Весна
40
Лето
37
Осень
41
Зима
39
Любовь
38
Благопожелания
0
Странствия
0
Разлука
0
Скорбь
0
Буддийское
0
Синтоистское
0
Разное
0
Иное
0
花の香を
風のたよりに
たぐへてぞ
鶯さそふ
しるべにはやる
はなのかを
かぜのたよりに
たぐへてぞ
うぐひすさそふ
しるべにはやる


谷風に
とくる氷の
ひまことに
打ちいづる波や
春の初花
たにかぜに
とくるこほりの
ひまことに
うちいづるなみや
はるのはつはな


散ると見て
あるべきものを
梅の花
うたて匂ひの
袖にとまれる
ちるとみて
あるべきものを
うめのはな
うたてにほひの
そでにとまれる


声たえず
鳴けや鶯
ひととせに
ふたたびとだに
来べき春かは
こゑたえす
なけやうくひす
ひととせに
ふたたひとたに
くへきはるかは


梅の花
しるき香ならで
移つろはば
雪降りやまぬ
春とこそ見め
うめのはな
しるきかならで
うつろはば
ゆきふりやまぬ
はるとこそみめ


春の日に
霞わけつつ
飛ぶ雁の
見えみ見えずみ
雲かくれなく
はるのひに
かすみわけつつ
とぶかりの
みえみみえずみ
くもかくれなく


花の木も
いまは掘り植ゑじ
春立ては
移ろふ色に
人ならひけり
はなのきも
いまはほりうゑじ
はるたては
うつろふいろに
ひとならひけり


春の野に
若菜つまむと
来しわれを
散りかふ花に
道はまどひぬ
はるののに
わかなつまむと
こしわれを
ちりかふはなに
みちはまどひぬ


鶯は
うべも鳴くらむ
花桜
咲くと見し間に
移つろひにけり
うぐひすは
うべもなくらむ
はなさくら
さくとみしまに
うつろひにけり


春霞
たなびく野辺の
若菜にも
なりみてしがな
人も摘むやと
はるかすみ
たなびくのべの
わかなにも
なりみてしがな
ひともつむやと


浅緑
野辺の霞は
つつめとも
こぼれて匂ふ
花桜かな
あさみどり
のべのかすみは
つつめとも
こぼれてにほふ
はなさくらかな


春立たば
花を見むてふ
心こそ
野辺の霞と
ともにたちぬれ
はるたたば
はなをみむてふ
こころこそ
のべのかすみと
ともにたちぬれ


み吉野の
山に咲きたる
桜花
雪かとのみぞ
あやまたれける
みよしのの
やまにさきたる
さくらばな
ゆきかとのみぞ
あやまたれける


年のうちは
みな春なから
果てななむ
花を見てだに
心やるべく
としのうちは
みなはるなから
はてななむ
はなをみてだに
こころやるべく


春霞
網に張りこめ
花散らば
移ろひぬべし
鶯とめよ
はるかすみ
あみにふりこめ
はなちらば
うつろひぬべし
うぐひすとめよ


春雨の
色は濃くしも
見えなくに
野辺の緑を
いかで染むらむ
はるさめの
いろはこくしも
みえなくに
のべのみどりを
いかでそむらむ


春なれど
花もにほはぬ
山里は
もの憂かる音に
鶯ぞ鳴く
はるなれど
はなもにほはぬ
やまざとは
ものうかるねに
うぐひすぞなく


桜花
ちくさなからに
あたなれと
誰かは春を
うらみはてたる
さくらばな
ちくさなからに
あたなれと
たれかははるを
うらみはてたる


水の上に
綾織り乱だる
春雨や
山のみとりを
なべて染むらむ
みづのうへに
あやおりみだる
はるさめや
やまのみとりを
なべてそむらむ


色深く
見る野辺だにも
常ならば
春はゆくとも
形見ならまし
いろふかく
みるのべだにも
つねならば
はるはゆくとも
かたみならまし


駒なべて
めもはるの野に
まじりなむ
若菜摘みつる
人はありやと
こまなべて
めもはるののに
まじりなむ
わかなつみつる
ひとはありやと


鶯の
谷よりいづる
声なくば
春来ることを
誰がつげまし
うぐひすの
たによりいづる
こゑなくば
はるくることを
たれがつげまし


春ながら
年は暮れなむ
散る花を
惜しと鳴くなる
鶯の声
はるながら
としはくれなむ
ちるはなを
をしとなくなる
うぐひすのこゑ


大空を
覆ふばかりの
袖もがな
春咲く花を
風にまかせじ
おほそらを
おほふばかりの
そでもがな
はるさくはなを
かぜにまかせじ


霞立つ
春の山辺に
桜花
飽かす散るとや
鶯の鳴く
かすみたつ
はるのやまべに
さくらばな
あかすちるとや
うぐひすのなく


天の原
春はことにも
見ゆるかな
雲の立てるも
色濃かりけり
あまのはら
はるはことにも
みゆるかな
くものたてるも
いろこかりけり


巻向の
桧原の霞
たちかへり
見れども花の
おどろかれつつ
まきむくの
ひばらのかすみ
たちかへり
みれどもはなの
おどろかれつつ


白妙の
波路わけてや
春は来る
風吹くからに
花も咲きけり
しろたへの
なみぢわけてや
はるはくる
かぜふくからに
はなもさきけり


霞立つ
春の山辺は
遠ほけれど
吹き来る風は
花の香ぞする
かすみたつ
はるのやまべは
とほほけれど
ふきくるかぜは
はなのかぞする


散る花の
待ててふ言を
聞かませば
春ふる雪と
降らせざらまし
ちるはなの
まててふことを
きかませば
はるふるゆきと
ふらせざらまし


かかるとき
あらじとおもへば
ひととせを
すべては春に
なすよしもがな
かかるとき
あらじとおもへば
ひととせを
すべてははるに
なすよしもがな


待ててふに
とまらぬものと
知りながら
しひてぞ惜しき
春の別れを
まててふに
とまらぬものと
しりながら
しひてぞをしき
はるのわかれを


梅の花
香をばとどめて
色をのみ
年経る人の
袖に染むらむ
うめのはな
かをばとどめて
いろをのみ
としへるひとの
そでにそむらむ


飽かずして
過ぎゆく春の
人ならば
とく帰へりこと
言はましものを
あかずして
すぎゆくはるの
ひとならば
とくかへりこと
ことはましものを


梅の香を
袖にうつして
とどめては
春は過ぐとも
形見ならまし
うめのかを
そでにうつして
とどめては
はるはすぐとも
かたみならまし


ゆく春の
跡だにありと
見ましかば
野辺のまにまに
とめましものを
ゆくはるの
あとだにありと
みましかば
のべのまにまに
とめましものを


春霞
色の千くさに
見えつるは
たなびく山の
花の影かも
はるかすみ
いろのちくさに
みえつるは
たなびくやまの
はなのかげかも


日暮れば
かつ散る花を
あたらしみ
春の形見に
摘みそ入れつる
ひがくれば
かつちるはなを
あたらしみ
はるのかたみに
つみそいれつる


ときはなる
松のみどりも
春くれば
いまひとしほの
色まさりけり
ときはなる
まつのみどりも
はるくれば
いまひとしほの
いろまさりけり


来る春に
あはむことこそ
かたからめ
過ぎゆくかたに
遅れずもがな
くるはるに
あはむことこそ
かたからめ
すぎゆくかたに
おそれずもがな


蝉の声
きけばかなしな
夏衣
うすくや人の
ならむとおもへば
せみのこゑ
きけばかなしな
なつころも
うすくやひとの
ならむとおもへば


にほひつつ
散りにし花ぞ
思ほゆる
夏は緑の
葉のみしげりて
にほひつつ
ちりにしはなぞ
おもほゆる
なつはみどりの
はのみしげりて


うつせみの
わびしきものを
夏草の
露にかかれる
身にこそありけれ
うつせみの
わびしきものを
なつくさの
つゆにかかれる
みにこそありけれ


夏の夜の
月はほどなく
明けながら
朝の間をぞ
かこちよせける
なつのよの
つきはほどなく
あけながら
あしたのまをぞ
かこちよせける


宵の間は
はかなく見ゆる
夏蟲に
まどひまされる
恋もするかな
よひのまは
はかなくみゆる
なつむしに
まどひまされる
こひもするかな


夏の夜は
臥すかとすれは
郭公
鳴くひと声に
明くるしののめ
なつのよは
ふすかとすれは
ほととぎす
なくひとこゑに
あくるしののめ


かりそめの
身やたのまれぬ
夏の日を
なと空蝉の
なき暮らしつる
かりそめの
みやたのまれぬ
なつのひを
なとうつせみの
なきくらしつる


はかもなき
夏の草葉に
置く露を
命と頼む
蟲のはかなさ
はかもなき
なつのくさばに
おくつゆを
いのちとたのむ
むしのはかなさ


故里を
思ひやれとも
郭公
ことのごとくに
汝ぞ鳴くなる
ふるさとを
おもひやれとも
ほととぎす
ことのごとくに
なれぞなくなる


夏の夜の
霜や置けると
見るまでに
荒れたる宿を
照らす月影
なつのよの
しもやおけると
みるまでに
あれたるやどを
てらすつきかげ


夏の風
わが袂にし
包まれば
思はむ人の
つとにしてまし
なつのかぜ
わがたもとにし
つつまれば
おもはむひとの
つとにしてまし


夏草の
しげき思ひは
蚊遣り火の
下にのみこそ
燃えわたりけれ
なつくさの
しげきおもひは
かやりひの
したにのみこそ
もえわたりけれ


草茂げみ
下葉枯れゆく
夏の日も
わくとしわけば
袖やひぢなむ
くさしげみ
したばかれゆく
なつのひも
わくとしわけば
そでやひぢなむ


五月雨に
物思ひをれば
郭公
夜深く鳴きて
いづち行くらむ
さみだれに
ものおもひをれば
ほととぎす
よふかくなきて
いづちゆくらむ


夏の夜の
露なとどめそ
蓮葉の
まことの珠と
なりしはてずば
なつのよの
つゆなとどめそ
はちすはの
まことのたまと
なりしはてずば


夏山に
恋ひしき人や
入りにけむ
声ふりたてて
なく郭公
なつやまに
こひしきひとや
いりにけむ
こゑふりたてて
なくほととぎす


吹く風の
わが宿に来る
夏の夜は
月の影こそ
涼しかりけれ
ふくかぜの
わがやどにくる
なつのよは
つきのかげこそ
すずしかりけれ


夕されば
蛍よりげに
燃ゆるとも
光見みえねば
人ぞつれなき
ゆふされば
ほたるよりげに
もゆるとも
ひかりみえねば
ひとぞつれなき


夏の日を
暮らしわびぬる
蝉の声
わがなき添ふる
声は聞こゆや
なつのひを
くらしわびぬる
せみのこゑ
わがなきそふる
こゑはきこゆや


恨みつつ
とどむる人の
なければや
山郭公
うかれてぞ鳴く
うらみつつ
とどむるひとの
なければや
やまほととぎす
うかれてぞなく


夏の夜は
水や勝れる
天の河
流るる月の
影もとどめぬ
なつのよは
みづやまされる
あまのかは
ながるるつきの
かげもとどめぬ


去年の夏
鳴きふるしてし
郭公
それかあらぬか
声のかはらぬ
こぞのなつ
なきふるしてし
ほととぎす
それかあらぬか
こゑのかはらぬ


夏蟲に
あらぬわが身の
つれもなき
人を思ひに
燃ゆる頃かな
なつむしに
あらぬわがみの
つれもなき
ひとをおもひに
もゆるころかな


夏の夜の
松葉もそよと
吹く風は
いづれか雨の
声にかはれる
なつのよの
まつはもそよと
ふくかぜは
いづれかあめの
こゑにかはれる


夜や暗き
路や惑へる
郭公
わが宿をしも
過ぎかてにする
よやくらき
ぢやまどへる
ほととぎす
わがやどをしも
すぎかてにする


いつの間に
花枯れにけむ
長がくだに
ありせば夏の
かげと見ましを
いつのまに
はなかれにけむ
なががくだに
ありせばなつの
かげとみましを


幾千たび
鳴きかへるらむ
あしひきの
山郭公
声はわすれで
いくちたび
なきかへるらむ
あしひきの
やまほととぎす
こゑはわすれで


夏の日を
天雲しばし
隠さなむ
寝るほどもなく
明くる夜にせむ
なつのひを
あまぐもしばし
かくさなむ
ねるほどもなく
あくるよにせむ


郭公
鳴きつる夏の
山辺には
沓手いださぬ
人や住むらむ
ほととぎす
なきつるなつの
やまべには
くつていださぬ
ひとやすむらむ


夏の日の
暮るるも知らず
鳴く蝉を
問ひもしてしか
なにことか憂き
なつのひの
くるるもしらず
なくせみを
とひもしてしか
なにことかうき


菖蒲草
幾らの五月
逢ひ来らむ
来る年ごとに
若く見ゆらむ
あやめくさ
いくらのさつき
あひくらむ
くるとしごとに
わかくみゆらむ


おしなべて
五月の空を
見渡せば
草葉も水も
緑なりけり
おしなべて
さつきのそらを
みわたせば
くさばもみづも
みどりなりけり


暮るるかと
見れは明けぬる
夏の夜を
あかすとやなく
山郭公
くるるかと
みれはあけぬる
なつのよを
あかすとやなく
やまほととぎす


夏の月
ひかり惜しまず
照るときは
流るる水に
影ろ副そ立つ
なつのつき
ひかりをしまず
てるときは
ながるるみづに
かげろふそたつ


琴の音に
ひびきかよへる
松風は
調べても鳴く
蝉の声かな
ことのねに
ひびきかよへる
まつかぜは
しらべてもなく
せみのこゑかな


夏草も
夜の間は露に
いこふらむ
つねに焦がるる
我れぞかなしき
なつくさも
よのまはつゆに
いこふらむ
つねにこがるる
われぞかなしき


ながめつつ
人待つをりに
呼子鳥
いづかたへとか
たちかへり鳴く
ながめつつ
ひとまつをりに
よぶこどり
いづかたへとか
たちかへりなく


秋風に
初雁がねぞ
響くなる
誰が玉梓を
かけて来つらむ
あきかぜに
はつかりがねぞ
ひひくなる
たがたまつさを
かけてきつらむ


浦ちかく
立つ秋霧は
藻塩焼く
煙とのみぞ
見えわたりける
うらちかく
たつあききりは
もしほやく
けぶりとのみぞ
みえわたりける


我れのみや
あはれと思はむ
きりぎりす
鳴く夕影の
大和なでしこ
われのみや
あはれとおもはむ
きりぎりす
なくゆふかげの
やまとなでしこ


秋の野の
草はいととは
見えなくに
置く白露の
珠とつらなる
あきののの
くさはいととは
みえなくに
おくしらつゆの
たまとつらなる


奥山に
黄葉ふみわけ
鳴く鹿の
声きくときぞ
秋はかなしき
おくやまに
もみぢふみわけ
なくしかの
こゑきくときぞ
あきはかなしき


我がために
くる秋にしも
あらなくに
蟲の音聞けば
まつぞかなしき
わがために
くるあきにしも
あらなくに
むしのねきけば
まつぞかなしき


ひぐらしに
秋の野山を
わけくれば
心にもあらぬ
錦をぞ着る
ひぐらしに
あきののやまを
わけくれば
こころにもあらぬ
にしきをぞきる


秋といへば
天雲までに
燃えにしを
空さへしるく
などか見ゆらむ
あきといへば
あまぐもまでに
もえにしを
そらさへしるく
などかみゆらむ


秋の野の
草の袂か
花すすき
穂にいでて招く
袖と見ゆらむ
あきののの
くさのたもとか
はなすすき
ほにいでてまねく
そでとみゆらむ


山の井は
水なきことぞ
見えわたる
秋の紅葉の
散りて隠せば
やまのゐは
みづなきことぞ
みえわたる
あきのもみぢの
ちりてかくせば


女郎花
おほかる野辺に
宿りせば
あやなくあだの
名をや立ちなむ
をみなへし
おほかるのべに
やどりせば
あやなくあだの
なをやたちなむ


秋風に
誘はれ来つる
雁がねの
雲居はるかに
今日ぞ聞こゆる
あきかぜに
さそはれきつる
かりがねの
くもゐはるかに
けふぞきこゆる


白露に
風の吹きしく
秋の野は
貫きとめぬ
玉ぞ散りける
しらつゆに
かぜのふきしく
あきののは
つらぬきとめぬ
たまぞちりける


いつの間に
秋穂垂るらむ
草と見し
ほど幾日とも
経たたらなくに
いつのまに
あきほたるらむ
くさとみし
ほどいくひとも
へたたらなくに


雁の音は
風に競ひて
渡れども
我が待つ人の
言づてぞなき
かりのねは
かぜにきほひて
わたれども
わがまつひとの
ことづてぞなき


大空を
とりかへすとも
見えなくに
ほしかと見ゆる
秋の草かな
おほそらを
とりかへすとも
みえなくに
ほしかとみゆる
あきのくさかな


秋風に
ほころびぬらむ
藤袴
つづりさせてふ
きりぎりす鳴く
あきかぜに
ほころびぬらむ
ふじばかま
つづりさせてふ
きりぎりすなく


秋の夜の
雨と聞こえて
降りつるは
風に散りつる
黄葉なりけり
あきのよの
あめときこえて
ふりつるは
かぜにちりつる
もみぢなりけり


散らねども
かねてぞ惜しき
紅葉は
今はかぎりの
色と見つれば
ちらねども
かねてぞをしき
もみぢばは
いまはかぎりの
いろとみつれば


白波に
秋の木の葉の
浮かべるは
海人の流がせる
舟かとぞ見る
しらなみに
あきのこのはの
うかべるは
あまのながせる
ふねかとぞみる


秋の夜の
天照る月の
光には
置く白露を
玉とこそ見れ
あきのよの
あめてるつきの
ひかりには
おくしらつゆを
たまとこそみれ


秋の野に
置ける露をば
ひとり寝る
我が涙とも
思ひ知れかし
あきののに
おけるつゆをば
ひとりねる
わがなみだとも
おもひしれかし


雁がねは
風を寒みや
機織りめ
管まく音の
きりきりとする
かりがねは
かぜをさむみや
はたおりめ
すがまくおとの
きりきりとする


植ゑしとき
花待ちどほに
ありしきく
うつろふ秋に
あはむとや見し
うゑしとき
はなまちどほに
ありしきく
うつろふあきに
あはむとやみし


白露の
染めいたす萩の
下紅葉
衣にうつす
秋は来にけり
しらつゆの
そめいたすはぎの
したもみぢ
ころもにうつす
あきはきにけり


風寒み
鳴く秋蟲の
涙こそ
草にいろどる
露と置くらめ
かぜさむみ
なくあきむしの
なみだこそ
くさにいろどる
つゆとおくらめ


花薄
そよともすれは
秋風の
吹くかとぞ聞く
衣なき身は
はなすすき
そよともすれは
あきかぜの
ふくかとぞきく
ころもなきみは


音に聞く
花見に来れば
秋の野の
道迷ふまでに
霧そ立ちぬる
おとにきく
はなみにくれば
あきののの
みちまよふまでに
きりそたちぬる


雁がねに
おどろく秋の
夜を寒むみ
蟲の織り出す
衣をそ着る
かりがねに
おどろくあきの
よをさむみ
むしのおりだす
ころもをそきる


秋風は
誰が手向けとか
紅葉を
幣に切りつつ
吹き散らすらむ
あきかぜは
たがたむけとか
もみぢばを
ぬさにきりつつ
ふきちらすらむ


唐衣
干せど袂の
露けきは
わが身の秋に
なればなりけり
からころも
ひせどたもとの
つゆけきは
わがみのあきに
なればなりけり


秋の露
色のことごと
置けばこそ
山も紅葉も
千くさなるらめ
あきのつゆ
いろのことごと
おけばこそ
やまももみぢも
ちくさなるらめ


秋風に
声をほにあげて
ゆく舟は
天の門わたる
雁にぞありける
あきかぜに
こゑをほにあげて
ゆくふねは
あまのとわたる
かりにぞありける


紅葉の
散り来むときは
袖にうけむ
土に落ちなは
きすもこそつけ
もみぢばの
ちりこむときは
そでにうけむ
つちにおちなは
きすもこそつけ


秋の蝉
寒き声にぞ
聞こゆなる
木の葉の衣を
風やぬきつる
あきのせみ
さむきこゑにぞ
きこゆなる
このはのきぬを
かぜやぬきつる


秋の夜の
月の影こそ
木の間より
落つれはきぬと
見えわたりけれ
あきのよの
つきのかげこそ
このまより
おつれはきぬと
みえわたりけれ


秋の月
草むらわかす
照らせばや
宿せる露を
玉と見すらむ
あきのつき
くさむらわかす
てらせばや
やどせるつゆを
たまとみすらむ


なほざりに
秋のみ山に
入りぬれば
錦の色の
衣をこそ着れ
なほざりに
あきのみやまに
いりぬれば
にしきのいろの
きぬをこそきれ


秋山に
恋ひする鹿の
声立てて
鳴きそしぬべき
君が来ぬ夜は
あきやまに
こひするしかの
こゑたてて
なきそしぬべき
きみがこぬよは


ちぎりけむ
こころそつらき
織姫の
年にひとたび
逢ふは逢ふかは
ちぎりけむ
こころそつらき
おりひめの
としにひとたび
あふはあふかは


年ごとに
逢ふとはすれど
織姫の
寝る夜のかずぞ
少なかりける
としごとに
あふとはすれど
おりひめの
ねるよのかずぞ
すくなかりける


かきくもり
あられ降りしけ
白玉を
敷ける庭とも
人の見るかに
かきくもり
あられふりしけ
しらたまを
しけるにはとも
ひとのみるかに


天の河
冬は空まで
凍るらし
石間にたぎつ
音だにもせず
あまのかは
ふゆはそらまで
こほるらし
いしまにたぎつ
おとだにもせず


笹の葉に
置く霜よりも
ひとり寝る
我が衣手ぞ
さえまさりける
ささのはに
おくしもよりも
ひとりねる
わがころもでぞ
さえまさりける


流れゆく
水凍りぬる
冬さへや
なほ浮き草の
あとはさだめぬ
ながれゆく
みづこほりぬる
ふゆさへや
なほうきくさの
あとはさだめぬ


雪降りて
年の暮れゆく
ときにこそ
つひに紅葉ぬ
まつも見えけれ
ゆきふりて
としのくれゆく
ときにこそ
つひにもみぢぬ
まつもみえけれ


我が宿は
雪降る野辺に
道もなし
いつこはかとか
人のとめこむ
わがやどは
ゆきふるのべに
みちもなし
いつこはかとか
ひとのとめこむ


神無月
時雨降るらし
佐保山の
まさきのかつら
色まさりゆく
かみなづき
しぐれふるらし
さほやまの
まさきのかつら
いろまさりゆく


冬来れば
梅に雪こそ
降りかかれ
いづれの枝をか
花とは折らむ
ふゆくれば
うめにゆきこそ
ふりかかれ
いづれのえをか
はなとはをらむ


掘りておきし
池は鏡と
凍れども
影にも見えぬ
年ぞ経にける
ほりておきし
いけはかがみと
こほれども
かげにもみえぬ
としぞへにける


降る雪の
積れる岑は
白雲の
立ちもさわがす
をるかとぞ見る
ふるゆきの
つもれるみねは
しらくもの
たちもさわがす
をるかとぞみる


み吉野の
山の白雪
踏み分けて
入りにし人の
おとづれもせぬ
みよしのの
やまのしらゆき
ふみわけて
いりにしひとの
おとづれもせぬ


吹く風は
色も見えねと
冬来れば
ひとり寝る夜の
身にぞしみける
ふくかぜは
いろもみえねと
ふゆくれば
ひとりねるよの
みにぞしみける


霜枯れの
枝となわびそ
白雪を
花にやとひて
見れとも飽かず
しもかれの
えだとなわびそ
しらゆきを
はなにやとひて
みれともあかず


嵐吹く
山下風に
降る雪は
とく梅の花
咲くかとぞ見る
あらしふく
やましたかぜに
ふるゆきは
とくうめのはな
さくかとぞみる


雪のみぞ
枝に降りしき
花も葉も
いにけむ方も
見えずもあるかな
ゆきのみぞ
えだにふりしき
はなもはも
いにけむかたも
みえずもあるかな


白雪の
八重降りしける
かへる山
かへるかへるも
老いにけるかな
しらゆきの
やへふりしける
かへるやま
かへるかへるも
をいにけるかな


草も木も
枯れゆく冬の
宿となれば
雪ならずして
訪ふ人ぞなき
くさもきも
かれゆくふゆの
やどとなれば
ゆきならずして
とふひとぞなき


降る雪は
枝にし端も
とまらなむ
花も紅葉も
絶えてなき間は
ふるゆきは
えだにしばしも
とまらなむ
はなももみぢも
たえてなきまは


冬の池の
上は凍りて
閉ぢたるを
いかでか月の
そこにすむらむ
ふゆのいけの
うへはこほりて
とぢたるを
いかでかつきの
そこにすむらむ


冬寒み
水の面にかくる
真澄鏡
とくも破れなむ
おいまどふべく
ふゆさむみ
みのもにかくる
ますかがみ
とくもわれなむ
おいまどふべく


散らねども
かねてぞ惜しき
紅葉は
いまは限りの
色と見つれは
ちらねども
かねてぞをしき
もみぢばは
いまはかぎりの
いろとみつれは


白雲の
下りゐる宿と
見えつるは
降りくる雪の
とけぬなりけり
しらくもの
おりゐるやどと
みえつるは
ふりくるゆきの
とけぬなりけり


霜の上に
跡ふみつくる
はまちどり
ゆくゑもなしと
鳴きのみぞ経る
しものうへに
あとふみつくる
はまちどり
ゆくゑもなしと
なきのみぞへる


涙川
身投くばかりの
淵はあれど
氷とけねば
影もやどらぬ
なみだかは
みなくばかりの
ふちはあれど
こほりとけねば
かげもやどらぬ


浦ちかく
降りくる雪は
白波の
末の松山
越すかとぞ見る
うらちかく
ふりくるゆきは
しらなみの
すゑのまつやま
こすかとぞみる


雪降りて
年の暮れゆく
ときにこそ
つひに緑の
まつも見えけれ
ゆきふりて
としのくれゆく
ときにこそ
つひにみどりの
まつもみえけれ


白雪の
降りてつもれる
山里は
住む人さへや
思ひ消ゆらむ
しらゆきの
ふりてつもれる
やまざとは
すむひとさへや
おもひきゆらむ


光まつ
枝にかかれる
雪をこそ
冬の花とは
いふべかりけれ
ひかりまつ
えだにかかれる
ゆきをこそ
ふゆのはなとは
いふべかりけれ


乙女子か
日かげの上に
降る雪は
花のまがふに
いづれたがへり
をとめこか
ひかげのうへに
ふるゆきは
はなのまがふに
いづれたがへり


かきくらし
散る花とのみ
降る雪は
冬の京師の
雲のちるかと
かきくらし
ちるはなとのみ
ふるゆきは
ふゆのみやこの
くものちるかと


あしひきの
山の懸け橋
冬来れば
氷の上を
よきそかねつる
あしひきの
やまのかけはし
ふゆくれば
こほりのうへを
よきそかねつる


冬来れば
雪降り積もる
高き峰
立つ白雲に
見えまがふかな
ふゆくれば
ゆきふりつもる
たかきみね
たつしらくもに
みえまがふかな


雪のうちの
み山からこそ
おいはくれ
頭の白く
なるをまつみよ
ゆきのうちの
みやまからこそ
おいはくれ
かしらのしらく
なるをまつみよ


松の上に
かかれる雪は
よそにして
時まどはせる
花とこそ見れ
まつのうへに
かかれるゆきは
よそにして
ときまどはせる
はなとこそみれ


月夜には
花とそ見ゆる
竹の上に
降りしく雪を
誰が払はむ
つきよには
はなとそみゆる
たけのうへに
ふりしくゆきを
たれがはらはむ


白雪を
わけてわかるる
形見には
袖に涙の
凍るなりけり
しらゆきを
わけてわかるる
かたみには
そでになみだの
こほるなりけり


白露そ
霜となりける
冬の夜は
天の河さへ
水凍りけり
しらつゆそ
しもとなりける
ふゆのよは
あまのかはさへ
みづこほりけり


冬の海に
降りいる雪や
そこにゐて
春立つ波の
花と咲くらむ
ふゆのうみに
ふりいるゆきや
そこにゐて
はるたつなみの
はなとさくらむ


ふくみあへず
消えなむ雪を
冬の日の
花と見ればや
鳥の訪ふらむ
ふくみあへず
きえなむゆきを
ふゆのひの
はなとみればや
とりのとふらむ


川の瀬に
なびく玉藻の
水隠くれて
人に知られぬ
恋もするかな
かはのせに
なびくたまもの
みかくれて
ひとにしられぬ
こひもするかな


ひとたびも
恋ひしと思ふに
くるしきは
心ぞ千ぢに
くだくべらなる
ひとたびも
こひしとおもふに
くるしきは
こころぞちぢに
くだくべらなる


かけてれば
千ぢの黄金も
数知りぬ
など我が恋ひの
逢ふは采なき
かけてれば
ちぢのこがねも
かずしりぬ
などわがこひの
あふはかりなき


君恋ふる
涙の床に
みちぬれは
みをつくしとぞ
我れはなりぬる
きみこふる
なみだのとこに
みちぬれは
みをつくしとぞ
われはなりぬる


白玉の
消えて涙と
なりぬれば
恋しき影を
袖にこそ見れ
しらたまの
きえてなみだと
なりぬれば
こひしきかげを
そでにこそみれ


人を見て
思ふことだに
あるものを
そらに恋ふるぞ
儚かりける
ひとをみて
おもふことだに
あるものを
そらにこふるぞ
はかなかりける


紅の
色には出でし
かよひ沼の
下にかよひて
恋はしぬとも
くれなゐの
いろにはいでし
かよひぬの
したにかよひて
こひはしぬとも


ちぎりけむ
心ぞつらき
織姫の
年にひとたび
逢うは逢う河
ちぎりけむ
こころぞつらき
おりひめの
としにひとたび
あうはあうかは


つれもなき
人を恋ふとて
山彦の
こたふるまでも
嘆きつるかな
つれもなき
ひとをこふとて
やまびこの
こたふるまでも
なげきつるかな


我が恋は
み山隠れの
草なれや
しげさ勝されど
知る人のなき
わがこひは
みやまがくれの
くさなれや
しげさ勝されど
しるひとのなき


思ひには
大空さへや
燃えわたる
朝たつ雲を
煙とはして
おもひには
おほそらさへや
もえわたる
あさたつくもを
けぶりとはして


明ぬとて
帰る道には
こき垂れて
雨も涙も
降りそぼちつつ
あかぬとて
かへるみちには
こきたれて
あめもなみだも
ふりそぼちつつ


思ひわび
煙は空に
立ちぬれど
わりなくもなき
恋のしるしか
おもひわび
けぶりはそらに
たちぬれど
わりなくもなき
こひのしるしか


人を思ふ
心の熾きは
身をぞ焼く
煙たつとは
見えぬものから
ひとをおもふ
こころのおきは
みをぞやく
けぶりたつとは
みえぬものから


飽かすして
君を恋ひつる
涙にそ
浮きみ沈つみみ
痩せわたりける
あかすして
きみをこひつる
なみだにそ
うきみしつみみ
やせわたりける


鹿島なる
筑波の神の
つくづくと
わが身ひとつに
恋をつみつる
かしまなる
つくばのかみの
つくづくと
わがみひとつに
こひをつみつる


わりなくも
寝てもさめても
恋ひしきか
心をいづち
やらは忘れむ
わりなくも
ねてもさめても
こひしきか
こころをいづち
やらはわすれむ


恋わびて
うち寝るなかに
行きかよふ
夢の直路は
うつつなるらむ
こひわびて
うちねるなかに
ゆきかよふ
ゆめのただぢは
うつつなるらむ


わびぬれば
しひて忘れむと
思へども
恋ひてふものぞ
人頼めなる
わびぬれば
しひてわすれむと
おもへども
こひてふものぞ
ひとたのめなる


厭はれて
いまはかぎりと
知りにしを
さらに昔の
恋しかるらむ
いとはれて
いまはかぎりと
しりにしを
さらにむかしの
こひしかるらむ


死ぬる命
生きもやすると
こころみに
玉の緒ばかり
逢はむといはなむ
しぬるいのち
いきもやすると
こころみに
たまのをばかり
あはむといはなむ


飽かずして
別れし宵の
涙川
よどみもなくも
たぎつ心か
あかずして
わかれしよひの
なみだかは
よどみもなくも
たぎつこころか


思ひつつ
昼はかくても
慰めつ
夜こそ涙
尽きずなかるる
おもひつつ
ひるはかくても
なぐさめつ
よるこそなみだ
つきずなかるる


かぎりなく
深き思ひを
忍ぶれば
身を殺すにも
劣らざりけり
かぎりなく
ふかきおもひを
しのぶれば
みをころすにも
おとらざりけり


ひとり寝る
身の衣手は
海なれや
みるに涙そ
まなく寄せけれ
ひとりねる
みのころもでは
うみなれや
みるになみだそ
まなくよせけれ


年を経て
燃ゆてふ富士の
山よりも
逢はぬ思ひは
我れぞ勝れる
としをへて
もゆてふふじの
やまよりも
あはぬおもひは
われぞまされる


つれなきを
今は恋じと
思へども
心弱くも
落つる涙か
つれなきを
いまはこひじと
おもへども
こころよはくも
おつるなみだか


わびわたる
わかみのうらと
なれればや
恋ひしきことの
しきなみにたつ
わびわたる
わかみのうらと
なれればや
こひしきことの
しきなみにたつ


ひとり寝る
我が手枕を
昼はほし
夜はぬらして
幾夜経ぬらむ
ひとりねる
わがたまくらを
ひるはほし
よはぬらして
いくよへぬらむ


ほのに見し
人に思ひを
つけそめて
心からこそ
下に焦がるれ
ほのにみし
ひとにおもひを
つけそめて
こころからこそ
したにこがるれ


住吉の
岸に寄る波
夜さへや
夢のかよひぢ
ひとめよくらむ
すみよしの
きしによるなみ
よるさへや
ゆめのかよひぢ
ひとめよくらむ


夕月夜
おぼろに人を
見てしより
天雲はれぬ
心地こそすれ
ゆふつくよ
おぼろにひとを
みてしより
あまぐもはれぬ
ここちこそすれ


朝影に
わが身はなりぬ
白雲の
絶えて聞こえぬ
人を恋ふとて
あさかげに
わがみはなりぬ
しらくもの
たえてきこえぬ
ひとをこふとて


近けれど
人目人目を
守るころは
雲居はるけき
身とやなりなむ
ちかけれど
ひとめひとめを
もるころは
くもゐはるけき
みとやなりなむ


恋ひしきに
わびて魂
まどひなば
むなしき骸の
名にや残らむ
こひしきに
わびてたましひ
まどひなば
むなしきからの
なにやのこらむ


飽かずして
今朝の帰り路
おもほえず
心をひとつ
置きて来しかは
あかずして
けさのかへりぢ
おもほえず
こころをひとつ
おきてこしかは


人知れず
下に流るる
涙川
堰とどめなむ
影は見ゆると
ひとしれず
したにながるる
なみだかは
せきとどめなむ
かげはみゆると


燃えも合はぬ
こなたかなたの
思ひかな
涙の川の
中にゆけばか
もえもあはぬ
こなたかなたの
おもひかな
なみだのかはの
なかにゆけばか