとこの
おきうかるらん
かきりとは
おもはぬものを
あかつきの
わかれのとこの
おきうかるらん
きぬ〳〵の
別やさても
かなしきと
あかつきしらぬ
鳥の音もかな
きぬきぬの
わかやさても
かなしきと
あかつきしらぬ
とりのねもかな
あかつきは
いかに契て
むかしより
別かなしき
ときとなりけん
あかつきは
いかにちぎりて
むかしより
わかれかなしき
ときとなりけん
逢事は
思ひたえぬる
あかつきも
別し鳥の
ねにそなかるゝ
あふごとは
おもひたえぬる
あかつきも
わかれしとりの
ねにそなかるる
我は又
むなしき夢の
さめぬまに
たかあかつきと
鳥の鳴らん
われはまた
むなしきゆめの
さめぬまに
たかあかつきと
とりのなくらん
暁は
数寄屋のうちも
行灯に
夜会などには
短檠を置け
ともしびに
陰と陽との
二つあり
暁陰に
宵は陽なり
茶の湯には
梅寒菊に
黄葉み落ち
青竹枯木
あかつきの霜
夏はつる
暁かたの
まきの戸は
明ての後そ
涼しかりける
なつはつる
あかつきかたの
まきのとは
あけてののちそ
すずしかりける
暁の
夢にみえつゝ
かちしまの
岩こす波の
くたけてそ思ふ
あかつきの
ゆめにみえつつ
かちしまの
いはこすなみの
くたけてそおもふ
むかし今
思ひのこさぬ
ね覚かな
あかつきはかり
物忘れせて
むかしいま
おもひのこさぬ
ねさかな
あかつきはかり
ものわすれせて
あかつきの
鳥の音きかぬ
山さとは
寝覚そ夜はの
程をしりける
あかつきの
とりのおときかぬ
やまさとは
ねざめそよはの
ほどをしりける
うき物と
寝覚をたれに
ならひてか
暁ことに
鳥のなくらん
うきものと
ねざめをたれに
ならひてか
あかつきことに
とりのなくらん
聞なるゝ
やそちあまりの
鐘のこゑ
よひあかつきも
哀いつまて
ききなるる
やそちあまりの
かねのこゑ
よひあかつきも
あはれいつまて
曉の
かねよりもなほ
夕ぐれの
れいじにれいの
聲もすみけり
あかつきの
かねよりもなほ
ゆふぐれの
れいじにれいの
こゑもすみけり
このたびは
憂き世のほかに
めくり会はむ
待つ暁の
有明の空
このたびは
うきよのほかに
めくりあはむ
まつあかつきの
ありあけのそら